木目1

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46 国際将棋の実戦譜
丸尾学


カピタン第9号より
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二月のなかごろ、篠原昇さんからTELあり「国際三人将棋の実戦譜の載っている月報誌をやっと入手できました。 一局だけしか出ていませんが、さっそくコピーをとって送ります」とのこと。 数か月も心がけて探してくれていた由で大いに礼を述べた次第でした。

三人のプロ棋士が対局していて、なかなか見ごたえがあります。 ぜひ並べてみてください。

国際三人将棋の指し方は、こちらをご参照ください。

国際三人将棋盤
2013年6月7日 図面が誤っていたため訂正。
また、棋譜の227手目76宣を79宣に訂正。
棋譜は 段−筋−駒 の順に書く。
筋は上記の5筋や10筋のように折れ曲がっているので注意。
実戦平手・昭和七年五月廿八日 於国際将棋研究会
(将棋月報 昭和7年9月号より抜粋)

先手 八段 木見金治郎 中手 七段 宮松関三郎 後手 七段 山本樟郎

 先手  中手  後手
 47尖右  104尖右  107尖右 までは各自が輿論を相手方の模様に依て左右せんと未完に置きたるも、中手は右に軍教の成りを有するを以て之を根幹として対外に活躍せしめ得る体勢に在るを以て、輿論の輿発権を失わざる内に左方へ据え置くを適当と認め121に飛び移り輿論を確定したるものなり。

此辺三者各意図異なるが如し。 後手は積極的先手は之に応戦其機を捉えて右より逆襲に転ぜんと二三手誘いの隙を後手に見せたるところ巧妙なり。 中手は之等に反し此際は先手後手の戦争を対岸の火災視し寧ろ之を助長し徐ろに内政を整え以て相手両者の争の酣なる機会を捉えて漁夫の利を得んとする指手を為す準備に又は少くとも終盤の為め優越なる国際上の地位を獲得せんとする巧悧なる外交策なり。

此時先手が511宣成ると同輿(始めて動くのですから輿発権により)28軍410宣張る39尖張る同宣同軍410尖張るで軍教討死になり先手大損且つ此間数手の先後手間の激戦中中手に漁夫利をせられます。 依て77の楽園の争奪に模様を見せたのであります。

最早先手も右側も空気緩和せられ後の風雲を残して居る状態でありますから之又輿論の輿発権を失わざる内に中手より睨んでる方面で稍々将来危険ですが左方に転移するの局面上得策と見て為したのです。

中手の71宣張るは攻防両用の指手にして此の宣電を張らざるときは後手より73に軍教を成られて簡単に悪いのである。此71宣電に対し後軍教を逃げれば殖貿只取りになる故其防禦として79に一個しか無き尖占を費やさしめたるは後手より左端十三尖占張るの端崩しの仕掛を防ぐことにもなるゆえ意味深き巧手なり。

は101金寄るところ即ち後手の宣伝の当りを避ける方良し此92金と上りし為め後ち一手損せり。

後手の99外交張るは此際積極政策の継続として意味広く或は中手に対し123の金と交換する含みありて中手が輿論で獲れば手にせる尖占を125に継ぎ尖を為し次ぎに軍教を右翼に転じ輿論の頭より攻撃できるし、又此輿論で獲らずに殖貿で獲れば中央突破を為し得べき意味を有し而して一面先手の17の宣電獲りになり先手にも脅威を与えて居り之等がたとい防がれたとするも後の攻め継続に有利なる良手なり。

後手の49尖占は策戦を誤まり此処に宣電で93の税関を獲り極力中手を攻撃する方が有利なりし。

先手の78尖占張るは中手後手両者の交戦中を利用して尖得をなし続て後手の軍教を圧迫せんとする深謀の指手なり。

此処後手の指手幾多あり即ち或は輿論を612に早逃し置きて左翼方に入国旭光化を図るに便する策と118金上る等あるも、魔叉軍教等と呼応し中手に肉迫し手にせる税関を利用し壊滅なさんとする含みあるゆえ積極手段として至当の着手なり。此辺は要するに対局政策の積極か消極かの相違に依て自づから指手の別れるところなるを以て傍観者として其可否を論ずるに難し。

後手の輿論は此先手より軍教にて絶手を掛けられたるを以て輿論の自国内輿発権を失い今後は一目づつより動き能わざるに至れり。

先手44尖張るところ若し79金と後手の金権を獲るときは競技規定第12の(2)[注:No.40の規定では10の2のii]に該当し所謂中手の71に在る宣電の利きを利用して後手の軍教を攻むるを以て先手中手の同盟成立す。此時先手が金得して同盟できるにも拘らず之を避けたるは後手の駒建てが被同盟者として悪からずと見たるが故なり。

