チベットよいとこ一度はおいで 酒はうまいしねーちゃんはきれいだ

 中国の四川省、成都の飛行場を朝早く飛び発ったエアーバスは、山の尾根を
すれすれに上昇を続け雲をかすめ降下らしい降下をせずにラサの飛行場に舞い
下りた。
4年前の8月、成都のうだるような暑さからのラサは、まるで別天地のように
輝いていた。空は藍染めの藍色、雲は頭上のすぐ近と思えるところに綿あめの
ように浮いており空気はからからに乾いていた。
 天国に一番近い人々の国に来たのだ。
これから富士山の頂上の高さでの短い旅が始まる。空気が薄く紫外線の降り注
ぐ世界でもっとも過酷であろうチベットはおれ達を迎えてくれた。
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              ラサの夜

「おーい鈴木、おまえ頭は痛くないか」
「なんともねーよ」
「おまえはどうなんだよ」
「俺もなんともない」
隣で、柳がハー・ハーハーてうなってるてのにな。
 ラサに着いた次の日の夜、柳は高山病の偏頭痛にうなされアー・・・・ウー
・・・うなるばかり。
治療方法はなく、最悪は死に至ると行く前に驚かされていた。
血液きの流れをよくするためただただ水分の補給につとめるだけという情けな
さ。
 俺達のトランクには、日本からミネラルウォーターが全部で24リッター持っ
て来ているんだ。
本当は、前回行ったシンガポールで着いた日の夜、強烈な下痢に柳がおそわれ、
柳を海外旅行に連れていくため絶対必要なものは日本の水と俺達は勝手に決め
つけ、何かと不安がる柳に「水は俺達が確保する、おまえがヘバッタ時のため
に、梅干し・海苔・佃煮・塩鮭・お粥何だって持て行くからな、なー、だから
心配するなよ、俺も、鈴木も絶対保証するよ。「だから一緒に行こうぜ」

チベットに着いたなら、これだけは絶対しないようにとコンコンと言われたこ
とは・走るな・酒飲むな・早く寝ろだった。
 柳はまじめな男である。
頭の中では、目覚し時計が3つも4つも鳴りっぱなしらしい。
やるなと言ったことは俺達二人と違って忠実に守る男であるが、いかんせん背
が高い、高すぎて心臓ポンプちゃんが頭まで血液を補充しきれないらしい。
柳は「もう水はいんない」「遠慮すんな、まあ、もっと飲め」酒じゃないんだ
ぜまったく。
俺達には、柳も心配なんだけど今回一緒に四川省の成都から来ている中国の旅
行部長のペイさんから今晩チベット旅行社の連中とカラオケに行こうよて誘わ
れているのさ。
チベット旅行社の連中は、部長が来たって事で相当神経をつかっているのだ。
「柳、何リッター水飲んだい」
「2リッター以上かな・ゥー」
「後もう少しで3リッターだ、3リッター飲めば直るからな、もう大丈夫だ、
ペイさんも大丈夫3リッター飲めば元気でるね、言ってたよ。」
・・・・・・・「柳、俺達ちょっと出かけたいんだけど……?」
「……行って来いよ!」
目は行くなと言ってる気がしたけど、俺と鈴木の心はラサのカラオケにもう行
っていた。
ラサのポタラ宮の下にあるカラオケにチベット旅行社の人たちがトヨタのラン
クルで招待してくれた。
ラサ一番の高級ナイトクラブ風のカラオケはホールの真ん中にミラーボールが
輝き暖房も利いていて(夜は寒いんだよ)ホールに一つだけあるドアのない特
別室に招待された。
テレビが隅っこに一台あって細長いテーブルが中央にありソファーが周りを取
り囲んであるようなちょっと昔の日本のスナックという感じで、ホールは中国
の役人らしい人たちでいっぱいだった。
出てきた飲み物はバドワイザーの缶ビールで中国ビールが出るとばっかりおも
っていたおれたちは感激した、酔っぱらえばなにを飲んでも同じなのに・・・
チベットの姉ちゃん達は、ほっぺたが赤いとっばっか思っていたのに、ここの
姉ちゃんは、色が白くて美人ぞろいさ、またまた嬉しくなっちゃたよ。
しばらくたってドアの無いわけがわかったね。
サー俺達も歌おうぜチャコの海岸物語(俺のおはこ)という時にテレビに写っ
てるのはホールと同じなんだよね、カラオケの機械が一台しかないんだよ、昔
の日本も同じだったと変に感激したよ。
当然だけどチャコ海は無かったね。
俺達はこうゆう時のために、ポラロイドカメラを持って来ているんだ、言葉は
通じなくてもすぐにお友達になれちゃうんだよ…これはすぐれ物だぜ。
大いに盛り上がって、酒をがぶがぶ飲んで、きれいな姉ちゃんとダンスして帰
ってきたら、柳はしっかりと3リッター飲んでいた。
俺達もしっかりと飲んできた。
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