木目1

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大道棋の歴史(10)  藤倉満 表紙に戻る
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◆複式詰将棋について 古関三雄
(詰将棋パラダイス昭和二十六年三月号)

最近詰将棋の行詰りをとやかくいふ人が多くなった。 私は容易に行詰るとは考へては居ないが、新しい詰手筋を発掘するのは全く困難になって来ている。 詰将棋の一つの発展として私は棋誌が普通の詰将棋の他に複式詰将棋欄を設けることを希望する。 複式詰将棋といふと難しく聞えるがこれは玉の二つある詰将棋のことである。 玉の一つある普通の詰将棋を単式詰将棋と仮に命名すれば、 相対的に二つ玉の詰将棋を複式詰将棋といへよう。 複式詰将棋の特徴は玉方の応手が逆王手になることによって攻方の攻め手を局限し あわよくば逆王手に応じている間に詰を抜けようといふので これに依り詰将棋は非常に変化に富んで来るであろう。 逆王手が多ければ多い程傑作といへるであろう。 私は実戦に於ては単式詰将棋よりも複式詰将棋の方が役立つと思ふ。 王手王手と玉を追って来て竜が引いて合駒して頭金の詰と思った瞬間、 その合駒が逆王手となって形勢一変といふことは誰もが一度は経験したところであろう。 これは相手の玉にばかり気をとられた独善的読みに依るもので、 此の点複式詰将棋は大道棋として使用すれば価値がある。

逆王手を分類すると
(一) 打って逆王手
(二) 開き王手
(三) 盤駒の移動王手
に大別される。

(一)の場合は必ず遠王手に対する合駒に限られている。

(二)はイ図に於いて2三歩成2一玉がそれである。

イ図

(三)は桂馬が良く使はれるし妙味も多い。

ロ図

ロ図に於て7五桂7二銀の手をせず功を焦って9三香成などとやると同桂で逆王手になってしまふ。 此の場合9筋に香があるのでなければ9三香成の手は無い。

ハ図

ハ図は複式詰将棋として良く出来たと思ふ。 逆王手の手筋が変化にもあって大道棋にしたら天狗連の鼻を明かすことが出来るだろう。

ハ図詰手順
7三角、8二桂合、8四玉、9五銀、同香、同飛、8三桂、同角、
8二角成、同玉、8三銀成、7一玉、5三角、6二角、7三香、6一玉、
7二成銀、5一玉、4三桂、同歩、4二銀迄(二十一手)

一寸見ると8三玉で簡単と思はれるが9五飛の妙手ありてオジャン。 更に8四玉や9三香打は8二玉と逃げられる。 7三角に対し桂合は此の一手で他の合は9三香の早詰。 玉を右に追って5三角と打ったとき6二角と又も逆王手の時そのまた逆王手の7三香合 このあたりが複式詰将棋の面白いところで詰将棋マニアの諸君に一層の傑作を期待する。 そして複式詰将棋欄設置の世論を高めてもらひたいものである。

☆古関氏提唱の複式詰将棋は非常に面白い。
 北海道の小原信治氏にも傑作ありとか。
 皆さんの妙作をどしどし寄せて下さい。

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この一文によって双玉の提唱者及び第一号局の作者は当然古関氏と思われるのであるが、 提唱者はともかく、作者となると強ちそうだとは言えないのである。

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