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詰将棋おもちゃ箱記録に挑戦!

記録展示室 No.109
馬詰恒司さん 「エアホッケー」

記録に挑戦!
記録に挑戦!
棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)
出題時のコメント:
・・・の長手数記録 390手台

記録展示室No.109 馬詰恒司「エアホッケー」

馬詰恒司さんは、展示室では初入選ですが、毎年年賀詰展示室に作品を展示しているので、 おもちゃ箱ファンにはおなじみでしょう。 寡作ですが、力の入った中長編が多く、看寿賞も長編賞を2回受賞しています。

本作も400手近い大作。 飛打飛合で七段目を移動する作品で、飛打飛合回数の記録と思われた方もいました。 飛打飛合回数のこれまでの記録は調べてみたところ、添川公司さんの「旋回飛行」51回。 本作は83回で大幅に更新しました。 ただ、王手駒と合駒の組み合わせはかなり多いので、記録の項目に加えるのはちょっと厳しいですね。 単に飛合回数の項目ならすでにあるのですが、 こちらは山本昭一さんの「メタ新世界」93回が記録。 本作は84回で飛合回数の記録更新はなりませんでした。

本作は玉移動一つの段のみの長手数記録作品(393手)です。 これまでの記録は今村修さんの139手ですから、 一挙に3倍近く延ばしたことになります。

これまでも、趣向部が数百手玉移動一つの段のみで、収束で違う段にはずれる作品はいくつかありました。 例えば、(早詰がありましたが)森長宏明さんの「万里の駒」901手は、 853手目までは玉は一段目しか移動しません。 しかし、数百手もの大型の趣向でその段のままで収束するのは難しく、 これまでは今村修さんの139手が最長でした。 本作はちょっとキズはあるものの七段目のままで収束し、大幅な記録更新に成功しました。

初形で後手の持駒は香と歩。 飛打飛合の展開に持ち込むには香を持たれていては香合されて困るので、最初に79香として香合させます。 79香に87玉と逃げるのは86とで清算して以下53角成を狙えば簡単。 79香、78香は最後まで動きません。 長手数記録なので2手延ばしたものですが、柿木将棋が78香を取る紛れに嵌って解けなくなるようで、 ソフトで鑑賞しようとした人は困ったようです。

  79香、78香合、

ここからはと金と46の飛を捨てて、17龍以下飛打飛合に持ちこみます。

  67と、同玉、57と、同玉、47飛、同玉、37と、57玉、
  47と、同玉、17龍、37飛合、同龍、同玉、

まずは、玉を87まで移動させて43角成を狙います。

  57飛、47飛合、同飛、同玉、・・・、97飛、87飛合、同飛、同玉、
  67飛、77飛合、43角成54成香、77飛、同玉、

飛打はすべて以遠打で非限定です。 また、67飛と43角成の手順前後が成立します(以下も同様)。
43角成に65成香も考えられますが、作意と同様に進めて、あとで65馬と取る手があって早く詰みます。

11歩の配置でピンときた人もいるかもしれません。 そう、この43の馬を33、32、22、21、11と馬ノコで11歩を取りに行くのです。 しかしあわてて33馬としては55との移動合で54・55が両方共ふさがってどうにもならなくなります。 その前にもう1枚の角を馬にすることが必要。 そこで、玉を37まで移動させて73角成と馬を作ります。

  57飛、67飛合、同飛、同玉、・・・、27飛、37飛合、同飛、同玉、
  57飛、47飛合、73角成55と、47飛、同玉、
  67飛、57飛合、83馬65と、57飛、同玉、

左の角も馬にしておけば、55とで33−77の馬筋を塞がれても、83馬、65とと再び開けることができます。

  77飛、67飛合、同飛、同玉、87飛、77飛合、同飛、同玉、
  57飛、67飛合、33馬44成香、67飛、同玉、

この辺(84手目)までくると、やっと構造が見えてきました。 右の馬で成香の移動合をさせながら馬ノコしていくのですが、と金が馬筋を邪魔しているので、 それをその都度左の馬で動かすわけです。

  47飛、57飛合、同飛、同玉、・・・、27飛、37飛合、同飛、同玉、
  57飛、47飛合、73馬55と、47飛、同玉、

  67飛、57飛合、同飛、同玉、・・・、97飛、87飛合、同飛、同玉、
  67飛、77飛合、32馬54成香、77飛、同玉、

  57飛、67飛合、同飛、同玉、・・・、37飛、47飛合、同飛、同玉、
  67飛、57飛合、83馬65と、47飛、同玉、

  77飛、67飛合、同飛、同玉、87飛、77飛合、同飛、同玉、
  57飛、67飛合、22馬44成香、67飛、同玉、

以下、この72手パターンを繰り返して、11歩を取ってまた戻ってきます。 33馬まで戻るのは、収束で15馬と行くためです。

  ・・・ 73馬55と ・・・ 21馬54成香 ・・・ 83馬65と ・・・ 11馬44成香 ・・・
  ・・・ 73馬55と ・・・ 21馬54成香 ・・・ 83馬65と ・・・ 22馬44成香 ・・・
  ・・・ 73馬55と ・・・ 32馬54成香 ・・・ 83馬65と ・・・ 33馬44成香 ・・・

