玉が動くマスが少ない詰将棋のこれまでの長手数記録は次の通り。 
    
      - 不動玉 不動都 「ボクハ更新サレマシタ」 73手
      
 - 玉移動2マスのみ 相馬康幸 77手
      
 - 玉移動3マスのみ 上田吉一 「モザイク」 145手
    
  
    本作は、上記のうち、玉移動2マスのみの長手数記録を大幅に更新した作品(119手)です。  
     
    2マスをいったりきたりするだけで、なぜこんな長手数を実現できたのでしょうか。 
    作者 「1-180「玉移動2マスのみ」の記録作ができましたので投稿します。 
    作品名は「足踏み」、飛車打ち飛車合いと片道馬鋸を組み合わせて119手になりました。 
    往復できれば良かったのですが、いい収束を見つけられなかったので断念しました。 
    これを創作していて、不動玉最長手数の「ボクハ更新サレマシタ」の凄さがわかりました。」  
    馬ノコの中で、馬の王手に対してある駒の移動合で応じる「移動合型馬ノコ」と呼ばれるタイプがあります。
    山田修司さんが詰パラ1951年11月号で発表した作品が最初で、当時は「複式馬ノコ」と呼んでいました。
    移動合馬ノコでは、馬の王手では玉が動かないので、別に玉を移動させる手順が必要になります。
    その移動手段として、「飛打、飛合、同飛、同玉、」の4手を使った作品も作られています(墨江酔人 近代将棋1981年12月)。 
     
    更に、馬ノコの1サイクルの間に、もう1枚受方の駒を、「飛打、飛合、同飛、同*、」で動かすようにしたのが、添川公司さんの「二天門」
    (詰パラ2017年7月)です。
    詰方55馬、受方66と76金77玉の配置から、「97飛、87飛合、同飛、同玉、83飛、86飛合、同飛成、同金、67飛、77飛合、
    54馬、76と、77飛、同玉、44馬、66と、75飛、76飛合、同飛、同金、」の20手で馬が斜めに一つ移動します。 
     
    馬詰さんの「足踏み」でも、移動合型馬ノコの間に飛打飛合を使って玉と成桂を動かすのですが、
    玉が1回動くごとに成桂が2回動く、さらに複雑な手順になっていて、馬が斜めに一つ移動するのに28手もかかります。
    これにより、片道馬ノコにもかかわらず119手という長手数を達成できたわけです。 
     
    それでは、具体的な手順を見ていきましょう。 
    
      68歩、同桂成、66と、77玉、78歩、同成桂、 
      67飛、同飛成、同と、同玉、
     
    これで舞台装置は完成、ここから1サイクル28手の馬ノコが始まります。 
    
     「87飛、77飛合、同飛、同成桂、69飛、68飛合、同飛、同成桂、 
      87飛、77飛合、同飛、同玉、21香成、55と、 
      57飛、67飛合、同飛、同成桂、79飛、78飛合、同飛、同成桂、 
      57飛、67飛合、同飛、同玉、12馬、45と、」
     
    この手順を繰り返して、馬を近づけていきます。 
    
     「87飛、77飛合、・・・ 22馬、55と、 ・・・ 23馬、45と、」 
     「87飛、77飛合、・・・ 33馬、55と、 ・・・ 34馬、45と、」
     
    34まで近づいたことで、次のサイクルから収束に入ることができます。 
    
      87飛、77飛合、同飛、同成桂、69飛、68飛合、同飛、同成桂、 
      87飛、77飛合、同飛、同玉、 
      57飛、67飛合、44馬左、同桂、同馬、同と、67飛、同玉、 
      79桂、同成桂、68飛、77玉、88銀 まで119手
     
    あらためて玉の動いたマスを確認してみると、67と77のみ。
    玉移動2マスのみの長手数記録を77手から119手に大きく更新しました。 
     
    21香成、および馬の王手では、先に飛打飛合をする手順前後が成立。 やむを得ないところでしょうか。 
    収束の44馬左だけは、先に57飛、67飛合を入れないと、57飛に67角合で詰まなくなります。 
    それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。 
    
      - 山下誠さん:    
      
 - 玉は6七と7七のみを往復するだけ。馬鋸を使って足踏み11回は凄い。
    
  
    
      - 津久井康雄さん:      
      
 - 2マス移動の最長でしょうか。成桂の位置変換が面白かったです。
    
  
    
      - おかもとさん:
      
 - 67と77でひたすら足踏みを繰り返すわけですね。
 
      51手目と53手目は手順前後が成立?
      
    はい。 成立します。 
    
      - 占魚亭さん:  
      
 - 桂を手に入れるため、玉に足踏みさせる。面白かった!
    
  
    
      - S.Kimuraさん:
      
 - 飛車打ち,飛車合で玉と成桂の位置をずらして馬鋸を進めていくところが面白いと思いました.
    
  
    
      - 池田俊哉さん:  
      
 - 飛打飛合による片道複式馬鋸。ワンサイクルに成桂の移動が必要なため回りくどく楽しい趣向になっている。
      上部の駒(91香-92銀など)の意味がわからなかったがこの作者なので、きっと深い意味があるのでしょう(笑)
    
  
    これは合駒制限のための花駒。 あまり深い意味はありません。 
    
      - 嵐田保夫さん:
      
 - 応手が限られているので考えやすいきらいはあるが、
      将棋図巧第一番を彷彿させる飛打飛合による玉の移動と馬鋸を狭い範囲で両立させているのは
      まさしく芸術的と言っていいのではないか。
    
  
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