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すばらしいセリフ(ちくま文庫)


はじめに


ハテ珍らしき対面じゃなア(寿曾我対面)
おめず臆せずはじらわず(寿曾我対面)
時至集とも召されなん(夜討曾我狩場曙)
きせるの雨が降るようだ(助六)
五丁町は暗闇じゃぞえ(助六)
判官殿にもなき人を(勧進帳)
こいつ師匠を困らせおるわい(傾城反魂香)
梶原源太はおれかしらん(恋飛脚大和往来)
京の六条数珠屋町(恋飛脚大和往来)
南無三紅が流れた(国性爺合戦)
この汗わいなア(博多小女郎浪枕)
慈悲もなさけも身どもは知らぬ(平家女護島)
女房の罰がおそろしい(心中天網島)
不義になって貸して下され(女殺油地獄)
紙子ざわりが荒い荒い(廓文章)
わしゃわずらうてな(廓文章)
すわといえば晴の草履(鬼一法眼三略巻)
死んでも褒美の金がほしい(鬼一法眼三略巻)
おわりなければ初めもない(壇浦兜軍記)
きのう剃ったも今道心(苅萱桑門筑紫轢)
青江下坂よっく切れます(敵討襤褸錦)
源太は殺さぬ手ばかり動く(ひらがな盛衰記)
権四郎頭が高い(ひらがな盛衰記)
いずれも見ても蕾の花(一谷嫩軍記)
つい都までオオ健気(一谷嫩軍記)
剣も剣切り手も切り手(石切梶原)
腹にかいながあるからには(源平布引滝)
うちの人の好くのは(夏祭浪花鑑)
蚤とった(夏祭浪花鑑)
そりゃこそ啼いたわ東天紅(菅原伝授手習鑑)
話すことあり聞くことあり(菅原伝授手習鑑)
おいらは知らぬ(菅原伝授手習鑑)
せまじきものは宮仕え(菅原伝授手習鑑)
思い出づるは桜丸(菅原伝授手習鑑)
いかに八大竜王(義経千本桜)
器用な子じゃなア(義経千本桜)
腹がへってはできぬもの(義経千本桜)
酒は飲んでも飲まいでも(仮名手本忠臣蔵)
待ちかねたわやい(仮名手本忠臣蔵)
斧とも九太とも(仮名手本忠臣蔵)
色にふけったばっかりに(仮名手本忠臣蔵)
祇園町を離れてから急げ(仮名手本忠臣蔵)
誠から出たみんな嘘(仮名手本忠臣蔵)
髪の飾りや化粧して(仮名手本忠臣蔵)
運のいいのと悪いのと(双蝶々曲輪日記)
連れて手前は逃げ弾正(本朝廿四孝)
負うた子に教えられ(近江源氏先陣館)
太宰の家が立ちませぬ(妹背山婦女庭訓)
お留守かえ(妹背山婦女庭訓)
頭に三里があるかいやい(新版歌祭文)
落ちつく先は九州相良(伊賀越道中双六)
幽霊もさぞひだるかろ(摂州合邦辻)
金は小判というものを(傾城阿波の鳴門)
いまごろは半七さん(艶容女舞衣)
腹がへってもひもじゅうない(伽羅先代萩)
そこらあたりの虎どのが(伽羅先代萩)
世話しられても恩に着ぬ(近頃河原の達引)
妻が知らいで何としよう(絵本太功記)
紅葉があるのに雪が降る(箱根霊験躄仇討)
間夫にあうのはひけ過ぎ(碁太平記白石噺)
犬かと思うたわいの(鏡山旧錦絵)
絶景かな絶景かな(楼門五三桐)
つづら背負ったがおかしいか(艶姿石川染)
何にもいうな人ではないわい(五大力恋緘)
これも誰ゆえ桜姫(桜姫)
うれしや日の出(伊勢音頭恋寝刃)
身不肖なれども福岡貢(伊勢音頭恋寝刃)
しめこのうさうさ(隅田川続俤)
まだあるまだある(敵討天下茶屋聚)
掛け流しがよいわいなア(お祭佐七)
首が飛んでも動いてみせるわ(いろは仮名四谷怪談)
雉もなかずば打たれまいに(鈴ヶ森)
かげ膳すえて待って居りやす(鈴ヶ森)
久しぶりだなア(与話情浮名横櫛)
わるくねえな(花街模様薊色縫)
なるほど世間はむずかしい(三人吉三廓初買)
これが別れの八幡鐘(八幡祭小望賑)
わっちゃアほんの頭数(青砥稿花紅彩画)
恨みがあるなら金にいえ(勧善懲悪覗機関)
みそかに月の出るさとも(曾我綉侠御所染)
こいつア宗旨を変えざアならねえ(船打込橋間白浪)
お七気どりの吉三さん(吉様参由縁音信)
ここで三合かしこで五合(慶安太平記)
鰹は半分もらってゆくよ(梅雨小袖昔八丈)
姉上夜討でござる(忠臣いろは実記)
布告を知らぬ者と見える(霜夜金十字辻筮)
星が飛んだのか(天衣紛上野初花)
天か玉子のぬきで呑むのも(天衣紛上野初花)
時雨を待たず染めて候(土蜘)
鬼の金歯のひと粒えり(極附播随長兵衛)
しきみの水でも飲んでおけ(島鵆月白浪)
好きな酒はたらふく呑み(新皿屋鋪月雨暈)
秋の習いといいながら(高時)
船中にて左様なことは(船弁慶)
二朱より安い按摩はしないよ(盲長屋梅加賀鳶)
如月の空のさだめなく(戻橋)
宿に帰るはいやになった(籠釣瓶花街酔醒)
これで多助も男になれやんす(塩原多助一代記)
二三の水出しやらずの最中(怪異談牡丹燈籠)
下戸の知らねえ味だなア(神明恵和合取組)
わが名にちなむ庭前の(桐一葉)
みずからが化粧箱も同然(沓手鳥孤城落月)
北条が何じゃ(修禅寺物語)
清いおとめと恋をして(鳥辺山心中)
散る花にも風情があるなア(番町皿屋敷)
瞼の上下ぴったり合わせ(瞼の母)
しがねえ姿の土俵入(一本刀土俵入)
江戸の人よさらば(将軍江戸を去る)
千年も万年も生きたいわ(不如帰)
来年の今月今夜(金色夜叉)
覚悟とは読んで字の如し(金色夜叉)
決してもう他人ではない(滝の白糸)
春でおぼろで御縁日(日本橋)
静岡って箱根より(婦系図)
おいらア新内は大嫌いだ(鶴八鶴次郎)
春雨だぬれてゆこう(月形半平太)
赤城の山も今夜を限り(国定忠治)
わしの兜の竜がしら(白野弁十郎)
姓は丹下名は左膳(丹下左膳)
寄らば切るぞ


後記



解説 幸福な時代 水原紫苑


すばらしいセリフ


ちくま文庫

筑摩書房
1999年12月2日発行
275ページ
定価740円

解説:水原紫苑
装幀:間村俊一

ISBN4-480-03522-2

★ 昭和55年10月刊行の駸々堂出版版[書誌]の文庫化。


カバー紹介:
子供の頃から聞きおぼえ、生活の中に生きている歌舞伎・新派など心に残るセリフ120を役者の魅力を通して語りかける名随筆。歌舞伎の名セリフを聞いていて心地よく、役者の口跡とともに忘れがたい。「月も朧に白魚の」など七五調のセリフを駆使した河竹黙阿弥はことばの綾を最も楽しんだ作家。また役者のいい声が名セリフという印象を残している例も少なくない。