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「深町さん・・・腕、苦しい」
 緩められてようやく、自分の腕を引き抜くと、そのまま相手の体を抱き締める。泣きたくな
るほど、変わらない感覚。
「深町さんは、間違ってない。俺が選んだ事なんですよ・・・そんなことを、悩んでいたんで
すか・・・」
 微笑みかけると、ゆっくりと口付けた。それはすぐに深いものに変わる。強く吸われて、息
が上がる。
「・・・速水さん、俺・・・抱きたい。いいか?」
「いいですよ・・・俺は、あなたのものだから」


 肌を合わせた感覚は、いつもと変わらないはずなのに。そのぎこちなさからか、ひどく初々
しくて、翻弄される。
 深町のものを口に含むと、動揺が伝わってかわいい、と思う。慣れない相手に代わって、
愛撫をリードするのも新鮮な感動だった。
 それでもすぐに、主導権は奪われていき、もう何も考えられなくなる。受け入れる部分を、
舌で時間をかけてほぐされていくと、堪え切れなくなって身悶えた。
 抱き締める力強さに、涙が出そうになる。変わらない、この存在を愛しているのだと、確か
める――――


 そのまま眠ってしまっていたようだった。明け方に気が付いて、いつもよりも激しく求めてし
まった自分に、一人赤面する。
 横に眠る深町の包帯が、ほどけかかっていた。傷口は大丈夫だったろうかと、そっと包帯
を直すと、深町が目を開けた。
「・・・速水・・・あれ、俺いつの間に・・・」
「・・・深町さん・・・?思い出したんですか!?」
 抱き着くと、支えるように回された腕は、いつもの腕で。
 まだ状況の飲み込めていない深町に、速水は微笑みながら口付けた。
「お帰りなさい。それと、ありがとうございました。俺を、守ってくれて・・・」


   −了−

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2000.5.14 : Tonbi Hasaki  
昔、記憶喪失ネタでマンガをちょこっとだけ描いたのです。
その続きを考えたら、こうなりました・・・オチがイマイチで
すみません・・・これでも久し振りの沈艦小説だったんです
よね・・・初出は本宅での連載でした。