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第1章 金追いアラカルト (16) 表紙に戻る
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この辺で金ノコから離れて、別のタイプの金追いを紹介しましょう。

くるくる No.16

オリジナルの作品を鑑賞する

No.4(下図)と比べてみると、尻金で王手して横に追うこと、 2手1サイクルの手順で1マス右にずれる点は共通ですが、 No.4が1枚の金で追いかけるのに対して、 No.16はたくさんのと金で追いかける点が異なります。

No.4の金のように、複数のサイクルにまたがって同一の駒が使われるとき、 この駒をグローバル駒(G駒)と呼ぶことにします。 また、No.16のと金のように、各サイクルごとに別の(同種の)駒が使われるとき、 この駒をローカル駒(L駒)と呼ぶことにします。

G駒、L駒をこう定義して、趣向手順の中でどう使われているか見ると、 趣向の構造が見えてきます。

No.1からNo.15までの作品は、すべて、G駒による王手、玉の移動、 の2手サイクルの手順になっています。 これを「G−玉」型の趣向と書くことにしましょう。

この記法を使うと、No.16は「L−玉」型の金(と金)追い趣向となり、 これまでの作品と手順の構造が違うことが明確になります。

同じ「G−玉」型の金追い趣向でも、王手する方向や玉が逃げる方向で11通りあり、 更に途中で方向が変わる金ノコもいろいろな種類があることは、これまでに見てきた通りです。

それでは、「L−玉」型の金追い趣向は何通りあるのでしょうか。

銀杏さん:
G駒、L駒と定義して追い趣向手順の構造を分類しようという試みは初めてと思います。
しかし、No.16のようなのはこれまで「送り」と呼ばれて、「追い」とは区別されてきました。
通常は、同一(複数の場合もある)の駒による連続王手を 「○追い」と言うのではないでしょうか?
従って「追い趣向」を分類するキーとしては、

A.追い駒の種類
B.支え駒の種類
C.玉の軌跡(縦、横、斜め、ジグザグ、回転など)

があり、これらの組み合わせ方がよいと思いますが、如何?

「追い」と「送り」をちゃんと定義すれば、分類する上で有益なことと思います。 しかし、実際の使用例を見ると、混乱して使われているような感じがします。

例えば、大塚さんの古図式講座では、

 竜追い: 「G−玉」       手鑑28番等
      「L打−同L−G−玉」 妙案74番等
      「L打−同G−G−玉」 図巧63番等
 銀歩送り:「L打−同G−G−玉」 勇略35番等
 飛歩送り:「L打−同G−G−玉」 勇略58番等
 金追い: 「G−玉」       手鑑40番等
 飛追い: 「G−玉」       妙案77番等
 馬追い: 「G−玉」       妙案79番等
      「Ga−玉−Gb−玉」 橘仙貼壁2番等
      「La−同G−Lb打−同G−G−玉」 舞玉39番等
 捨て送り:「L−玉−L−同玉」  妙案27番等
      「L打−同G−G−玉」 図巧67番等

が「追い」「送り」が使われている箇所で、純粋な「G−玉」型は「追い」と呼ぶのは明確ですが、 複合型はどちらの呼び方も使っていて、区別がはっきりしません。

黒川さんの「将棋浪曼集」や相馬さんの「Collection」での説明でも、 この区別はあいまいなようです。

銀杏さん:
『将棋浪曼集』を見直すと、「追い」や「送り」の使い方は統一されていませんね。
『Collection』のときも、相馬氏の趣向表現が混乱してたので、 アドバイスをしてかなり直しました。 それでも今見ると、まだ不十分なようですね。

銀杏さんは「追い」と「送り」をどう使い分けているのですか?

私案としては、詰方G駒を含む移動趣向を「追い趣向」、 全てL駒の移動趣向を「送り趣向」と区別することが考えられますが、 いかがでしょうか(こうすると「銀歩送り」は追い趣向になってしまいますが)。

銀杏さん:
私は次のように区別しています。

追い=同一(複数の場合もある)の追い駒による連続王手
送り=送り駒と別の捨駒とが交互に王手を繰り返す
ずらし=同種複数駒の鎖(orベルト)で王手

とは言っても、どれに当てはめるべきか迷うものもあります。

なお「送り」は玉方駒の「お供連れの送り」や「捨て絞り」など、いくつかに細分できます。

従来の用語を生かしながら、今回、ぜひ明確な定義をしたいものですね。

うーん。 どうも複雑になりそうなので、追い、の定義は銀杏さんの通りとして、 他の移動趣向はすべて 送り とするのが簡明でいいような気がしますが、いかがでしょうか。

「くるくる」では、とりあえず、次のように使うことにします。

追い趣向:
(1枚又は複数の)G駒の王手と玉の逃げだけから構成される移動趣向の総称
送り趣向:
追い趣向以外の移動趣向の総称

No.16からの作品は、「金送り」趣向ということになります。

さて、No.16、最後、調子にのって2八と まで行ってしまった人はいませんか?
「L−玉」型の金送りとしてはもっともよく使われる形。
オリジナルの妙案69番は、この手順を何度も繰り返す作品で、 「金知恵の輪」の名前で知られています。

岡崎さん:
、とぉ〜ととととととと、とっ。
段々面白くなりますね。
手順は書いてないよ。(^^)
上はニックネーム。(^^)

ムムム。確かに手順は書いてないですが (^^;

銀杏さん:
「金知恵の輪」は作品名だったのに、 いつのまにかこの送り手順の反復を「知恵の輪趣向」と呼ばれるようになってしまいましたね。

私はこの送り手順は「金鎖手順」または「金ベルト手順」と呼びたいのですが・・・。 というのは、知恵の輪的な鍵外し構想は鎖(orベルト)以外の送り手順を使うのもあるからです。

片道の手順は金送りでいいような気もしますが、 行ったり来たりする手順を指す言葉が欲しいですね。 「金ベルト」は相馬さんも使っていましたので、これがいいかもしれません。
「車井戸手順」も、片道だけみれば単なる金追いですね。

「知恵の輪」は、繰り返しの目的がはがしのような規則的な繰り返しでなく、 知恵の輪のように毎回異なる仕組みの繰り返し趣向の名前として使いたいです。

銀杏さん:
同意見です。 前レスで「鍵」と書いたのは「異なる仕組み」の意味なのです。


この手順をきれいな形でまとめた作品を紹介。 手順はもうお分かりですね。

くるくる No.16a

銀杏さん:
この珍形作品は知りませんでした。
49銀、39銀は飾り駒ですが、本作では必要駒でしょう。

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