諸事雑感 山・蝶・・・(2005年)

・ミドリシジミ(2005/7)
 6月の週末(19日)に埼玉県の秋ガ瀬公園に出かけた。 お目当てはミドリシジミの撮影である。 ここを最初に訪れた10年ほど前(1996年ころ)は採集が目的だったが、 次第に採集より撮影のほうが面白くなり、この2,3年はネットを持たずに、 カメラだけを手に訪れている。 林の中の道を歩いていくと、NHKの取材班に出会った。 ビデオカメラを回して葉に止まったミドリシジミを狙っている。 その周りにやはりカメラを手にしたアマチュアカメラマンと思われる人達がいる。 肝心のミドリシジミもかなりいる。 しかも新鮮である。 曇っているので、気温が急に上がらなかったのも幸いして、 下草に止まっているオスもメスともかなりの数を観察でき、 十分満足して昼前に公園を後にすることができた。
 今回気付いたのはネットを持った人が少ないことだ。 この数年、撮影を目的にする人が増えたように思う。 デジカメの普及が拍車をかけているのかもしれない。 ただし虫に興味を持っているのは中高年が主体のようで、 若い人たちは相変わらず少ない。

・Jimmy Driftwood(2005/5)
 前回は、中古レコード店で長い間気になっていたBill MonroeのLPを入手したことを書いたが、 同時に買った数枚のLPの中にJimmy Driftwoodのレコードも含まれていたので、 今回はそのお話。
 Driftwoodのファンでもないし、 新しく彼のレコードを入手したいとも思っていなかったのだが、 予期せずに目の前に現れた「ザ・ベスト・オブ・ジミードリフトウッド」 というLP(Monument、国内盤)に、 思わず手が伸びてしまった。 長年会っていなかった旧友に、偶然街角で会ったようなものだろうか。 Jimmy Driftwoodはオザークマウンテン出身で、 カントリーとフォークの境界にいたかなりマイナーな歌手である。 Johny Hortonが歌って大ヒットした"Battle of New Orleans"の作者(採譜者?)としてのほうが、 名前が売れている。 帰宅後さっそく聴いてみたら、 プロデューサーがカントリー系の人だったためか、 多少1960年代のカントリーの色づけがされていた。 だが、基本はフォーク界の人の歌であり演奏だなというのが印象である。 レコード棚を捜してみると、 昔ロンドンで買った2枚組のLP"Jimmie Driftwood, Famous Country-Music Maker"(英国RCA盤)が 出てきた。 こちらはMonumentの前にRCAに在籍していた頃吹きこんだもので、 プロデューサーはChet Atkinsである。 4面を通して聴いてみると、Monument盤とはかなり雰囲気が異なる。 マウスボーの演奏が入っていたりで、 同じカントリー系のプロデューサーによって制作されていながら、 より素朴な味わいを残している。
 こうして偶然に1枚の中古のLPに出会ったおかげで、 久しぶりに、多分十数年ぶりにDriftwoodのレコードを聴いたのだった。 参考に彼のCDでどんなものが発売されているのかAmazonで調べてみたら、 彼は"Country"ではなく"Folk"に分類されていて、 RCA時代の録音が3枚組のCDとなってリストアップされていた。

・中古レコード(2005/4)
 前々回のこの欄で、 カントリーとブルーグラスのうち、お気に入りは1950年代から1970年代だから、 主要なアルバムはLPで購入済みであると書いた。 だが中にはLP発売当時に買いそびれたものもある。 CDで復刻されていないアルバムは、 中古レコード店で気長に探すしかないわけで、 筆者も時々中古レコード店を覗いて物色することがある。 先日も神保町の古本屋街を歩いたついでに、 一年ほど前に開店した三省堂の「自遊時間」を足を運んでみた。 ここは狭くてかび臭いという中古レコード店のイメージを払拭するかのように、 明るくゆったりと商品が並べられている。 カントリーのLPも豊富でついつい5枚も買ってしまった。 その中の1枚がBill Monroeの「Knee Deep In Bluegrass」の国内盤で、 LP発売時に購入しそこなったアルバムである。 帰宅後さっそく聞いてみたら、 内容はもちろんのこと盤質がAだけあって音質もよく大満足の一品だった。 盤質がよいとたいていはジャケットの状態もよいので、 音楽を聴きながらジャケットを眺める楽しみも加わる。 こういう掘り出し物に出会えることがあるので、 中古レコード店めぐりもやめられないのである。
 昔のLPもCDで再発売されればそれを買って済むのだが、 困るのはLPと同じ内容でCDに復刻されない場合である。 やはりLPの制作者は根拠があって曲の組み合わせや順番を決めているのだから、 CDに復刻するときも同じ組み合わせでCDにして欲しいものである。 厳密に言えば、LPと同じ曲の組み合わせでもLPの第一曲目はA面とB面に二つあり、 CDとは異なるのだが、これには目をつむるしかない。

