木目1

次ヘ
次ヘ
第7章 ノコギリ趣向(7)
馬ノコ その7
表紙に戻る
表紙に戻る

馬ノコにほかの趣向を組み合わせた作品もたくさん作られています。 18×4+9。

くるくる No.197

くるくる No.197
右図から10手進めた局面

くるくるNo.197
棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)
くるくる No.197原図
田島秀男 「タイムリミット」
詰パラ1989年11月
くるくるNo.197原図
棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)
通常の馬ノコの場合、「xx馬、xx玉、xx馬、xx玉」と馬が一つ近づいたり遠ざかったりする間に、玉は2か所のマスを行き来します (三段馬ノコの場合は3か所)。 そこで、いったん別のマスに逃げたり、馬の王手に合駒したり抵抗することによって、いろいろなバリエーションの馬ノコが可能になります。

初めて玉が寄り道する馬ノコを創作したのは、九代大橋宗桂の舞玉第77番で、 「xx馬、xx玉、xx歩、xx玉、xx馬、xx玉」と、馬ノコのサイクルに歩打ちを織り込んだ作品でした (詰将棋博物館BLOG「一歩消費式馬鋸」 九代大橋宗桂 参照)。

その後、単に歩打ちだけでなく、ここにいろいろな手順を組み込むことにより、馬ノコの世界は大きく発展しました。 ここに組み込む手順は、それ自体を別な趣向手順にすることも可能で、その場合は手数も掛け算で増加するので大きく延びます。 その頂点が最長手数、1525手の橋本孝治「ミクロコスモス」です。

くるくるNo.197(田島秀男「タイムリミット」から10手進めた図)は、馬ノコに金追いの上下運動(車井戸趣向と呼びます)を組み合わせた趣向。

「13馬、78玉、23馬、79玉」となれば普通の馬ノコで近づけますが、受方は抵抗して13馬に89玉と逃げます。 それでもかまわず23馬は78金合(78香成)で不詰。 いったん99金、78玉としてから23馬ですが、今度は87玉と逃げられます。 これを金追いで87−86−85−76(ここで88桂)−87−88−79と玉を初形の位置に戻すまでが1サイクルです。

  13馬、89玉、99金、78玉、23馬、87玉、
  98金、86玉、97金、85玉、96金、76玉、
  88桂、87玉、97金、88玉、98金、79玉、

この18手で、馬が12から23に移動しました。 持駒の桂を1枚使いましたが、あと3枚残っているので、もう3回繰り返すことができます。

  24馬、89玉、99金、78玉、34馬、87玉、
  98金、86玉、97金、85玉、96金、76玉、
  88桂、87玉、97金、88玉、98金、79玉、

  35馬、89玉、99金、78玉、45馬、87玉、
  98金、86玉、97金、85玉、96金、76玉、
  88桂、87玉、97金、88玉、98金、79玉、

  46馬、89玉、99金、78玉、56馬、87玉、
  98金、86玉、97金、85玉、96金、76玉、
  88桂、87玉、97金、88玉、98金、79玉、

次のサイクルで馬が67まで近づくと、76、85に逃げられないので、そのまま収束します。

  57馬、89玉、99金、78玉、67馬、87玉、
  98金、86玉、97金 まで81手

斬新、難解な趣向作で知られる田島秀男さんにしては、とてもかわいい作品。 馬ノコと別な趣向を組み合わせたサンプルとして紹介させていただきました。

木目1