何 を 話 そ う か
7月号
七夕

「でわみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」
宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』は、このような先生の問いかけで午後の授業が始まります。
天の川を、乳の流れたあととするのは牧畜をする人々の間で生まれたもので、農耕文化圏の日本ではむしろ瓜から流れ出した水だと考えられました。
さて、七夕伝説はこの天の川をはさんだ二つの星を主人公にした物語です。中国の原話は、天帝が自分の娘を牛飼いの若者とめあわせたのですが、とたんに働き者だった二人が遊び呆けるようになってしまいました。怒った天帝は、二人が会うのを一年に一度だけにしてしまったのです。日本では、羽衣伝説やかぐや姫伝説と融和して、より豊な説話になっています。
ところで、彦星・織姫星がどの辺りにあるかご承知ですか。彦星はわし座のアルタイル(空飛ぶワシの意)、織姫星はこと座のベガ(落ちるワシの意)。7月7日夜9時ですと、アルタイルはまだ東南東の低い位置にいます。天の川をはさんで上のほうにある、より明るい星がベガです。はくちょう座のデネブを加えると雄大な夏の大三角になります。
梅雨の真只中ですが、晴れるといいですね。
(Photo:青森のねぶた〜七夕祭りの一変形といわれている。撮影=藤本栄一氏)