ここからは取った歩を38に打って収束します。

  47飛、57飛合、同飛、同玉、・・・、27飛、37飛 合、同飛、同玉、
  38歩、同桂成、15馬、26歩合、17飛、27飛合、同飛、同玉、
  17飛 まで393手

馬ノコに遮る駒を2枚(成香とと金)置いて、と金の方はもう1枚の馬で移動させる馬ノコ。
その都度馬で王手する位置に玉を横に移動させる必要があるので、400手近い超長編になりました。

作者 「この作品、仕組みは単純なので、誰が創っても不思議ではなかったと思います。 7段目で玉を追うという発想が出たのが勝因?だったのかもしれません。 玉移動一つの筋のみの「天月舞」を超えられたので満足です。 でもやっぱり収束のキズが・・・」

収束3手前の391手目から73馬以下の詰みもあり、迂回手順的なキズ。

縦横の違いはありますが、構造から 添川公司さんの「明日香」を思い出した人もいるかもしれません。 明日香も703手のうち625手までは玉は1筋から外れません。

解答はすべて最終手17飛でしたが、手数が387手、391手、393手、417手と分かれました。 迂回手順などキズがあるのと、大筋解けていると思われるので、すべて正解として扱いました。 今のところは完全作として記録に挑戦!に登録することにしますが、 解説手順と比べて「早詰では?」と思われる方がいましたらTETSUまで手順をご連絡ください。

それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。

隅の老人Bさん:
飛打飛合での長手数記録作ですね。
飛打飛合の回数は解説者にお願いして、飛打飛合に馬鋸を絡ませた構想には驚きです。
馬鋸で得た1歩を何処で使用するかは、最後の謎解き。
393手の長手順とは! 恐れ入りました。

飛打飛合回数の記録になりますが、前述の通り項目は立てないことにします。 本作は「玉移動一つの段のみ」の長手数記録でした。

山下誠さん:
成香とと金の並び方、つまり玉の位置によって馬鋸が可能。この素朴な仕組みで飛打・飛合を繰り返すという優れたアイデア。しかし、何度並べても手数が足りません。残念!

387手解。 どこかで6手省略できる?

おかもとさん:
柿木将棋IXでは解けず。それではと、東大将棋無双IIにお願いしたら431手の解。
作意は390手台というので、手順をチェックして、途中図を柿木に食べさせて393手解にたどりつきました。
添川公司作「明日香」を横にした、ということなんでしょうが、飛打飛合に馬鋸を組み合わせたすごい作品。 ネットで発表するのはもったいない。

記録という観点からの評価の意味では、おもちゃ箱発表が最適かも。

松本浩一さん:
棄権
おお柿木先生、寝ているのですか!?
凄じいのだけは分ります……来月の解答後、鑑賞したく。

頭の2手が柿木将棋にいじわるしていたようです。

鈴木彊さん:
飛打飛合の趣向に2枚の角を馬にし右の馬による馬鋸の趣向と見事な内容。
337手目73馬に対する応手の変化多岐と難所もあり凄いです。
飛打飛合の回数も凄いです。記録?

417手解。玉移動一つの段のみの記録でしたが、飛打飛合の回数も記録でした。

波多野賢太郎さん:
変化が読みきれてないので手数などあまり自信ありません。 3八歩と打つための歩を馬で1一に取りに行く、 その間の玉のエアホッケーのような動きは自分なりに十分楽しむことができました。
S.Kimuraさん:
頼みの柿木将棋IXは,エラーが出て解くことができず, 「不詰を改善」にして4日ほど解かせましたが,進行度が65ぐらいから先に進みませんでした. 何が「エアホッケー」なのか,解答を楽しみにしています.

棋譜ファイルを柿木将棋で並べてご鑑賞ください。

小山邦明さん:
馬鋸との組合せで面白い機構の作品にできあがっていると思います。
占魚亭さん:
「玉移動一つの段のみ」の新記録ですね。
何度考えても387手(17飛迄)で詰んでしまう。どこで間違ったのか……。

早詰のようでしたら手順を教えてください。

池田俊哉さん:
全玉移動位置七段目の最長手数。 二枚馬の利きを遮断する駒の位置変換をうまく活用している。 ただ、正直記録に拘らなければもっと手数が伸びそうな気もするが...

記録でなければ、単に手数を延ばすのはあまり意味がないような。


記録展示室No.109 解答:8名 全員正解(下記)

  池田俊哉さん  おかもとさん  小山邦明さん  鈴木彊さん
  隅の老人Bさん  占魚亭さん  波多野賢太郎さん  山下誠さん

当選者は、展示室で発表しています。