【番外編】『真理と摂理』《エピローグ》
真理はそのまま、眠るように息を引き取った。その顔には今まで見たことがないほどの穏やかな笑みをたたえていたという。真理の死を悲しむものはだれひとりいなかった。
いや、一部の人間はそれでもやはり、真理が亡くなったことを悲しんでいた。だけど立場上、それを素直にあらわすことができずにいた。
「真理さん、満足だったのかな?」
「どうだろうね。本人のみ知る、だな」
最期の時に立ち会った文緒と睦貴は亡くなった真理に想いを馳せた。
真理と摂理。
産まれた順番が違っただけで、それ以外はなにひとつ条件は変わらなかったはずなのになにがどう、違ったのか。
真理は、不器用で真面目すぎたのだ。摂理のように適当に息を抜いていれば、これほど苦悩することはなかったはずなのに。真理は与えられた役割をただまっすぐにまっとうしようとしただけだった。その不器用で真面目な性格が仇をなし、周りにいる人間にはその態度が苦痛で??逃げてしまうほどの苦悩を与えてしまったのかもしれない。
しかし……最期は求めてやまなかった『愛』をすべて手に入れることができて??真理は満ち足りた気持ちのまま、亡くなった。
手に入らないと駄々をこね続けた結果、手に入れたものは――。
真理にとってかけがえのない宝物となったのかもしれない。
【おわり】