雲取山(東京都/埼玉県/山梨県)

くもとりやま 標高2017m。

 雲取山は、1都2県が境を接している。 また、東京都の最高峰であり、深田百名山に数えられている。
 筆者が最初に雲取山に登ったのは、1976年のことである。 このときは、会社の山仲間K君と一緒に、鴨沢から七ツ石山を経由して雲取山頂上を踏んだ。 その日は山頂の避難小屋に泊まり、翌日に飛龍山を経由して丹波に下り、あとはバスを利用して、 奥多摩駅に戻った。
 その後30数年間のブランクがあり、2011年になって2回目の登山を行った。 ここで紹介するのは2011年11月に三峯神社から入山し丹波に下山した時の記録である。 ルートは地図上に赤い線で記している。
 一日目の早朝、家を出て池袋から西武特急に乗って西武秩父に向かい、 ここでバスに乗り換えて三峯神社に着いた。 すでに時間は10時半近く。 この日は雲取山荘泊まりだが、晩秋は日没が早いので、時間的な余裕はあまりない。 しかし、三峯神社の登山口まで来て、神社に参拝せずに通り過ぎることはできない。 少々あわただしかったが、神社に足を延ばして参拝したのち、雲取山荘に向かって 歩き始めた。 よく整備された歩きやすい道がしばらく続く。 右手の梢越しに、白石山(和名倉山)が始終見えていた。 霧藻ヶ峰を過ぎると道も険しくなり、上り下りを何回が繰り返す。
 白岩山の頂上には不自然に開けた空間がある。 説明板によると、伊勢湾台風の時に木がなぎ倒されて出来た空間とのこと。 半世紀以上前の伊勢湾台風の影響がこんなところに残っているとは驚きだ。
 その広場に鹿が数頭いた。人間になれているようで、私の姿を見ても 逃げたりしない。
 雲取山荘には16時少し前、まだ明るいうちに到着。 手続きを済ませて2階の部屋に入る。 こたつの置かれた8畳間にすでに先客3人がいた。 8畳間に4人だから、ゆったりと過ごせる。 さっそく缶ビールを買い、喉の渇きをうるおす。 山小屋に着いたときのいつもの儀式だ。
 夕食を挟んで、同室の3人と山の話などをして時間をつぶした。 山小屋に泊まる楽しみの一つは、知らない人たちと会話ができることである。
 翌日は4時過ぎに起きて、朝食抜きで山頂目指して出発。 山頂で日の出の写真を撮るのが今回の山行の目的の一つだからだ。 小屋を出るとき見上げると満天の星空。 今日も晴天間違いない。 樹林帯をゆっくり登ること30分で頂上。 見晴らしのよい避難小屋のそばに三脚とカメラをセットする。 晴れているが、冷え込みは強くない。 6時過ぎに太陽が奥多摩の山々の頭を越えて顔を出した。 山で見る日の出はいつも感動的だ。 避難小屋に泊まっていた人たちも固唾をのんで日の出の瞬間を見守っていた。
 頂上で約1時間撮影したのち、飛龍山に向け出発。 1976年のときもここを歩いているが、ほとんど覚えていない。 静かな道だ。 富士山を左手に見ながら坦々と歩く。 三条ダルミから飛龍山頂上までの間で出会った登山者は一人だけ。 飛龍山頂上へは、縦走路から右手に分かれる踏み跡程度の近道をとったら、わりと楽だった。 頂上には、地元の若い人が休んでいた。 話をしたら、オオカミを題材にしたNHKの取材班の手伝いで登ってきたという。 (このあと、飛龍権現からの下りで、取材班数人と会い、短い会話を交わした。) そういえば、奥秩父では、オオカミの声を聞いたとか、姿を見たという話題が ときどきニュースになることを思い出した。
 山頂からは、飛龍権現への道を下る。 この道はシャクナゲなどの木が密集していて、数メートル先も見通せないほどだ。 こういう環境が広く残っていると、もしかしたらオオカミが生息していてもおかしくない と思わせる雰囲気がある。
 飛龍権現からは長い下りが待っていた。 山の中腹では、鮮やかに紅葉している木もあるが、森全体が色づいているわけではない。 時間があるので、紅葉の写真を撮りながら歩く。 サオラ峠からの丹波への道もけっこう急で、しかも長い。 普通、山の斜面は下の方に行くに従い傾斜がゆるくなるが、ここではなかなか 傾斜が落ちないのだ。 うんざりしてきたころやっと丹波の集落の上に出た。 バス停も遠くなかった。 ただバス停では次のバスまで1時間近くあり、時間を持て余してしまった。 丹波山温泉に寄るにはあまり余裕がないので、近くのお店で缶ビールを買って時間をつぶした。
 バスに揺られて奥多摩駅に出て電車に乗ったら、雲取山荘で同室だった 単独行の男性と一緒になった。 この男性は、雲取山から鷹ノ巣山経由で直接奥多摩駅に下りたとのこと。 電車の中でいろいろ話をしながら過ごしたので退屈せずにすんだ

