42玉『驚愕の曠野』(以下「原図」)検討中の調査では、42合の変化が詰まないはずだった。
だが、序盤変化の一節で手が止まる
―― 「ロ角以外の合なら31銀と挟み撃つか、33銀と形を決める。」
―― では、イ61玉・42歩香桂銀合に対しても、62銀と形を決め、同玉、63歩なら。
……詰むではないか。
42の質駒の有無や種類は異なるが、持駒金4銀を残して歩で王手を続ければ、以下のいずれかの形に帰結するか、金銀の並べ詰みだ
(なお「42X」は「歩香桂銀」と「無し、つまりイ61玉」を表す)。
- 65玉型は、42Xと盤上に残る攻方歩の組合せに関係なく、66金。
- 攻方65歩を残して73玉・74玉・75玉・53玉・54玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく、金銀を打って詰む。
- 攻方64歩を残して74玉・52玉・53玉・54玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく、金銀を打って詰む。
- 攻方63歩を残して53玉型は、42無歩香の場合は簡単。
42桂の場合は54に利くが、54歩、同桂、44金、63玉、54金。
42銀の場合は53に利くが、54歩、64玉、65金、同玉、66金。
- 76玉型は、77金以下詰む。この時、42香桂銀の場合は42角成と取れる。
- 攻方76歩を残して86玉・85玉・84玉・65玉・64玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく、金銀を打って詰む。
- 攻方75歩を残して85玉・84玉・83玉・65玉・64玉・63玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく、金銀を打って詰む。
- 攻方74歩を残して84玉型(63歩か64歩、83歩、93歩か94歩が残っている可能性があることに注意)は、44に利く42香の場合は66角成。他の場合は66角成以外に73銀もある。
- 攻方74歩を残して64玉型(攻方63歩が残っている可能性があることに注意)は、44に利く42香の場合は65銀。42無歩桂銀の場合は73銀。
- 攻方74歩を残して83玉・63玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく、金銀を打って詰む。
- 攻方73歩を残して63玉型は、54に利く42桂の場合は64歩で他の形に合流。42無歩香銀の場合は54銀73玉55角成。
- 84玉型(攻方73歩が残る場合以外は既述)は、42香かつ63歩73歩94歩の組合せの場合のみ85歩以下。他は、42Xと他の攻方歩に関係なく66角成。
- 攻方84歩を残して94玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく83銀。
- 攻方83歩を残して93玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく66角成。以下84飛桂香歩合に82銀、角銀合に94歩。
- 攻方83歩を残して92玉型は、42Xと他の攻方歩に関係なく82金、93玉、66角成。
……以上である。そして全て、最長でも40手前後で詰みを見る。
なおイ42飛合は同角成、同玉、45飛、44銀合、53金、同玉、64金、同玉、65金以下35手駒余り以内となる。
Aの紛れで有力な手段も記しておく。原図の変化局面とも比較されたい。
- A52歩は同玉、43金(43銀)、61玉で、原図B43歩を同玉と取った時よりも一路広く逃れ。52歩に61玉、62歩、71玉、72歩、81玉以下の逃れもあり。
- A同様に41金は61玉で、62歩は71玉、52銀は71玉、52金は72玉で逃れ。
- A62銀、同玉、44角成は53銀合、63歩、72玉、73歩、63玉、64歩、同玉、65歩、74玉(75歩を二歩にする)または53角(角筋を保つ移動合)で逃れ。
- A62金、同玉、44角成は53金合、63歩、同玉(64歩、同合、54銀の筋がない)または53角で逃れ。
狙って創れる記録ではないが、原図ともども長編に属する手数に初めて踏み出せたことは感慨深い。そしてこの詰将棋を、四百年の歴史の中の宝の一つとして遺せれば幸甚に思う。
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