280PSという強力なエンジン・パワーを、有効に路面
に伝え、しかも安全、確実にドライバーのコントロール
下に置くこと。電子制御トルクスプリット4WD
ATTESA E-TSは、このために開発された。
FRの素直な操縦1生能、アクセルワークとブレーキン
グの駆使による独自のドライビング・プレジャーを継
承しつつ、トラクションによる速さを加えたのが、このシ
ステムの画期的な特徴である。当然、従未の4WDシ
ステムとは、性格を大いに異にする。なぜなら、あらゆる
路面における操縦安定性の向上を、あくまでも後輪
駆動車のテイストで実現しているからだ。
■電子制御トルクスプリット4WD/ATTESA E-TS
ATTESA E-TSは、基本的には後輪をべースに駆
動し、走行条件に応じて前輪にトノレクを配分する。そ
のために、後輪へは直結状態で駆動力を伝え、前輪
へはトランスファー部で分岐させている。トランスファ
ー部に組み込まれた油圧多板クラッチの押し付け
力を変えることによって、前輪へ伝達されるトルクの大
きさを変化させるのである。
このクラッチを放した状態では、後輪駆動。クラッチ
を結合した状態では、リジッド4駆になる。この間を無
段階に変化させている。
さらに、このシステムには、前後4輪の車輪速度セン
サーと、横Gをアナログ的に検出するセンサーを付け
ている。これらセンサーからの信号入力を受け、コント
ローラーが油圧多板クラッチの圧着力を変化させ
て、前後のトルク配分を決定する。
したがって、通常の後輪駆動状態から、後輪にかか
る駆動トルクの増大で後輪のスリップ量が大きくなる
と、前輪へも駆動トルク伝達を行なう。前輪へ伝達す
る駆動トルクの大きさは、横Gの大きさと前後輪の回
転速度差に応じて変化する方式としている。
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例えば、アイスバーンのように、タイヤの摩擦係数μ
(ミュー)の低い路面で、後輪のスリップ量が大きい
場合は、前輪へのトルク伝達を増やす。ところが、ドラ
イ路面でコーナリングしているような横Gが非常に大
きい状態では、ホイールスピンしていても前輪へ伝達
する駆動トルクを余り増やさない。
後輪側の駆動トルクを大きくし、かつ前輪の駆動トル
クを小さく配分することにより、後輪をアクセルワーク
によって積極的にコントロールするキャパシティと、前
輪の操縦性能を大きくとっている。
前輪に駆動トルクをあまり伝えてしまうと、前輪の操縦
性能に影響を及ぼすため、この時は前輪にトルクを
出さないようにしたいからだ。
さらに、ABS(アンチロックブレーキシステム)との総
合制御も実現している。4輪それぞれに設けられた車
輪速度センサーやGセンサーにより、作動タイミング
をきめ細かくコントロールできるため、より自然な制動
性能を確保している。
急制動時には、4輪すべてに適切な害11合でエンジン
ブレーキを割り振り、ブレーキ性能とアンチスキッド
性も高めている。
■5速ミッション
2速と3速にダブノルコーンシンクロ(シングルコーンシ
ンクロの約2倍の容量を持つ)を採用し、操作力の
低減を図った。さらに、シフトレバーの操作ストローク
を50oと大幅にショート化するとともに、シフトレバーの
取り出しをトランスファーの上部とし、自然なドライビン
グポジションとスポーティなシフトフィーリングを実現。
シフト感覚の向上と同時に、クラッチ性能も高めてい
る。強力なパワーと路面への伝達効率の高さに合わ
せ、圧着力の強いクラッチを設定しているカ、ブース
ターの採用により重すぎることなく、GT-Rにふさわし
い操作フィーリングを実現した。 |