蝶の撮影(スラウェシ島)

 スラウェシ島に出かけた2003年ころは、 蝶の採集をほとんど行っていなかったが、 初めて訪れるスラウェシでは知らない蝶が多いので、 久しぶりに採集をすることに決めていた。 もちろん撮影もするつもりでいたので、 日本を出発する前に、どのカメラを持って行くべきか迷った。 この数年、蝶の撮影にはもっぱら、 Olympus OM4-Tiに90mmマクロレンズをつけて使っていたのだが、 2003年の夏にデジカメNikon CoopPix5700を入手して以来、 このデジカメでも蝶を撮影していたからである。 OM4-Tiであれば、手になじんでいて安心感がある反面、 マクロレンズ1本では風景が撮れないので、 交換レンズを持って行くか、もう1台カメラを持っていくことになる。 その点CoolPix5700であれば、 1台でマクロ撮影も風景写真も可能である。 腰の調子に不安があったこともあり、 荷物が重たくなるのは避け、 結局CoolPix5700を1台だけ持っていくことにした。 CoolPix5700の弱点である広角側を拡張するワイドアダプター(35mm判の28mm相当まで可能)も、 重くてかさばるので携行を断念した。 ここに載せた写真はすべてCoolPix5700で撮影したものである。
 Panekiではアオネアゲハが花で吸蜜しているところに出会い、 15枚ほどもシャッターを切る時間があった。 しかし、どれもぶれていたりピントが合っていなかったりで、 まともな写真は撮れなかった。 液晶で像を確認してシャッターを押すとき、 一瞬タイミングが遅れるような感じがあり、 気がつくと蝶が花から離れていたり、 次の花に移っていたりするのである。 もしOM4Tiを持っていたら、 あるいはいい写真が撮れたかもしれない。

 採集のほうは、 天気に恵まれたおかげで、 まあまあの収穫だった。 しかし、なれない長靴を長時間履いて歩いたので、 足の裏に疲労がたまったのは予想外だった。 底が柔らかいのでどうしても足裏がくたびれてしまうのである。 けれども長靴のおかげで足場を気にせずにネットを振ったり、 カメラを構えることができたとも言える。


 2003/12/28 Paneki。  川原に吸水にやってきたシジミチョウ(Castalius roxus?)とタイワンシロチョウのご対面。

 2003/12/28 Paneki。 だれかが仕掛けたチョウの死骸のトラップに集まった各種の蝶。 カワカミシロチョウ、ベニシロチョウ、ミカドアゲハ、ミロンタイマイ、オオオナガタイマイ、 セレベスオナガタイマイなどが見える。

 2003/12/28 Paneki。 川原の湿った砂地に、 白、赤、黄色のシロチョウが群れる光景は、熱帯にいることを実感させてくれる。

 2003/12/29 Palolo。
 Cyrestis acilia(イシガケチョウの仲間)。 薄暗い森の中で少し開けた空間の葉の上に止まっていた。

 2003/12/31 Palolo。
 Hestinalis divona(ディボナアサギゴマダラ)。 木の枝に吊るしたトラップから滴り落ちた雫におびき寄せられて来たようだった。

 2003/12/31 Palolo。 トラップのバナナなどを入れたストッキングで吸汁する Euripus robustusと思われるタテハチョウ。

 2003/12/31 Palolo。 トラップのストッキングで吸汁する2頭のニテビスフタオチョウ(Charaxes nitebis)。
 トラップの中身はバナナなどを酒に浸したもので、 同行したむし社の雫石さんが、 参加者のために作ってくれたものである。

 2004/01/01 Bantimurung。 Paluでの滞在を終えて帰国の途についた際、 Makassar郊外のBantimurungに立ち寄った。 ここはウォーレスも1857年に訪れた場所である。 標本商で品定めをした後、有料の公園内に入って水量豊かな滝を見ながら歩いていると、 偶然アオスソビキアゲハの吸水に出会った。 こちらがネットを持っていないことを察知してか、 カメラを近づけても逃げようとせず、 長い間吸水していたのでゆっくり観察できた。
 スソビキアゲハを間近に見るのは初めてで、 優美な姿に魅了されてしまった。 採集できなかった負け惜しみも多少あるが、 標本より生きたスソビキアゲハのほうがずっと格好いい。 長い尾の先端が微妙に外側にそり返っている様子などは、 標本では再現不可能だろう。

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