詰将棋おもちゃ箱記念作品一番星作品展
波崎黒生「一番星」出版記念作品展 解答
記念作品
記念作品

波崎黒生「一番星」出版記念作品展の解答、当選者を発表します。
解説は作品集をまとめられた角建逸さんにお願いしました。


波崎黒生「一番星」出版記念作品展 解説 角建逸

上記作品集制作の大詰めの段階において、さらなる未発表作品の存在が明らかになり、その中には単に入選級では済まないくらいのレベルの作品もありました。
そのことをTETSUさんにお伝えすると、
「ネットで出題するのもあるよね」というご提案が。なるほど!
そこで、作者とネットで関係があった3つのサイト(「詰将棋おもちゃ箱」「借り猫かも」「冬眠蛙の冬眠日記」)で特別出題をしていただくことになったわけです。

おかげさまで解答者総数は25名と、予想を大幅に上回る方に解答を寄せていただきました。 厚く御礼申し上げます。 作者も喜んでいるものと信じております。


A 波崎黒生 「カラスと一緒に」

棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
と金が主役 10手台

一番星作品展A 波崎黒生「カラスと一緒に」

  17歩、同玉、47龍、27角合、同龍、同と、28角、同と、
  18金、16玉、27角、同と、36龍、26と、27金、まで15手詰

解答:25名  正解:21名

まず一本17歩と叩くのは当然。

taka-oさん:
当初は17歩、同玉、18金の筋かと妄想したが、お供以外にも懐刀(香)が居た。

3手目18金としたくなりますが、同玉(16玉は、25龍寄、同と、27金まで)、48龍、19玉で詰みません。

ここは47龍と引いて合駒を尋ねるのがうまい手。 これに16玉は、27角、同と、36龍引、26と、27龍まで。 また27桂合は、同龍、同と、29桂、16玉、27角、同玉、37龍以下。 頭に利く合駒は、同龍、同とに、18から取った合駒を打てば簡単、というわけで、角合に決まります。

ぬさん:
4手目の受けにちょっと悩みました。
名無し名人さん:
3手目47龍に対する合駒は取られた時に最も使えない角合が最善。

その角合を同龍と切り飛ばし、28角、同とに、18金が絶妙。 最初に18金を考えていればなおのこと、金がぐいっと立つこの感触が何とも言えません。 わざわざ、と金を呼んでぶつける味の良さ。

S.Kimuraさん:
4手目は角合でも11手詰で歩が余る、と悩んでいましたが、15の香車が遠くから効いているのを見落としていました。

蛇足ながら、9手目28同金とするのは、同玉、38龍、19玉となって、3手目18金の紛れと同じことになります。

最後は、玉もと金も元の位置に戻って詰め上がり。 ちなみに26のと金は、いったん28まで遊びに行ってます。 わずか15手の短編ですが、筋の通った手順は、やはりこの作者ならではという作品です。

有吉弘敏さん:
角限定合もうまく入って綺麗な仕上がりですね。
隅の老人Aさん:
優しくスッキリ。
山下誠さん:
2八角から1八金が妙手順。初形と終形の対比も面白いですね。
やまかんさん:
と金の上下いい感じ。手順も鋭いです。
占魚亭さん:
玉&と金の帰還。可愛らしい作品。

駒が元の位置に戻る「スイッチバック」に関して。

金少桂さん:
と金が主役とのヒントでスイッチバック的な展開はある程度予想できたが、28まで行って再び26まで戻ってくるとは! 玉も還元玉で、タイトルにぴったり。
三輪勝昭さん:
26とのスイッチバックが面白い。 皆、1回行って戻って来るくらいで、安易にこの言葉を使い過ぎる。 こう言う作品に使って欲しい。
ikz26さん:
26と金が28まで行って帰ってくるわけですね。 自然な形で纏まっているのが素晴らしい。

「カラスと一緒に」の命名に関して。

バビル3世さん:
カラスは、と金なのね。
蛇塚の坂本さん:
本当にヒントどうりと金が最後まで玉を守っていました。 それが逆に面白かったです。
隅の老人Bさん:
26と金が大活躍。このと金がカラスですね。
たくぼんさん:
と金と玉が仲良くお家に帰るんですね。 童謡が聞こえてきました。

「カ〜ラ〜ス〜、なぜ泣くの〜」と、みなさん解きながら口ずさんだものと推測します。


B 波崎黒生

棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
「波崎の銀」 10手台

一番星作品展B 波崎黒生

  44銀、34玉、35銀引、43玉、54銀、33玉、43銀成、同玉、
  44銀、34玉、33銀生、43玉、44銀成、42玉、33成銀、同玉、
  44龍、まで17手詰


解答:25名  正解:21名

ぬさん:
波崎の銀初体験(多分)。銀の動きが楽しい。
隅の老人Bさん:
33歩の存在で「波崎の銀」が大活躍することになります。 解けて楽しい作品です。

「波崎の銀」という言葉は、当時大学担当の安江久男さんが作者の「尾根」(「一番星」第21番、「詰パラ」1995年8月号)という作品に対して用いたもの。

特に「『波崎の銀』を見ちゃなんねえ、(中略)魂を取られるだに」と千葉弁丸出しでの解説があまりに強烈に印象に残っています。 「日本昔ばなし」の常田富士男の声で、脳内再現していただくと、最高に楽しい文章だと思っています。

さて、その「波崎の銀」が惜しげもなく出てくるのが、本作です。 早い話が、玉を33に誘えば44龍まで。 この単純なコンセプトを実現するために、「波崎の銀」が踊るのです。

1)まずは55の銀を35に繰り換え。
2)次に65の銀を出て、邪魔駒の33歩を消去させて、銀を捨てる。
3)35の銀を成銀にするため(それと変化のため)、33に生で入る。
4)44の成銀を33に捨てて、任務完了。 