競技規定12の(1)に該当し[注:No.40の規定では10の2のi]中手後手の同盟成立す。即ち此二者は相次でにして先手が67殖と後手の金権を獲れば次に中手より34尖成と上格なる外交と交換せられ被攻撃者たる先手は現実に駒損をなし、又先手が44同尖と応戦すれば後手の為め56金と殖貿を只獲りせられ明らかに後手の駒得に帰す。先手何れを選ぶも中後手何れかが駒得を為して先手が現実に駒損を為す場合なるを以て同規定に該当する同盟なり。後手が中手に同盟を強要したるは49尖占張るの策戦の齟齬より漸次形勢を損し独り中手は有利の局面に在るを以て此の状態を以て終始すれば自然敗とならざるを得ざるを以て同盟に依て自己救済をせんと窺い居りたる折柄中手の不用意の指手を利用して同盟を成立せしめたるものなり。

此処で先手が93軍と外交との交換を行い置く手段も一策なり、蓋し同盟者の軍教は被同盟国の陣地に撃ち込むも効力少なきに反し外交を手にし置けば余裕あるとき機会を計らい同盟国を攻め立つるに便なればなり。

12尖は51軍にて詰ました方が爾後中手に駒得を為さしめず二人決勝戦の為め良かりし。

のところ中手は71の外交を一旦115に逃げ置くところなりし。

此手は後の手順にて只だ抜かれる手順になるゆえ良くなかった。寧ろ金権を109に上る方優れり。

は悪手にして寧ろ510にある魔叉を何れかに移動し輿論の進出に便ならしめ輿論の旭光化を策するところなりし。
 25殖  92殖  109殖
 24殖  63尖左  710尖右
 46尖  77軍成  122外成
 36金  122殖  97尖
 57尖右  72竜  107軍
 44尖右  103金  910殖
 34殖右  114尖右  610尖右
 56尖  113金  810金
 46殖  103殖左  79尖
 67尖右 121輿  87尖
 55尖  101殖  710宣
 49尖右 112殖上  911殖
66尖左  52尖左  712殖
 23税  122輿  68尖
12輿  81竜  67尖
 同尖  710宣  同軍
 57金 71宣  79尖
 48尖  124尖右  96宣
 56殖 92金  98軍
 59尖右  53尖右  811税
 610尖  102金  610尖
 34外  123金  97宣
 21宣  74外 99外
 38尖  113金 49尖
 28宣  64尖  48尖
 同尖  54尖右  17外成
 25軍  72竜  99魔
 27軍  105尖右  93宣成
 38宣  93殖  611尖
 59尖  94宣  59尖
78尖打  97宣  同軍
 87尖  94殖右  88軍
 69尖  93外 136宣
 79尖  81竜  79金
25軍  84尖  58尖打
 同宣  75尖  58尖
 同金  65尖左  810殖右
44尖打  同尖 67金
(中手後手の同盟成立)
 44尖  66尖  56金
 22外  56尖  同軍
 79尖  63尖  710尖
 89尖打  87竜  910魔
33殖  84宣  79尖
 45尖  127竜  510魔
 11旭  136竜  16軍
 14尖  126竜  36宣
 35軍  53宣  35宣
 同税  33宣  46尖
 23税  43殖  45尖
 99尖  41尖打  99税
 41尖  同尖  34尖打
 41宣  42尖打  33尖
 71宣成  33殖  52殖
 37宣  95尖  610尖
 83尖  32殖 12尖
 21旭  22殖  46軍
 22旭  71外  34尖打
 24金  32尖  58軍
 13旭 22金  25金
迄にて同盟者勝(180手)
以下中手後手の決勝戦。
後手が最後の詰手を為したるを
以て当然先手とす。
 後手  中手
 11・1軍  123輿
 71軍成  810宣成
 同殖  93外
 107外  115宣
 11・1竜  127竜
128宣  109尖
 911輿  910尖打
 812輿  911殖
 713輿  128竜
 612輿  119竜
 611輿  104外
 96尖  121金打
 101竜  106尖
 26外成  96外
 同軍  同尖
59尖  66宣
 68尖  26宣成
 44外  85化
 102竜  同殖
 85外  同殖
 102魔  712軍
 610輿  49外
 69輿  88軍
 79宣  711外
 710輿  810軍成
 同税  同外成
まで52手中手勝
合計232手

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