愛から始まる物語・プロローグ
『ふーちゃんね、むっちゃんのお嫁さんになるの』
舌足らずな甘ったるい声で、俺の耳元で囁く少女。
その様子を見て、少女の両親は苦笑している。
幼い頃の身近な大人への憧れの気持ちだと思いつつも、俺は少女に約束する。
『大きくなって気持ちが変わらないのなら、結婚してやってもいいぜ』
俺の言葉に少女は笑う。
『約束よ──』
そうして指切りげんまんをしたのは、遠い日の夏の思い出。
少女のその囁きが俺の人生にこんなにも大きく関わってくるとは、当たり前だがその時はまったく思ってもいなかった。