 <追記>
 NHKのオオカミを題材とした番組は、「見狼記〜神獣ニホンオオカミ」と題して 2012年2月に放映されたのち5月にも再放送された。 2回とも興味深く見ることができたが、意外だったのは、ニホンオオカミとイヌは外見上からは判別不可能で、 骨を見なければ区別できないという点だ。
 筆者はニホンオオカミがどこかに生存していて欲しいと思うのだが、はたしてどうなのだろうか? (2012/5/07記)

歩行記録: 2011/11/01 (三峯神社登山口−雲取山荘)4h45m    11/02 (雲取山−丹波バス停)7h55m

 三峯神社の鳥居
 バス停のある駐車場から歩くと、まず鳥居が出てくる。 よく見かける鳥居を三重にしたような形で、三ツ鳥居と言われる珍しい型式のものらしい。 (2011/11/01)
今回の撮影にはすべてCANON 5D Mark2・EF-24-105mm F4L IS USMを使用。

 三峯神社本殿
 鳥居から参道を歩くと随身門がある。 赤と金色に輝く絢爛たる門に少々圧倒されながらさらに奥に進むとこの本殿に達する。 本殿もけっこう豪華な装飾が施されている。 (2011/11/01)

 三峯神社駐車場の上からは、これから登る雲取山(左のピーク)と飛龍山(右)が 見渡せる。 このあたりは紅葉が見ごろだった。 (2011/11/01)

 三峯神社から雲取山への登山口は、三峯神社奥宮参道入口でもあり、 しばらくは杉や桧の並木が続く。 (2011/11/01)

 地蔵峠の少し上からの眺め。 ぎざぎざした山容の両神山はすぐにわかるが、その右奥に少し霞んで見えるのは浅間山だろう。 (2011/11/01)

 今回歩いた三峯神社から雲取山荘にかけてのルートからは、 谷を挟んで常に右手に白岩山(和名倉山)がある。 この写真は、白岩小屋付近から撮影した。 (2011/11/01)

 雲取山頂上で、太陽が顔を出した直後。
 太陽の右下近くにシルエットになって見えるピークが、鷹ノ巣山で、 その右に大岳山と御前山が続いている。 (2011/11/02)

 陽が昇って3,4分後の富士山。
 期待したほど赤くは染まらなかった。
 画面左端に御正体山、右端に大菩薩嶺。 (2011/11/02撮影)

 上の写真は避難小屋のそばから撮ったが、こちらは埼玉県が設置した 頂上標識のそばから撮影した。 (2011/11/02撮影)

 頂上から飛龍山(大洞山)方面を眺める。
 このあと、中央に見える飛龍山へと続く尾根を歩くわけだ。
 飛龍山の右側には、北岳、仙丈ガ岳、甲斐駒ガ岳が見え、 左側には聖岳、赤石岳、悪沢岳、塩見岳などが見えている。
 右端のなだらかな山は、北奥千丈岳。 (2011/11/02撮影)

 雲取山から20分ほど下ると三条ダルミの分岐。
 5人組のパーティは、三条ノ湯への道を下って行った。 筆者は縦走路を飛龍山へと向かった。 ここから飛龍山へは静かな道で、途中で会った登山者は一人だけだった。 (2011/11/02撮影)

 雲取山と飛龍山の中間、三ツ山あたりで黄葉したカラマツが目についたので 撮った一枚。 (2011/11/02撮影)

 北天のタルを過ぎて、縦走路から飛龍山への近道の分岐近くで、 歩いてきた雲取山方面が見渡せる場所がある。
 中央が雲取山。こちらから見るとあまり特徴のない山容だ。 (2011/11/02撮影)

 丹波バス停
 丹波山村は山梨県に属しているが、バスは東京都の奥多摩駅との間に 運行されている。日に4便である。
 左にあるのは「くうかん鳥」と名付けられた空き缶回収機で、 1缶入れると券が1枚出てくる仕組みだ。 その券を100枚集めるとノートがもらえると説明にある。 私も飲み終わった缶ビールの空き缶をこの回収機に入れてみたら、券が1枚出てきた。 とても100枚は集められそうもないので、そのまま置いて後の人に利用してもらうことにした。 (2011/11/02撮影)

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