第2回
『読書のデモクラシー』 長田 弘/著、岩波書店、1992、絶版
読書をめぐる随筆。どうでもいいような独り言を「エッセイ」という言葉でごまかしている本が多い昨今、真に「随筆」と呼べる貴重な本。本物だからすぐに絶版になるのだ、とひねくれ者の僕は推測する。この詩人についてはぼくは本業の詩よりも、本に関する随筆の方でファンになっている(詩もすばらしいけど)。この人の読書の奥深さ、幅広さは並大抵ではない。また本を通
して時代や人間や事象を語るときに、決して衒学的にならない。読者は本を読む楽しみのお裾分けにあずかるような、幸せな気分になる。
1年ちょっと前に図書館でこの本をたまたま見つけて読んだとき、ここに書かれている言葉は、ぼく自身の言葉と、深い水脈でつながっていると思った。それはあとがきにあるように、「記憶に刻まれている言葉をいま、ここに引用して、二十世紀という時代の生きた文脈を、これからにむけて確かめなおす」作業である。ものの見方を本質において変えていく力が、ここにはある。
読書に関する長田さんの著書で現在手に入るものでは、他にも『読書百遍』(岩波書店)『私の二十世紀書店』(みすず書房)など多数あり、どれも一読の価値がある。紀伊国屋書店など8つの出版社が、絶版になった名著を復刊しようという主旨で開催している、インターネットの「書物復権」http://www.kinokuniya.co.jp/01f/fukken/index.htmlでは、昨年『読書百遍』が復刊リクエストのダントツだった。長田さんのファンは多い。
4/7/2001
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