解説・全短評
誘い手の多い利波型の飛問題。 これまでに出現した詰筋は前回整理しているので、ごらんください。
そして今回、また新たな詰筋の登場です。 これだけいろいろな詰筋がある類型は珍しく、原型を開発した利波偉さんと次々と新詰筋を発掘する小山邦明さんに敬意を表します。
本作は、小山さんのいくつかの作品の中でも特に難解で、正解者は10名にとどまりました。
初形を見ると、右側には支援の駒が一つもなく、下の方に97桂と77銀。 質駒っぽい66桂もあって、横から飛を打つ筋しかないように見えます。
試しに74飛としてみましょう。
74飛、84角、同飛、95玉、85飛、96玉、86飛、97玉、
88角、98玉、99歩、89玉、34馬、78香合、97角、99玉・・・
狭い玉ですが、するする逃げられて、「お客さん惜しかったね」。
84角に同金はどうでしょうか。
74飛、84角、同金、95玉、85金、96玉、86金、97玉、
88角、98玉、99歩、89玉、34馬、78香合・・・
同じように追えますが今一歩。 でも、最初54飛と打っていたら59飛で詰みますね。
5手目85金で94馬という有力な筋がありますが、本作では同龍でも逃げられてもダメそう。
それでは初手54飛としてみましょう。 54飛に84角は先ほどの順で詰みますから、先に中合する一手です。 例えば74桂合なら?
54飛、74桂合、同飛、84角、同飛、95玉、85飛、96玉、87角、97玉、89桂まで
これは簡単でした。 桂以外の合でも同じですね。
しかし敵もさるもの、54飛に74ではなく64歩合とこちらに中合してきます。 同飛、84角となると、先ほどより歩が1枚多いので何とかなりそうな気がしますが、結論からいうと同飛の順も同金の順もやっぱり詰みません。
手が続いて、しかも際どいので、なかなかあきらめられませんが、ここで頭を切り替えないと本作は永久に解けません。
正解はなんと、93金と捨てる順。 同玉に83飛でも85桂でも全然続かないので、ちょっと読んでもあきらめてしまいそうな手です。 ところが、93金、同玉にぼんやり63飛と打つと、案外続きそうなことが見えてきます。
63飛には73に合駒するしかなく、85桂に84玉なら73飛成、85玉、83龍、84角、62馬以下で詰むので、84には逃げられません。 73の合駒は金、銀、桂、香のいずれか。
順に考えていきましょう。
1) 73金合
93金、同玉、63飛、73金合、同飛成、同角、94金以下
金合は取って簡単。
2) 73銀合
93金、同玉、63飛、73銀合、85桂、92玉(82玉なら73飛成、同角、83銀以下)、
93歩、81玉、73桂以下
銀合も73桂と取って簡単。
3) 73桂合が最長で正解なので、先に香合を。
4) 73香合
93金、同玉、63飛、73香合、85桂、92玉、62飛成、72桂合、
82合では93歩で簡単なので、72桂と中合して打歩詰を誘致します。
同龍、82銀合(金合は同様。桂香歩合は、84桂、同角、93歩、同角、同桂成、同玉、73龍以下)、
同龍、同龍、93歩、81玉、92銀、同龍、同歩成、同玉、
93飛、81玉、73桂不成、同角、83飛成、82飛(金)合、93桂以下29手(72馬以下でも詰む)
これもなかなかの手順でした。では本命の桂合を。
3) 73桂合
93金、同玉、63飛、73桂合、85桂、92玉、62飛成、72桂合、
香合のときと同様に72桂中合で打歩詰を誘致します。 香合のときのように同龍と取ると、82歩合、84桂、同角、93歩、同角、同桂成、同玉、73龍に83桂合で逃れ!
93歩、83玉、72馬、74玉、73馬、85玉、
73馬に同角が気になりますね。 同桂成、84玉、64龍、95玉、86角または87桂以下31手。
97桂、96玉、66龍、76桂合、95馬、87玉(97玉は88銀、同玉、77馬以下31手)、
86馬、98玉、76馬、87歩合、同馬(ここで68龍以下など収束はいろいろな詰あり)、同玉、
96角、98玉、68龍、97玉、88龍、96玉、86龍まで33手
収束、どの順に逃げても余詰があるので、みなさん解答選びに苦労されたようです。
大道棋としての実戦価値は際どい紛れの中でこの予想外の詰筋を実現させたことにあり、大道棋屋としてはその詰筋を見破られたら負けなので収束余詰はあまり気になりません(余詰を消すより初形を優先)。
もっとも現在は詰パラでの解答募集なので、すっきりまとめることが可能なら、より評価があがったかもしれませんね。
それでは解答者のみなさんの感想を。 解答到着順です。
- 永島勝利さん: (作意解)
- 収束がごちゃごちゃしてきて、どれが一番長いのかよく分からなくなりました。どうやっても詰む感じなので、どうにもスッキリしません。
序は面白いのですが、収束がこれだと、印象はあまり良くありません。
4手目73香の29手なら十分、面白いのですが・・・
- 谷口翔太さん: (20手目97玉の31手解)
- 17手以後の応手はいろいろありますが、どの手順にも余詰あり?で、ここから先の手順、どれを書いたら良いのかが判らない。全く、自信なしの解答、です。
乱れが大きいので、31手以上の解答は正解としました。
- 井上賢一さん: (20手目97玉の31手解)
- 4手目香合だと二手短く駒が余らない手順と別に駒が余る変別があるので、変化となると思いますが、こちらのほうも大道棋らしい手順です。
桂合の方がもう少し短く詰めばよかったかも。
- 三宅周治さん: (14手目同角の31手解)
- とりあえず自分なりに結論を出しました。
- 大下進さん: (18手目76銀合の33手解)
- 2度の桂合が発見できて詰め手もスムーズにできた。
- 前田知弘さん: (4手目73銀合の15手解)
- 前回の解説にはなかった筋ですね。よく思いつくものです。
桂合のほうが面白いですが駒余りです。実戦だと関係はないですが。
大道棋は駒余り許容なので、よもやま話での出題も駒余りに関係なく最長の手順をご解答ください。
- 長谷繁蔵さん:
- ギブアップ
ギブアップだが、手順がおもしろいので紹介します。
54飛、64歩合、93金、同玉、53飛成、73桂合、85桂、92玉、
62龍、72桂合、同龍、82銀合(歩合で詰まないようです)、同龍以下43手
この順で成立させられたらおもしろいですね。
- 占魚亭さん: (18手目97玉の25手解)
- 序が難しくて参りました。
駒が余らない順を選んだと思いますが、駒が余っても最長の手順をご解答ください。
- 竹中健一さん: (20手目97玉の31手解)
- これは難しいです。初手が見えなくて…その後も難解です…
- 佐藤司さん:
- ヤン詰すら全題解答できない、そんな状況でしたので、このコーナーまでは手が回りませんでした。
また時間が取れるときにぜひ挑戦してください。
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