デトニの部屋特別分室

憧れの欧州鉄路・1


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スイス国鉄

ゴッタルド峠「撮り鉄」記

2001年10月末、トラック同士の衝突炎上事故で道路トンネルが長期不通になってしまったスイスの「サンゴッタルド峠」(ゴットハルト、ゴットハール、ゴタール・・・様々な綴り、読み方がある)は、ヨーロッパ南北交通の要衝で、特に貨物輸送の比率が高い。北側から、全長15,003mのゴッタルドトンネルで抜け、イタリア国境へむけての南側では、連続26‰の勾配と3箇所のループ(うち、1箇所は二重ループ!)で一気に1,000m近い標高差を稼ぐというダイナミックな線形です。貨物列車のほとんどは、この線のために開発されたという有名な大出力機Re6/6(120t 7800KW!)の単機又は重連、Re4/4U(4700KW)では四重連の運用もあったそうです。

ドイツ鉄道150周年の、感動的な車輌パレードを見学した1985年9月の「憧れの欧州旅行」は三度目。今まで、駅撮り中心でしたが、有名な峠で初の「駅間撮り鉄」に挑戦することになりました!事前にその美しさ、細密さで有名な地形図を購入してのループ線撮影となった。日本でも余り得意ではない「駅間撮り鉄」・・・ましてや、国外の「峠」・・・結果は惨憺たるものでした。しかし今、改めてネガをスキャンしてみると、当時気が付かなかった事も含め、懐かしい感動が蘇ってきました。


バーゼル〜ルツェルン方面からイタリア方面に向かう急行列車に乗り、ゴッタルドトンネルを抜ける。下の写真は、北側のゲシェネン駅を発車してトンネルに入らんとする列車の車窓から写す。牽引機はRe6/6、見えている客車は、当時のスイス国内用標準の「タイプT系」と思われます。低い車体と大きな一段下降窓が軽快な印象です。「近鉄タイプ」の元祖であることは余りにも有名です。

単線並列構造で、運転方式もこれに倣っていることが信号器からも伺える。しかも、何と!このときは、右のトンネルを走行していたのだ!このときは全く、気がつきませんでした。スイスは日本と同じ「左側通行」です!片方は、保守でもしていたのでしょか?よく見ると、右のトンネルの「緑現示」の信号器は、逆行運転専用らしい。ひとつのトンネルも完全に複線です。トンネル内から本線と副本線に分岐しているのでしょう!本当に、冗長性の高いシステムを採用していることがわかります。

このトンネルの遥か上方には、有名なリゾート地「アンデルマット」があります。有名な「氷河急行」の走る私鉄「FO」(フルカ・オーバーアルプ鉄道)が通っています。そこから、このゲシェネンまでもFOの支線が通じています。

トンネルを抜けると、国境まではかなりの距離があるが、完全なイタリア語圏になります。「アイロロ」(隘路路(^_-))で、普通列車に乗り換えたときのスナップです。Re6/6より一世代前のAe6/6(「R」は高速型「A」は80km/h以上)形10404号機の引くローカル貨物が停車中。1955年製だが、4300KW120tの高性能機で、車体も美しく保たれている。駅員?と何やら会話を交わす機関士氏。機関車とは対照的に・・・小さい!


アイロロで、「運転台付き客車」を先頭にしたプッシュプル方式の普通列車に乗り換える。マクラギは木製だが勿論、ロングレールで保線状態は最高!Re6/6牽引の急行列車とすれ違う。 ウン?何故、このような写真が(?_?)。

山間の小駅に近づく。右は貨物線。左は通過(待避)線。

決して「片隅運転台」ではありません!

東洋の島国から来た「鉄」を運転席に迎え入れてくれた、ヒゲの運転士(機関士?)氏!片手に煙草の超お気軽モードです!車掌の重々しい制服に比べ、運転士はこの通り、極めて「ラフ」な格好・・・あちらを旅した方なら驚いたのでは?電車と共通のワンハンドルマスコンはヨーロッパの象徴です。あのTGVも、このタイプです。この写真(停車中)では「矢印」が上を向いて「OFF」の状態。右へ回せば力行、左は電空併用の直通ブレーキがかかる。左端の小さなハンドルが「逆転機」、大きなものは「非常ブレーキ」マスコン脇の小さなハンドルは、減流値の調整か直並列切り替えか弱め界磁(交流整流子モーターにあるのかな?)・・・といったところでしょうか?奥の大きなメーターが、「カチカチ」と時計のような動きをする速度計。中央は圧力計。手前の上下スライド式の「複式」のメーターは、電気関係です。


地図で目星をつけた「Rodi−Fiesso」という小駅で下車。地名も完全にイタリア語です!駅前には店ひとつ無い(~_~;)。降りたのは・・・私一人。

発車してゆく普通列車を「後追い」で撮りました。最後尾には何とRe4/4Tの前面貫通の初期形10010が!1947年製。出力も僅かに低い1850KW、57t。客車3両、荷物車1両を推進する。乗っていた先頭の「制御客車」に僅かに黄色い帯が見えます。こんなローカル列車にも「一等車」(二等と合造)が連結される。「ユーレイルパス」利用者には有難い。レール面と変わらぬ低いホームが印象的です。

これから、ひたすら「国道」を歩きます^_^;


行き交う車から、奇異の視線を浴びせられつつ・・・暫く離れていた線路が近づいてきた。

古めかしい煉瓦にごつい岩山・・・これぞ、ヨーロッパのトンネルです。同系色の多階調のためか、圧縮が効かずに重たい画像になってしまった。

6個の1300kWモーターが唸りを上げて26‰を駆け上がるRe6/6牽引の旅客列車。邪魔にならない・・・ちょっと頼りない?位の細いスマートな架線柱が印象的です。超望遠レンズで、トンネル越しに狙ってみたくなりますね。写真奥の右カーブ辺りから、「ループ」が始まる。

道路脇から下を見れば、ごらんの通りの深い谷!緑も余り無い「岩山」です。通っているのは、「旧道」でしょうか?まさか、「ナントカ軌道」の廃線跡では・・・なさそうです。


更に、下ってゆくと・・・漸く、地図で目星付けた場所に出ました!(^o^)/♪

上を走るイタリア国鉄の客車を連結した国際列車は・・・グルグルと(@_@)廻って・・・

こんな感じで下に出てきます!

厳しい光線状態のなか、一瞬のシャッターチャンス!これで、良しとしましょう!

このまま峠を下って次の駅から・・・とするには、余りにも遠かったので、「26パーミル」を戻らざるを得ませんでした。普通列車の本数も限られているし・・・帰りは辛かったです(ーー;);;;。

「Gottardo」地名の綴りもイタリア語標記です。こんな道をゴムタイヤ車で飛ばしたら気持ちがいいでしょう!こんな田舎でも、「歩道」があるのが有難いです!

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疲れた〜!でも、最高でした。

1985年9月

アサヒペンタックスSPU SMCタクマー35/3.5、55/1.8、120/2.8  コダックネガカラー100


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