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大道棋の歴史(13)  藤倉満 表紙に戻る
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大道棋の文献

大道棋の発生などに関するものは歴史の方で触れたので、ここでは大道棋の作品集や作品を載せた雑誌などを御紹介することにする。

◇大道詰将棋四百番

山村兎月編著、手書本であるが、最初の大道棋書である。 発行年代はハッキリしないが、昭和十年頃のことらしい。 詰将棋パラダイスの臨時増刊として、昭和三十九年二月一日発行された「山村兎月の大道棋四百番」の後書「原書について」によると

☆原書は四冊より成る。
 縦16cm、横11.5cm、厚さ約1.5cm
 ◇第壱編 百34ページ 百局
 ◇第弐編 同 上     百局
 ◇第参編 百36ページ 百局
 ◇第四編 百26ページ 95局
 合計三百九十五局収載。

☆山村氏の大道棋四百番は「ある」とは聞いていたが誰に聞いても”実物”は見たことがない、と言う。

☆しかし、やはり蔵書家はあるもので、名古屋のH・S氏から「実物」を見せられた。

☆案ずるに、これは山村氏がアルバイト(というのも変ですが) 一冊々々解説の部を手書きして希望者に分譲されたもので、その部数は極度に少いようである。

☆ごらんの通り大道棋(純)と認められるものは約六割で、あとは古棋書あたりからの転載が多い。
この書を分譲頒布されたころは一般に詰棋知識も低かったので、こうした古書からの転載ということも、 作品の普及宣伝という意味で許されてよかろう。

又詰将棋パラダイス昭和三十九年八月号の田辺重信氏「思い出の記」 には同書について次のように言及されている。

「ところで大道詰将棋の本は一体何の位出て居るのかと言うのに、これが意外に少いのですね。 出版年代順に追ってみるとです、何と言っても大正時代から昭和の初期にかけて、 将棋月報詰将棋欄の担当者として雄名をはせた福岡県門司市丸山吉野町の人、 兎月山村金五郎二段が盤面駒の配置を手押し判で丹念に作りあげ、 解説も又自筆楷書のペンの墨書きとした、十二センチ×十六センチ大の甲、乙二部計四百題収録のものが、 大道棋書として書物の体裁を整えた最初のものと思うのです。 書名は単に『大道詰将棋』とあるのです」

両氏の文面から推察するに、同書には、表題や収録局数に多少の相違があったようである。 けだし手書きだけに当然のことであろうか。 収録内容(パラダイス版)は、香歩問題(七十六局)9三銀7二飛型銀問題(四十三局) 9三玉8五飛型銀問題(十四局)8一玉型銀問題(十局)金問題(十局) 9二玉型持駒なし問題(十局)9五玉型持駒なし問題(七局)9一玉型歩問題(六局) 其他(二百十三局)で、9四玉型の持駒なしの問題が一局もないのが注意を引く。 これは兎月氏の収集時期と関連するものであろう。

◇趣味の大道詰将棋

田辺重信著。 昭和十四年十二月十日「将棋月報社」より発行。

私が所持するのは、昭和四十六年六月十日、詰将棋パラダイス発行のリコピー版であるが、 著者の田辺氏は原本について、先の「思い出の記」の中で次のように述べられている。

「次は(兎月氏四百番の)私の『趣味の大道詰将棋』で将棋月報社から発行されました。 第一手から最終手迄の正解手順を踏む間に、細大もらさず変化を織り入れ、 小説本を読む如くに目を通し得る従来にない私創案の解説法を試み、 持駒グループ別に百局を選んで配列したもので、昭和十四年の発売でした」

面白いことに序文は囲碁の本因坊秀哉名人が書いている。 収載内容は、香歩問題(十七局)9三玉7二飛型銀問題(十二局)金問題(十一局) 8一玉型銀問題(七局)9三玉8五飛型銀問題(五局)9四玉型持駒なし問題(四局) 9五玉型持駒なし問題(四局)9二玉型持駒なし問題(三局)9一玉型歩問題(三局) 其他(三十四局)となっている。

★本書はむろん絶版。 詰将棋パラダイス編集部からリコピー版で出ています。(四百円郵送料共)

◇亀井氏収集ノート

京都の亀井昭造(本名正三)氏の収集された作品ノートである。 私が持っているのは、名古屋の田代邦夫氏から贈られたもので、大道棋六百局が収められているが解はない。 田代氏は鶴田諸兄氏所蔵の写本を転写されたそうである。 田代氏によると原本は六百局でなく、八百局以上あるそうだが確かなことは不明である。 亀井氏は昭和二十三年に盲腸炎で亡くなられたそうであれうから、ノート作品の大部分は戦前の収集であろう。 尚、亀井氏は京都の映画撮影所(名前が一寸判りません。)に勤めておられた方で、 かなりの蔵書家であり大道棋病患者(!)の一人でもあったのです。

◇大道詰将棋集

亀井甘人編著、昭和十五年十一月作成。

亀井氏収集ノートの内から欠陥作品を除いて、百七十六局を一本に纏めたもののようである。 序文によると「拙蔵本より凡そ四百番程の内、不詰、又余詰多きものを省きて之に収録す」とあるから、 最終的には八百局を超えるといわれる亀井ノートも昭和十五年頃は約半数であったことが窺われる。 私の所持本は、昭和四十九年十月十五日作製の詰パラリコピー版であるが、 原本を筆者された石沢孝治氏は巻末で次のように述べられている。

「本書は、亀井正三氏のノートの写しであり、原本は二冊よりなり、巻一は図面のみ、巻二は解答が記載されて居ります。
図面、手順のオカシイのは、ハッキリ判明しているものだけは直してありますが、尚不明のものはそのまま記載致しました」

収録内容は
香歩問題(二十八局)9三玉7二飛型銀問題(三十三局)金問題(十六局) 8一玉型銀問題(十四局)9二玉型持駒なし問題(七局)9五玉型持駒なし問題(七局) 9三玉8五飛型銀問題(二局)9四玉型持駒なし問題(一局)其他(六十七局)合計百七十六局。

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