未成の貨物線を開通させた路線その2・・・TKJ(東海交通事業)城北線について
東海交通事業とは、JR東海の100%子会社で、おもに駅業務の受託や駅設置の自動販売機の管理、また駅レンタカーなど駅周辺事業の業務を行っています。
その中で特筆されるのは、城北線という路線での鉄道旅客営業があります。
城北線は輸送実績こそ他の第三セクターとあまり違いはありませんが、最大の特長はJR東海の直接子会社の運営という点と、未成線であった旧国鉄瀬戸線の一部区間を鉄建公団が延長工事を加えて営業を開始したことです。 未成線の活用という点は同じく旧国鉄瀬戸線の一部区間を延長し開業させた愛知環状鉄道線と同じですが、異なる点は城北線の線路設備がJR東海の所有であり、JR東海が建設費を長期にわたって鉄建公団に返済し、東海交通事業がJR東海に線路使用料を支払うことで営業されているという事情があります。
開業時の城北線の保有車両はキハ11-200型の4両で、このうち2両が前述の線路使用料を相殺するためにJR東海に貸し出されて高山線などJR東海の路線で使用されました。
城北線列車は名古屋市内を通るほぼ全線高架複線の高規格路盤という豪華な設備にも拘らず、日中は小型ディーゼルカーによる1時間間隔の運行で、しかも一両編成の列車が全線を単純往復するのみで行き違い・すれ違いがない運行であり、それがミスマッチという理由で話題になっています。(現在はJRのキハ11-200の運用終了に伴い車両関係に異動が生じています)
この高規格の線路設備こそ、旧国鉄の高規格貨物線・瀬戸線として計画されていた名残りなのです。
城北線では、その高規格の高架設備からの眺めを売りに、初日の出列車や都心の高層ビルの夜景を眺める列車な
ど多数の企画列車を運行して人気を博しています。
枇杷島駅で折り返す城北線車両。ホームは東海道貨物別線(稲沢線)の上にあり、狭いホームを時折高速貨物列車が通過するので増便には貨物列車ダイヤ調整等の課題がある。
枇杷島駅を出て貨物線から高架の城北線に分岐して高架をあがっていく。枇杷島駅乗り入れは開業から2年余り後の1993年に実現した。
以下、城北線の車窓から「空中散歩」です。
城北線車窓より。東海道新幹線(鉄パイプ構造の架線柱がある方)の高架よりさらに高所を走行し、遠方には伊吹山も眺められる。
麒麟麦酒名古屋工場にさしかかる。タンク群の塗り分けが泡の黄金比率で描かれているそうだ。
実は名古屋は木曽川発祥の水質が良いため、ビール大手3社がすべて工場を構えている。各社とも線路沿いに立地してかつては専用線を引いていた。
(厳密にはキリンだけ隣接の清須市であるけれど)
中央遠方に白くそびえる三菱電機のエレベータ試験棟、通称稲沢タワーが望める。
小田井駅の手前で高架が上下方向に分かれて、勝川方の線路がぐんと高くなる。
これは旧瀬戸線が稲沢駅方へ通じる線路を分岐する準備があった名残りだ。貨物線として設計された旧国鉄瀬戸線は勾配を緩やかにする必要があったので、このように橋脚が林立するような長い勾配区間をとったため壮大さが旅客線の比ではない。
非常に高く作られた小田井(おたい)駅。これだけ巨大なのに小さな上屋がちょこんと載っているだけだ。
写真右側にホーム上に直接上がれるエレベータが設置されている。
小田井駅近くには東海交通事業 鉄道部の本部があり、ここが八筋町になっている。
高架の銘板が示すように城北線の路盤は鉄建公団が建設し、2032年まで第1種事業者のJR東海へ賃貸されることになっている。
小田井駅に近づく枇杷島行き列車。御岳山をバックに、日本一贅沢なローカル列車が走る。
小田井駅ホームから。名駅のビル群が西日に照らされている。
勝川駅の行き止まり線の奥には、夕景を楽しむ名物列車「カフェトレイン」が準備中。この日の分は早々に完売したとのこと。
《まとめ》
城北線は乗客数が伸び悩んでおり、運賃収入の1.5倍の営業経費がかかっていて赤字だ。それを沿線高架の貸し駐車場や駅レンタカー業務ほか駅業務受託・駅予約センターの受託等でカバーしている状態だ。貨物線を転用して旅客化した路線の中では苦戦が続いている。 じつは中央線のJR勝川駅への乗り入れが宙に浮いているため、これがネックになり利用しにくい面がある。
線路所有者であるJR東海が何らかの追加工事をすれば、前述のように鉄建公団に支払う返済費が増大する仕組みのため、完済するまでは現状のままではないかと言われている。JR勝川駅の高架化事業はすでに完成していて、そこには城北線が進入するための空間が準備されていた。
JR側への直通乗り入れが実現すれば本来のバイパス線としてうまく機能することが期待されるので、なんとか持ちこたえてほしいと思う。
管理人 茉莉花(まつりか)
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