涙が乾くと、途端にこの状況が気恥ずかしく、とにかく顔を洗いたくて立ち上がる。
気遣わしそうな雄一郎に、もう大丈夫だと笑って見せて、背を向けようとした。
その背中から再び抱き締められて、耳元に唇が寄せられる。
「一生放さへんぞ。ええか?祐介・・・」
頬に熱い吐息と、口付けを感じて、心臓が飛び出しそうになる程に驚く。
「あ、顔、洗ってくるから・・・」
どうにか洗面所へと逃げ込んで、熱の昇る顔を鏡に映してみた。
これだけはっきりと愛情を示されて、疑う気持ちはもうなかった。それよりも問題は、自分
の中にある。
――――どうしよう、どうにかなってしまいそうだ・・・――――
どんな顔をして戻れば良いのかも分からない。
そして、雄一郎がこれから、今まで通りの友人のままでいるはずがない事も、解るだけに
どう対処すれば良いのかが分からない。
めまいがしそうな程の幸せな気持ちも束の間、新たに立ちはだかる問題に、祐介はしばし
途方に暮れた。
一方雄一郎の方も、自分の体を持て余していた。何も今日一日で、祐介の全てを手に入
れたい訳ではない。しかし、ようやく腕の中に抱き締めた体の心地好さと、唇で触れる肌の
快感に、理性も飛んでしまいそうになった。
――――さすがにやばいよなあ、これは。いくら何でも・・・どないしよう――――
今日の所は、共に過ごせることを喜ぶだけで、満足しなければならない。だが自分にもま
だこんなにも若い衝動が残っていたことに、こそばゆいような気持ちになる。
些細な事で祐介の機嫌を損ねたくはないので、きっと躊躇しているであろう彼を迎えに行
くことにする。
18年もかけて、ここまできたのだ。じっくりと時間をかけて、幸せになっていけばいい。もう
迷わないと、決めたのだ。
二人で、幸せになるために。
-END-
001228 Tonbi Hasaki
|