箱根山(神山)(神奈川県)

はこねやま 標高1428m。

 観光地箱根の中にある箱根山(神山)は、首都圏からの交通の便が良く、手軽に登れる山である。
 箱根を訪れるのは、一般観光客が主役であるから、 箱根は俗化していて登山の対象先でないという先入観を長い間持っていた。 そんなこともあって、北アルプスなどの山に頻繁に登っていたころは、箱根には近寄ることがなかった。 だが、ハイキング仲間に誘われたり、 キリシマミドリシジミの採卵に出かけたりするうちに、 観光シーズンのピークをはずせば、けっこう静かな山歩きが楽しめることがわかってきた。 いたるところにある温泉を利用して、下山後に汗を流すという楽しみ方もある。
 筆者は、箱根山(神山)に1998年11月、2000年12月、2010年5月の3回登り、 近くの浅間山には1996年以来、数回頂上を踏んでいる。 とはいえ、とても箱根の山を知っているというほど歩いているわけではない。 ここでは3回目の神山山行の記録と写真を中心に紹介する。
 最新となる3度目の2010年5月の神山登山の動機は、 単に久しぶりに箱根から富士山を眺めてみようと思い立ったからにすぎない。 天気予報によれば、本州は全体的に晴れの予報だったので、富士山を見られるだろうとの予想から 日帰りで出かけた。
 早朝に杉並の自宅を出たころは青空が広がっていたが、小田急線の電車が西に移動するに従い、 雲が多くなり、丹沢の山々も雲の中に隠れてしまった。 これでは箱根も青空が見込めそうもないので、途中下車することも考えたが、 よい代案が思い浮かばないまま、小田原の駅に着いてしまった。 とりあえず、駒ガ岳を目指すことにし、バスで箱根園に向かう。 箱根園からロープウェーで一気に駒ケ岳山頂へ上がると、 雲の中に入ったらしく、なにも見えない。 近くにあるはずの箱根神社元宮さえ見えない。 せっかく三脚まで持ってきたのに当て外れだ。
 気を取り直して、まず箱根神社元宮に寄ってから、 神山を目指すことにする。 草地に覆われた駒ケ岳からいったん鞍部に下ると、新緑が目に鮮やかだ。 ところどころにミツバツツジの紫の花が彩りを添えている。 ロープウェー駅から写真を撮りながら歩いて1時間ほどで、 神山の頂上だ。 木々に囲まれて展望のない頂上には数組の先客が、休んでいた。 この日は平日だったせいか、曜日に関係なく出かけられる中高年の登山者が多い。
 小休止したのち、大涌谷に向かって下山。 途中で冠ガ岳に寄り道する。 祠のあるあたりで地面を見ると、 イワカガミの仲間のベニバナヒメイワカガミがピンクの花を付けている。 さらに下って早雲山分岐まできて、どちらに下るか迷ったが、 この日は早雲山に下りることにする。 前回までの2回はいずれも大涌谷に下ったので、今回は違った道を選んだ。 この分岐からすぐのところで、ベニバナヒメイワカガミが密集して花をつけている場所に出会う。 イワカガミというと、まばらに花が咲いているいう印象しかなかったが、 ここのは花の密度がまったく違う。 花に特別な思いがない筆者でも、何枚もの写真を撮ってしまうほどの光景だった。
 あとは、ときどき人に出会うだけの静かな登山道を早雲山駅へと下ってこの日の山歩きを終えた。

 1998年のときは、11月末に小田急線を使って東京から往復した。 小田原から駒ガ岳登り口までバスに揺られ、ケーブルカーを乗り継いで10時前には山頂駅に着いた。 そのケーブルカーも2005年に廃業して今は運行していない。 このときは、富士山の写真を駒ヶ岳で撮った後、神山に登ろうとの計画だったが、 富士山は雲に隠れていた。 それでも神山の頂上を踏み、大涌谷に向って下山する途中、知り合いのTさん、Mさん一行とばったり出会って驚く。 彼女らは前日に金時山に登って箱根に一泊したらしい。
 2000年の12月には、ハイキング仲間の忘年山行に参加して、 箱根園からロープウェーで駒ガ岳に上がって、神山経由で大涌谷に下った。 このときは天気は良かったのだが、冷たい強風が始終吹き荒れていて、 昼食の休憩場所を探すのに苦労するほどだった。 下山後、大平台にある「姫の湯」に寄って、温泉で体を温めてから帰京した。

歩行記録(1998年) 登り40m(駒ヶ岳から) 下り1h(大涌谷へ)

 駒ヶ岳山頂の箱根元宮のまわりを歩いていたら遺跡が目についた。 岩のほうは馬降石といい、祠は駒形権現らしい。 下界から見て目立つ山の頂は、古くから信仰の対象になっている例が多いようだ。 (2010/05/28)
 2010年5月の写真は、すべてCANON 5D Mark2・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。

アセビの若葉。 スズランのような白い小さな花を鈴なりにつけるときもきれいだが、 赤い若葉も目立つ存在だ。 神山周辺では、いろんな植物に出会える。 (2010/05/28)

 駒ケ岳から神山に向かう登山道は、晴れていても景色は得られないが、 この季節は新緑が目にしみる。木の幹の曲がり具合が面白いので撮った1枚。(2010/05/28)

 新緑の中、トウゴクミツバツツジの鮮やかな花が彩りを添えてくれる。(2010/05/28)

 イワカガミの群落が岩を覆い、花がこぼれおちそうだ。 ベニバナヒメイワカガミという種類らしい。 イワカガミがこんなふうに密集して花を咲かせることを知らなかったので、 びっくりした。 早雲山駅への下山途中で。(2010/05/28)

 2000年12月のときの駒ガ岳からの展望。 快晴で富士山はもちろん、南アルプスの 山々も見えていた。 神山は、写真の右の外にある。 景色は良いのだが、冷たい風が絶えず吹き、とてもじっとしてはいられない程だった。(2000/12/23)


 箱根といえば温泉をはずせない。 写真は大平台にある「姫の湯」。 1100円(2000年当時)で2階の休憩室が使え、飲食物の持ち込み可というのがおおらかでいい。(2000/12/23)

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