詰将棋おもちゃ箱詰将棋研究室

研究展示室 No.13 河原泰之 「I'LL BE BACK」

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棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
詰将棋研究室では超長編、裸玉などいろいろ研究。 310手台

研究展示室No.13 河原泰之 「I'LL BE BACK」

詰将棋研究室は、超長編作品(300手以上)や裸玉の完全性チェックをはじめ、趣向詰の分類、復元型の無駄合などいろいろな研究を行うコーナーです。 超長編作品の完全性チェックについては、最新の結果を超長編作品リストで見ることができます。

今回の作品は、そのリストに登録されている河原泰之「I'LL BE BACK」 311手(早詰あり)の作者自身による修正図です。 原図(棋譜ファイル)では、収束に入ったととろで、273手目88とで78と寄以下の早詰がありました。 本作では、主に収束を修正、改善し、手数も311手から319手に伸びました。

8段目のと金ベルトで玉を左右に移動させることができます。

詰方は7筋にある75と、73と、72桂、71桂を順次取りたいのですが、そのためには龍を5段目、3段目、2段目、1段目に移動させておく必要があります。 それを可能にするのが、2筋と3筋での龍ノコです。

また、7筋の駒を取った時76とと移動合されるので、次の駒を取るためには、85龍、86と、とと金を移動させなければなりません。 75とを取った時はすぐに85龍といけますが、73となどを取った時は85に龍が行くためには 再び2筋と3筋での龍ノコを使って龍を5段目に移動させることになります。

これが本作の長手数を実現しているロジックです。

それでは実際に手順を見ていきましょう。

1) 玉を右に寄せ、龍ノコに邪魔な25とを移動

  88金、同と、同と右、79玉、78と右、69玉、68と右、59玉、
  58と右、49玉、48と右、39玉、29金、同玉、28と引、39玉、
  38と右、29玉、15と、26と、28と左、39玉、

2) 龍ノコで龍を5段目に移動

  31飛成、36と、38と右、29玉、22龍、26と、28と左、39玉、
  33龍、36と、38と右、29玉、24龍、26と、28と左、39玉、
  35龍、36と

3) 玉を左に寄せ、75とを奪取

  38と左、4九玉、48と左、59玉、58と左、69玉、68と左、79玉、
  75龍、76と、

4) 玉を89に呼び、85龍で76とを86に動かす

  78と左、89玉、85龍、86と、

5) 玉を右に寄せ、龍ノコで龍を3段目に移動

  88と右 ・・・ 38と右、29玉、
  25龍、26と、28と左、39玉、34龍、36と、38と右、29玉、
  23龍、26と

6) 玉を左に寄せ、73とを奪取

  28と左 ・・・ 68と左、79玉、73龍、76と、

7) 玉を右に寄せ、龍ノコで龍を5段目に移動

  78と右 ・・・ 48と右、39玉、
  33龍 ・・・ 24龍 ・・・ 35龍、36と、

8) 玉を89に呼び、85龍で76とを86に動かす

  38と左 ・・・ 78と左、89玉、85龍、86と、

9) 玉を右に寄せ、龍ノコで龍を2段目に移動

  88と右 ・・・ 38と右、29玉、
  25龍 ・・・ 34龍 ・・・ 23龍 ・・・ 32龍、36と、

10) 玉を左に寄せ、72桂を奪取

  38と左 ・・・ 68と左、79玉、72龍、76と、

11) 玉を右に寄せ、龍ノコで龍を5段目に移動

  78と右 ・・・ 38と右、29玉、
  22龍 ・・・ 33龍 ・・・ 24龍 ・・・ 35龍、36と、

12) 玉を89に呼び、85龍で76とを86に動かす

  38と左 ・・・ 78と左、89玉、85龍、86と、

13) 玉を右に寄せ、龍ノコで龍を1段目に移動

  88と右 ・・・ 38と右、29玉、
  25龍 ・・・ 34龍 ・・・ 23龍 ・・・ 32龍 ・・・ 21龍、26と、

14) 玉を左に寄せ、71桂を奪取

  28と左 ・・・ 68と左、79玉、71龍、76と、

15) 玉を右に寄せ、龍ノコで龍を5段目に移動

  78と右 ・・・ 48と右、39玉、
  31龍 ・・・ 22龍 ・・・ 33龍 ・・・ 24龍 ・・・ 35龍、36と、

16) 玉を89に呼び、85龍で76とを86に動かす

  38と左 ・・・ 78と左、89玉、85龍、86と、

17) 収束

  79と、98玉、87銀、同と、同龍、同玉、78と寄、76玉、
  77と、65玉、66と、74玉、75と、63玉、53銀成、同玉、
  45桂、63玉、62角成、同玉、44角、73玉、74歩、72玉、
  64桂、61玉、52桂成、同玉、53桂成、51玉、52歩、41玉、
  42歩、32玉、33歩、31玉、21と、同玉、12香成、同玉、
  13銀成、同玉、14と、22玉、13と、31玉、32歩成、同玉、
  22と(角成) まで319手

龍の動きの関係で配置に制約のある中、見事に修正、原作より手数も8手伸びました。

作者「長編リストに掲載していただいている1996年発表の「I'LL BE BACK」311手詰の修正図。 早詰のあった273手目以下の収束を変更。 持駒に1歩増やし収束変更で配置が変わったため手数を少し伸ばせて319手詰になりました。 終活を兼ねてボチボチとまた再開しますのでよろしくお願いいたします。」

ということで、復活をとげた作者のこれからの活躍を期待したいと思います。

なお、龍ノコの性格上、非限定や迂回手順があり、もちろん、それらの解答も正解として扱いました。

それでは皆さんの感想を(解答到着順)。

山下誠さん:
仕組みは素朴な龍鋸だが、左に追って8六との形にするために手数が驚異的に延びる。 7九とからの収束手順だけでも1局分楽しめる。
金少桂さん:
山崎健さんの「雪月花」のときに参考作として知ったあの名作、作者本人によって見事修正されたことが非常に喜ばしい。 1・8・9筋にしか駒を置けない制約があるので大変だったろうと思う。
おかもとさん:
と金のベルトコンベア+龍ノコ。 余詰を修正して戻ってきたので、「I'm Back」なのかも。
占魚亭さん:
趣向部は原図と変わらず易しくて楽しく、収束は原図よりも洗練された印象。
小山邦明さん:
残念ながら310手台で詰められませんでした。

最初の龍ノコで25に動かしたので6手長くなりましたが、迂回手順なので正解です。

りらっくすさん:
素晴らしいです。 この趣向は収束不能だろうな、と思っていたのですが、作者様が修正してくださるなんてさすがです。 これからも天才的な超長編しかも新作をお願いします!
池田俊哉さん:
複式龍鋸連取りだが、7筋のと金を移動させるためには85龍を実現する必要があってそのため手数が飛躍的に伸びる
修正は収束の余詰消しだけだが、手を入れるところが少ないため最小限でうまく行った印象。 完全作となって良かった
S.Kimuraさん:
310手台なので誤っているのは分かっておりますが,変化が多くて,全体を理解できていないので,柿木将棋IXの解答を書いておきます. この解答では龍追いのときに26とを36にずらしているところがあり,その辺が無駄なのではないかと考えています.

325手解。 たぶん小山さんと同様ですね。


研究展示室No.13  解答:8名 全員正解(下記)

  池田俊哉さん  S.Kimuraさん  おかもとさん  金少桂さん
  小山邦明さん  占魚亭さん  山下誠さん  りらっくすさん

当選者は、展示室で発表しています。