「おばあさん、世の中にふるやのもりほどおっかないものはないね」といったのは、 絵本「ふるやのもり」のおじいさんですが、 私たちじいさん、ばあさんも長年ふるやのもりとつきあっています。 今住んでいる家からだいぶん離れた所に、若い頃に住んでいた古家があって、 そこにはじいさんが今までに作った物や、作りたい物の材料や道具がぎっしりつまっています。 ガラクタに見えますが、とても大事な物です。 その古家にふるやのもりがやってくるのです。 雨の日は家にいても「だいじょーぶかなー」と気が気でありません。 晴れるのを待って、古家に行って、あちこちに置いたバケツをのぞきます。 雨水が溜まっていれば流しに流して、また同じ場所に置きます。 溜まっていなければ「ヨーシ!」といって、バケツを新しい雨漏りの跡に置くのです。 それから屋根に上って穴をふさぎます。 トントントン、 トントントン。 屋根の上は楽しいのです。空が広くて、昔、じいさんが通った小学校も見えます。 それでもまた雨が降ると、ふるやのもりは新しい穴からやってきます。 雨が上がると古家に行って、もうなれっこですから、「ハイ、ハイ、ハイ」とバケツを点検します。 そして屋根の上でまたトントンするのです。 こうしてふるやのもりとじいさん、ばあさんの根くらべは何年も続きましたが、 ついに雨漏りしなくなって、「ふるやのもりに勝ったぞー」と喜んでいた矢先でした。 古家のはしっこに一つだけある二階の部屋に、ふるやのもりがやってきたのです。 それも大物が。三角にとがった天井の真ん中に穴があいて、空が見えています。 そこから、ポッツーン・・・・・と大粒のふるやのもりが落ちてきます。 「さて、困った。ここの屋根には上れんなー」 溜まった雨水を捨てるのも大変です。 バケツをさげて、ヨッコラヨッコラ階段を下りなければならないのです。 「うーん」 じいさんは考えました。 ガラクタの中をゴソゴソ探して、取り出したのは大きなじょうごと長いホースです。 「うん、これこれ! ばあさん、手伝っておくれ」 じょうごを天井の穴の下に吊るしてホースをつなぎます。 そしてガラス代わりに窓にはってある板に穴をあけて、ホースを外にたらしました。 そのとき、特大のふるやのもりがポッツーンとじょうごに落ちました、と思ったら、 ツーとホースの中を滑って窓の外に出て行きました。 ふるやのもりが「アーッ」と思ったときには、もう溝の中だったことでしょう。 「やったー!」 じいさんとばあさんは手を取り合ってピョンピョンしました。 古家がギッシギッシとゆれましたが平気です。 それからというもの、ふたりは土砂降りの雨の日も、のん気にお茶をすすったりしているのです。 |