|   攻め方の駒は4枚だけ、持駒も桂歩と頼りなく、これでいったいどうやって90手台という長手数になるのでしょうか。
    飛と馬の配置から思いつくのは、馬ノコか連取りですが、馬ノコは飛香やと金がジャマしてできそうにないし、連取りで取れそうな駒もありません。
 答えはやっぱり馬ノコでした。
    すぐに45馬は同香でダメ。
    その香の利きを、連取りの空き王手機構を使って塞ぐのです。
 
 24飛、13玉、44飛、23玉、
 
 飛による連取りというのは、駒を取るとき、飛の位置が毎回ずれていきます。
    ということは、飛の位置変更自体に意味を持たせれば、駒を取らなくても同じ趣向を成立させられる可能性があるわけです。
    本作の場合は、「香(飛)の利きを塞ぐ」ことが、その意味付けになっています。
 
 44飛で41香の利きが止れば、45馬と馬ノコを始めることができます。
    でも46にはと金も利いていますね。
 
 45馬、13玉、46馬、23玉、
 
 46馬を同となら、14歩、23玉、35桂まで。
    つまり、馬が35−46の斜めのラインに行ったときは取られても大丈夫なんです。
 
 これで、趣向のからくりはだいたいわかりました。
    それでは馬ノコで89のと金を取りに行きましょう。
 
 24飛、13玉、54飛、23玉、56馬、13玉、57馬、23玉、
 24飛、13玉、64飛、23玉、67馬、13玉、68馬、23玉、
 24飛、13玉、74飛、23玉、78馬、13玉、79馬、23玉、
 24飛、13玉、84飛、23玉、89馬、13玉、79馬、23玉、
 
 これで持駒に1歩増やすことに成功しました。
    それを活かして詰めるのですが、そのためには再び馬を近づけなければなりません。
 
 24飛、13玉、74飛、23玉、78馬、13玉、68馬、23玉、
 24飛、13玉、64飛、23玉、67馬、13玉、57馬、23玉、
 24飛、13玉、54飛、23玉、56馬、13玉、46馬、23玉、
 24飛、13玉、44飛、23玉、45馬、13玉、35馬、23玉、
 
 ここからは、くるくるとしてはちょっと長い本格的な収束。
    鑑賞して楽しみましょう。
 
 24飛、13玉、34飛、23玉、24歩、14玉、36馬、15玉、
 35飛、24玉、25馬、23玉、24歩、同銀、32飛成、13玉、
 33龍、同銀、14歩、23玉、35桂 まで93手
 
 最後は大活躍した飛も捨てて、還元玉できれいに詰み上がります。
 
 作者 「初形や収束など「出来すぎ」の印象があるかもしれませんが・・・ それは若島先生による改良案ですから(笑)。」
 
 飛位置変換を伴う斬新な馬ノコから洗練された収束まで、この駒配置で実現できているのはすばらしいですね。
    若島さんがまとめている菅野さんの作品集がとても楽しみです(菅野哲郎作品集「箱庭」製作中参照)。
 
 それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
 
      山下誠さん:
      飛車の傘を利用しながら、香やと金の利き筋を堂々と通る馬鋸は愉快。
     
      S.Kimuraさん:
      1段目に並んだ香飛の意味が分からず悩みましたが,馬を取らせないために飛車が移動する手が入る馬鋸もあるのですね.これまでに,このような馬鋸があったのでしょうか.
      香筋を塞ぐ飛位置変換を伴う馬ノコは初めてと思います。 
 馬ノコ以外では、上田吉一さん(詰パラ2011年4月)に、飛位置変換で香筋を塞ぎながら合駒を奪取していく趣向(右図)があります。
    これは原理的に片方向しかできませんが、菅野作は、馬ノコと組み合わせれば双方向できる、ということからの発想かもしれません。
 
 上田吉一作は趣向に謎解きをプラスした名作。
    棋譜ファイルを置いておきますので、こちらも是非ご鑑賞ください。
 
 くるくる展示室No.338参考図 上田吉一 棋譜ファイル
 
 
      長谷繁蔵さん:
      飛で香筋を止める 13玉の時に馬を取ってくれ!流石菅野さんのくるくる面白い。
 
      中沢照夫さん: 
      飛で香の利きを遮りながらのじれったい馬鋸。収束に手こずるも合駒なしで一安心。
 
      小山邦明さん:  
      14歩から35桂の詰みを見せながら、馬ノコを可能にする飛の限定移動。こういう構想を見たのは初めて。 他の手順は読んでいない。
 
      蛇塚の坂本さん:  
      歩を1歩手に入れる為 馬のこの往復の後収束龍の往復で消しサンザン動いた後玉が元の位置で仕留められるのが面白いです。
     
      Pathfinderさん:    
      馬を剣に、飛車を盾に。終わりまで見事な一作です。
     
      占魚亭さん:      
      飛車を盾にして馬鋸。とても面白い趣向手順でした。
     
      池田俊哉さん:    
      上田吉一氏作にあった「香利きを塞ぎながら合駒を取る作品」の馬鋸版と言った趣き。盤面を見た瞬間、その趣向を思いついたが、解いてみたらその通りで、なんとなく一作損した感じ(笑)
 上田作を見たとき思いついていれば・・・ ちなみに、詰パラ2011年4月の大学院を見たら、上田作の隣に菅野作がありました。 |