角田山(新潟県)

  かくだやま 標高482m。

 登ってみて、大変印象がよいため、友達にその山の良さを吹聴したく なることは誰にでもある経験だ。 しかし、あまりに良いため、吹聴するのを躊躇することもたまにはある。 角田山は私にとってそんな山の一つだ。
 高さは高尾山にも及ばない482mしかなく、登山の対象というより ハイキングに相応しい山なのだが、花の見事さは第一級である。
 実は、今回(2010年4月)の登山は、角田山を目的に新潟県まで出かけたわけではなく、 隣の弥彦でのギフチョウの撮影が主目的だった。 2日間の予定で出かけて、第1日目の弥彦でそこそこの撮影ができたので、2日目は場所を変えて角田山に登って ギフチョウの撮影をしてみようと思ったのがきっかけである。
 4月10日の朝、燕三条のホテルをレンタカーで出発し、五ヶ峠の駐車場に着いたのが9時過ぎ。 土曜で天気がよいので、すでに駐車場は満杯。 林道にも車があふれていたが、幸いにも下山者の車が 出た直後だったので、駐車場の中に車を止めることができた。 駐車場を整理する係りのおじさんが、続々とやってくる登山者の車に指示を出していた。 それほどの混雑ぶりだから、登る前からこの山の人気のほどは察しがつくというもの。
 7つあるという登山道の中で、五ヶ峠からのルートを選んだのは、 ギフチョウの撮影には、弥彦山方面と尾根伝いにつながっているから 良さそうだという単純な理由だ。
 大勢の登山者に混じってゆっくり登り始めると、いきなり雪割草の花が目につく。 登山道の脇には、登山者が入り込まないようにロープが張られている。 しばらくすると、ギフチョウも現れる。 これは期待できると思って先を急ぐが、 ギフチョウは中腹から上部ではほとんど見かけず、 約1時間で頂上に着いてしまった。 頂上一帯は公園のような広場になっていて、すでの多くの人が思い思いに腰をおろしていた。 広々としてはいるが、展望はよくないので、稲島コースを少したどってみると、 眼下に越後平野が広がる観音堂に出た。 ここからは飯豊の山並みや、左手には日本海も見えて絶好の休憩場所だ。 しばし景色を堪能した後、また五ヶ峠目指して、ギフチョウを探しながら下山した。 カタクリに止まったギフチョウをなんとか撮影できたのは一回だけで、 ギフチョウについては期待外れだった。
 峠に戻ってもまだ時間に余裕があるので、峠の南側を歩いてみることにした。 少し登って広い尾根の上に出ると、こちらも一面のお花畑である。 ギフチョウも飛んでくるが、なかなか花に止まってくれない。 すでに日が高くなりすぎたようで、 しばしお花畑を眺めてから五ヶ峠に戻った。
 結果的にギフチョウの写真を撮るチャンスはあまりなかったが、 カタクリやミスミソウなどの花を見れただけで十分満足できた一日だった。
 この文の最初に、角田山を吹聴するのに躊躇すると書いたのは、 別に自分だけの秘密にしておきたいというわけではなく、 これ以上の人が集まることへの危惧からである。 この小さな山にはすでにたくさんの人(筆者もその一人だが)が押しかけ、 登山道は荒れ気味になっている。 多くの人が来れば、お花畑に踏み込む人も出てくる。 そういうわけで、もっとたくさんの人たちに角田山を知ってほしいと思う反面、 有名になりすぎるのもどうかと思ってしまうからである。

 歩行記録  2010/04/10 登り(五ヶ峠−頂上) 1h00m


 ここは、頂上から稲島(とうじま)コースを少し下ったところにある 観音堂前の見晴らし台。 頂上は木に囲まれてほとんど展望が利かないのに対し、 ここは眼下に広々とした越後平野が開けている。 右奥の雪を頂いた山は飯豊の山並みだろう。 この日は少し霞んでいたが、標高がわずか400m台からの展望とは思えないほどの見晴らしだ。
 夏には花火大会をここから見物するのだと、 地元の人が説明してくれた。 山の上からの花火見物というのも珍しい。 さぞかし、見応えがあることだろう。
RICOH GX200で撮影。

 今回はギフチョウの撮影が目的だったので、花の写真は数カットしか撮っていない。 花に向かって神経を集中しているときに、ギフチョウが近くに来ていて気がつくのが遅れたら 悔しい思いをするからだ。
 この写真は、五ヶ峠を角田山と反対の南側に少し登った広い尾根の上で撮影した。 こちらは標識もないので人も少なく、 なんとなく秘密の花園めいた雰囲気の一帯で、花の密度は感激ものだ。 ギフチョウも時折姿を見せていた。
CANON 5D Mark2・EF100mm F2.8Lマクロ IS USMで撮影。

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