夫さんがいちじくを買ってきた。 いちじくって秋の色ですね。 小学生の頃、住んでいた家に洋間がありました。 その頃の流行なのか、日本家屋の端っこに一部屋だけ洋風の応接間がくっついていて、 そこだけ屋根が緑色だったりしたのです。 その洋間に、進駐軍の払い下げの大きなベッドが2台置いてあって、私は妹とそこで寝 ていました。 夏休みも終るころ、朝おきるとベッドと同じ高さにある窓から庭のいちじくの枝に移り ます。大人も登れるほどの大木でした。 よく熟れて、小さく星形に口を開いてるのが甘ーいのです。 家にトムという毛の長いイヌがいて、いちじくの皮をポ~ンと投げると、ジャンプして パクッと食べるのです。 一度も失敗しません。 もっともっと、とシッポをふるので次々にいくつも食べては投げてやりました。 そのいちじくの太い幹が台風でぼきっと折れてしまったことがあります。 皆んな、もうアカンと思ったそうです。 でも、いちじくは大切なおやつがなる木だったのでしょう。 祖母はあきらめず、折れた幹をつないで、添え木を当て、蓆と荒縄でグルグル巻きにし ました。 そして何週間も蓆が乾かないように水をかけていたそうです。 そうしたら、なんと元通りくっついたのです。 父が「おばあちゃんの愛情やな~」といったのを覚えています。 いちじくの木に対する愛情と、お菓子が少ない時代でしたから、 孫に対する愛情の両方だったのでしょうね。 |