・蝶の標本(2005/4)
 蝶の標本の整理方法には決まった規則などはないので、 各人それぞれの基準に基づいて行っているのだと思う。 一般的には種類別、または産地別に縦あるいは横方向に揃えて並べるのが多いだろう。 そのほうが後で標本を調べたり追加したりしやすいからだ。 筆者も概ね種類別に標本箱の縦方向にそろえて標本を並べている。 だがそんなに固く考えないで、美的感覚に従った並べ方も悪くないと思い始めたところだ。 きっかけは、2005年4月に行われたある虫好きの方(某大学のS元教授)の個展で見た標本箱だった。 整然と蝶が縦に並べられた標本箱に加えて、 自由な発想で標本が美術品のように並べられた標本箱が混じっていた。 野山を吹く抜ける風を連想させるような曲線状に配置されたものなど 見ているだけで楽しいものだった。
 いつの日か筆者も標本箱を整理し直して、 見て楽しい標本の配置にしようかと思っている。

・音楽(2005/3)
 前回の「オーディオ装置の入れ替え」の続きである。 ハードに対してソフトの方つまり音楽はどんなものを聴いているのかというと、 カントリー(ブルーグラス)とクラシック(オペラと交響曲)が主体というちょっと変わった組み合わせである。
 カントリーは1950年代から1960年代のものを中心に1960年代から聴いているので、 お気に入りのアルバムはLP時代にそのほとんどを入手済みである。 最近はカントリーの日本盤はあまり発売されないので、 買いたいと思うCDは輸入盤が主体になっている。
 オペラもLPレコード時代から継続して聴いている。 CDの時代になって気に入らないのは、歌詞カードの字があまりに小さいことである。 歌詞カードを見ずにCDを聴ければそれに越したことはないのだが、 残念ながらそれほどのオペラ通ではない。 CDを聴きながらCDに付属の歌詞カードの小さい字を目で追おうとすると、 それだけで音楽への神経の集中の度合いが著しくそがれてしまう。 そんなわけで、 オペラはCDよりもLPで、付属の大きな歌詞カードをめくりながら聴くことを好んでいる。 これなら歌詞カードから目を離してしばらく歌に聞き入ってから、 また歌詞カードに目を落としても比較的簡単に歌の場所を探し出すことが出来る。
 LPをレコードプレーヤーにかける作業が面倒だという人もいるようだが、 私にはちっとも苦にならない。 レコードをジャケットから取り出してターンテーブルに置き、 ブラシをかけた後トーンアームを移動させる一連の動作は、 音楽を聴くための儀式として自然に手が動くほどに体に染み付いている。 LP時代に音楽を聴き始めた旧世代の人間であること証明しているようなものだが。

