木目1

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龍鋸趣向作品全集 木挽唄集
第一章 一般型片道龍ノコ

第1項 単純接近型
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玉から離れた位置にいた龍が、移動の結果玉に接近し、その効きを強化させることによって手順の打開を図る、 というタイプの作品群である。

その性格上、龍ノコ手順の長さが短くなるため、作品自体としては、極めて薄味のものが多いようだ。 印象としては、捌きの中編の後片付けとして取り入れた、といった使われ方が多いように思われる。

・有馬 康晴 (吹き寄せ 47番) 手順を並べる

遠打した飛を龍ノコで接近させる、という構成。角の成捨てでカモフラージュしてはいるが、香を質駒に狙った限定打であるのが弱点か。
・岡田 秋葭 (月報 昭17・7) 手順を並べる

龍ノコは導入部の役目しか果しておらず、主眼は少ない駒数で玉を追い回す中盤以降の手順に移ってしまったように思われる。 龍が83まで接近する作意なのだが、84龍の状態でも64角が成立するようだ。 以下、73香合、同角成、同歩、93香、92桂合、同香成、同玉、93龍、で作意に還元する。 大きなキズのようだが・・・。
・平田 好孝 (詰パラ 昭29・9) 手順を並べる

龍ノコの目的は、32への接近である。 それを目前にした43龍に対して、玉方が更に龍を近づけさせる33桂の中合で応じる辺りに本局の面白さがある。
・小泉 潔 (詰パラ 昭60・4) 手順を並べる

序盤の15手辺りの折衝に中心がある作品。 龍ノコは玉方の手数稼ぎの雰囲気があり、副次的なものに近い。 実際、65角は玉方が龍ノコに誘導しなかった時のための邪魔駒消去であり、その効果は、作意手順には現れないことが分かるだろう。 42歩合辺りの応酬は、平田作に似た手順だが、42歩合とせず11玉と応じても変同になるのが、大きな欠点か。
・水上 仁 (詰パラ 昭64・1) 手順を並べる

最初の銀不成の連続(銀ノコとは呼びにくいので、第四章には分類しなかった)に主眼があり、龍ノコは後片付けのようだ。
・河原 泰之 「LIAR」 (詰パラ 平1・6) 手順を並べる

8筋での龍の王手に対して71玉とする応手があり、この変化(72歩成以下)で龍が6筋に回る必要があるため、龍の軌跡は限定されている。 龍が94まで接近すれば、81玉に対しても先の変化と同様の手順が成立するので、玉方は応手を変える。 この時も、93まで龍が接近していると龍が転回できず、詰まなくなる。 謎解きの面を前面に出した作品と言えよう。
・中出 慶一 (詰パラ 平6・6) 手順を並べる

龍が54まで接近することで、玉は42に逃げられなくなる。 構図面等から感じる雰囲気に、次章の田中鵬看「竜神」に近いものを感じたのは私だけか。

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