途中25玉と大海に逃げ出す変化がありますから、そのとき24龍以下詰むように進めるのが肝要。

なにしろ銀はヨコに利きませんから、玉に懐に入られるその動き自体がユーモラス。 金魚すくいか、ウナギの手づかみか、逃げまくられるのが楽しいのです。 その楽しさは、完全に伝わったようです。

バビル3世さん:
序章に2枚のじゃま駒を消去してから本題の銀のさばき。見事です。
有吉弘敏さん:
これは文句なく面白い銀の繰り替え。特に33銀生から成り返る箇所が俊逸。
隅の老人Aさん:
軽妙な銀の捌きが楽しい。
山下誠さん:
銀のトリオが描く軽やかなステップを満喫しました。2作とも軽快。
三輪勝昭さん:
このタイプの銀運動は作家なら創ってみたくなるところ。 明快な仕組みで動いていて、誰もが解いて楽しい作品で感心しました。
やまかんさん:
解いてみたくなる初形で適度に考えさせる作品なのですばらしいですね。 銀の動きも自分の好みです。
キリギリスさん:
玉を33に誘うため3枚の銀を全て捨てる素晴らしい手順。
ikz26さん:
流石波崎さんという銀捌き。有名な半期賞作を彷彿とさせます。 また、作家的には舞台装置の絶妙さにも唸らされました。
名無し名人さん:
まず44銀〜35銀引の位置変更から、左側の銀を駆使して33歩消去。 そして9手目から見事な銀の舞。特に33銀生の感触がたまらない。 最終手以外の攻方着手が全て銀で、「波崎の銀」本領発揮の好作。
S.Kimuraさん:
33銀不成とするために,33の歩が邪魔だったとは驚きました。 それにしても,良く銀が動きますね。
占魚亭さん:
銀捌きが本当に素晴らしいです。 初手と最終手が同一地点への着手になっているのは、狙ったものなのでしょうね。
馬屋原剛さん:
33銀生に対して、25玉として誤解するところだった。 やはり銀がよく動く。
橋本哲さん:
こういう銀の運用はいつ見ても楽しい。
たくぼんさん:
最終手以外はすべて銀着手で、動く2枚は共に成り捨てる。 33歩消去の目的だけでこれだけ銀が動く作品も珍しい
小嶋拓治さん:
タイトル通り、銀の繰り替え手順が素晴らしかった。
taka-oさん:
銀の運びが快く、徹底していて、さらに論理も明快。動かない46銀をと金にするかどうか、もしかすると作者は考えておられたかも?
金少桂さん:
おもちゃ箱掲示板の角氏のログで、波崎氏が銀が活躍するパズルを得意としているのを知りました。まさにこれがその一つですね。 55の銀を35に繰るところまではすぐわかったけど、その後も意外なほど銀の手が続いて、最終手以外全部銀になるとは予想もつかなかった。

個人的には、半期賞を上げたいくらいの好作だと思っています。
「波崎の銀」は作者が追いかけていた一つのテーマで、いろんなバリエーションがあります。
ご興味のある方は、ぜひとも「一番星」でご確認いただければと思います。


総評など。

有吉弘敏さん:
詰将棋から離れていましたので、氏の名前も作品も実感がありません。 やはり実際に作品を解くのが作家を実感できて、一番良いですね。
山下誠さん:
近代将棋に掲載される中野和夫氏作には、若い頃随分苦しめられた記憶があります。 軽妙な手順の中に必ず意表の1手がありました。 ご冥福をお祈りいたします。
三輪勝昭さん:
僕は昔の波崎さんの作品は知りません。最近の作品は面白くないので解く気にならない作家でした。久保さんのブログの作品や今回の作品を見て考えが改まり、全部の作品を見たくなりました。ので、本が当選する事を期待しています。買えよ!(笑)。

ぜひご購入をお願いします(笑)。

名無し名人さん:
同じ作者ながら3サイトそれぞれ出題作品に特色があって面白いですね。 おもちゃ箱出題作品は3サイトの中で最も軽くて楽しめました。

B題は解説子の希望でお願いしました。
A題はTETSUさんが「おもちゃ箱」の解答者には軽めがいいとのことで、チョイスされました。 流石の選択ですね。

馬屋原剛さん:
波崎さんの図面作成プログラムは今でも愛用しております。
たくぼんさん:
波崎さんとは面識はありませんが、図面ソフトはよく利用させて頂きました。 波崎さん=中野さんだということを知ったのはつい最近のことで、まだまだお若かっただけに残念でなりません。合掌。

プログラマーとしての波崎さんとのやりとりは、詰パラの須藤大輔さんが「一番星」に書かれています。 こちらもご興味のある方は、ぜひご一読をお願いします。 同僚の方からは、人工衛星の軌道を修正するプログラムの発注も受けたことがあるとか、お話を伺いました。 相当な腕前だったということですね。


波崎黒生「一番星」出版記念作品展 両題正解者 18名

  荒川貴道さん、有吉弘敏さん、ikz26さん、S.Kimuraさん、小野寺さん、
  金少桂さん、小山邦明さん、隅の老人Aさん、隅の老人Bさん、占魚亭さん、
  taka-oさん、たくぼんさん、名無し名人さん、ぬさん、橋本哲さん、
  三輪勝昭さん、やまかんさん、山下誠さん

当選者 (解答者25名全員から抽選)

  キリギリスさん、名無し名人さん、S.Kimuraさん

おめでとうございます。「一番星」をお送りしますので、送付先を メールでお知らせください。

なお、「一番星」は、下記で購入できます。また将棋会館の売店でも販売しています。