・オーディオ装置の入れ替え(2005/3)
 このホームページでは、 登山と蝶の話題に焦点を絞っているので、 今回の話題はそこから外れている。 しかし、音楽を聴くことも、 筆者にとって山登りや蝶の観察と同じように人生の楽しみの重要な一部分で、 それぞれが密接に関連している。 そんな関係で音楽を聴くための道具であるオーディオ装置を2004年末に入れ替えたので、 その顛末を取り上げることにしたい。
 2004年の暮まで長年使っていたオーディオ装置は、 要といえるスピーカーがBoston AcousticsのA150だった。 20年ほど前の1984年、 ADCAMのアンプと一緒にBoston Acousticsのフロア型スピーカーA150を購入したのが このスピーカーとの付き合いの始まりだった。 当時はボストン郊外に住んでいたので、 どうせなら地元の会社(正確にはPeabody市にある)の製品を使ってみようというのが購入の動機である。
 帰国後数年してADCAMのアンプが不調になったあとも、 A150にオンキョーのアンプとデノンのCDプレーヤーを組み合わせて 特に不満もなく使い続けていた。 それが2004年の秋になって、 部屋の掃除のついでにスピーカーの前面のネットをはずして、 なにげなくウーファーのエッジ(外周のゴムのような柔らかい部分)を指で押してみたらひびが入ってしまった。 20年も使っているうちにエッジの材料が劣化していたようだ。 これでは音質に悪影響を及ぼしていることが明らかなので、 エッジを修理して使い続けるか新しいスピーカーに変えるかの選択をするはめになった。 普段は買わないオーディ雑誌を2,3ヶ月続けて買って最新情報に目を通してみると、 オーディオ機器もかなり進歩している様子。 かなりの出費になるが、 思い切ってスピーカーを始めアンプとCDプレーヤーの一揃いを買い換えることを決断した。 エッジの劣化だけではなくA150の幅が部屋の設置場所から考えて少し広すぎると感じていたことと、 CDプレーヤーの音飛びが起き出したことが装置一新への後押しをすることになった。 雑誌で得た情報を頭に入れ、秋葉原に何度か足を運んで店員さんの話を聞き機種を決めた。 本題とは関係ないが、 オーディオ機器売り場で見かけるのは、お客も店員さんも相変わらず男性ばかりなのは昔と変わらない。
 スピーカーは幅の狭いトールボーイ型のスピーカーのうちから値段と相談してB&W社の703を選び、 アンプはインテグレーテッドタイプの中からAccuphaseのE-308を、 CDプレーヤーはMarantzのSACDプレーヤーSA11S1を選んだ。 これらの機器が家に届いてその音を聞いてびっくりした。 あまりに前の装置と違うのである。 音に深みとつやがあり、低音も十分に力強く引き締まっている。 アナログプレーヤーは元のまま (テクニクスのターンテーブルSP-20、サエクのトーンアームWE-308NEW、デノンのカートリッジDL-301U)だが、 レコードを聴いても新しい組み合わせでは、 音が生き生きとしているのはCDと同様である。 LPのときに左右の音量バランスに問題があって長い間頭を悩ませていたのが、 今回はそれも解決してしまった。 原因はアンプのフォノ入力回路のどこかに問題があったようである。 装置を入れ替えた直後の2005年のお正月は、 気に入ったレコードやCDをとっかえひっかえプレーヤーにかけて、 こんなにいっぱい音が刻まれていたのかという思いで聴いていた。 以前の装置で音を貧弱にしていた最大の原因はスピーカーのエッジの劣化と思われるが、 劣化は徐々に進行するから音の変化に気がつかなかったのだろう。 これでオーディオ装置の整備も一段落したと言いたいところだが、 この続きがある。
 旧システムのアンプはLP以外の音源ではまだ正常に動作する。 そこで年が明けた2005年初めにCDプレーヤーの音飛びの不具合をメーカーに依頼して修理した後、 小型スピーカーを購入してセカンドシステムを構成し別の部屋に置くことを考えた。 セカンドシステムだから出来るだけその存在が目立たないようにしたい。 つまりスピーカーは小型でなければならない。 選んだのはKEFのQ Compactである。 音を聴いて選んだわけではなく、 小型で値段が手ごろでかつデザインがしゃれているからというのが選定理由。 大きさは180Wx270Hx250Dmmで、これなら部屋の単なる飾りかアクセサリー程度で、 存在感を主張しない。 中国製と表示されているが、 後方に向かって曲線を描く凝った作りで、 インテリアとしての価値も高いと思っている。 これがペアで4万円以下で手に入る。 しかもその音が本格的なことに驚いた。 低音だって一応それらしく出ている。 この音質は、音楽を気軽に流しておく目的には十分以上である。 最近の小型スピーカーの実力の高さを思い知らされた。 ということはメインのシステムのスピーカーをB&W703にしたのは、 必要以上に大きすぎたのではという思いがしてきた。 もう手遅れだが。

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