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私的録音補償金って何?


 DATのマニュアルに私的録音補償金管理協会のことが載っていた。私的録音補償金協会とは何か? こいう場合はすかさずhttp://www.infoseek.co.jp/である。
 著作権法104条に定められた「私的録音録画補償金」を徴収する団体であることはわかった。法は1996年に制定されたということで、かなり新しい。
 また、JASRACのページに
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 JASRACは5月26日付で、私的録音補償金管理協会SARAHから平成9年度分配対象補償金の上半期分として1億9千万円余を受け取りました。
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とあるので、どの程度の規模の金額を動かしているかもわかった。最初にこの文章を見たとき、上半期分を上納金と読み違えて、なんて越後屋な!と勘違いした(勘違いじゃないかもしれない)。

 しかし、実体は不明だ。

 DATやMDは機器及びメディアにこの「補償金」が盛り込まれている。

 有名な30条は以下のように拡張されていた(以下、著作権法の文面はJASRACのページからコピーしました)。
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 (私的使用のための複製)

第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とする場合には、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製するときを除き、その使用する者が複製することができる。

2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
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 「デジタル方式の録音」という言葉があり、なんだか知らない間に法律もサイバーになったもんだと思ったが、「私的録音録画補償金」ってのはデジタル著作物の私的複製の補償という位置づけのお金なのだった。それが半年で2億円。高いのか安いのかの判断は私にはできません。

 そんなわけで、個人による私的複製にも制限ができてるということはわかった。

 問題は自分が作った作品だ。

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 (私的録音録画補償金の支払の特例)

 第百四条の四 第三十条第二項の政令で定める機器(以下この章において「特定機器」という。)又は記録媒体(以下この章において「特定記録媒体」という。)を購入する者(当該特定機器又は特定記録媒体が小売に供された後最初に購入するものに限る。)は、その購入に当たり、指定管理団体から、当該特定機器又は特定記録媒体を用いて行う私的録音又は私的録画に係る私的録音録画補償金の一括の支払として、第百四条の六第一項の規定により当該特定機器又は特定記録媒体について定められた額の私的録音録画補償金の支払の請求があつた場合には、当該私的録音録画補償金を支払わなければならない。

 2 前項の規定により私的録音録画補償金を支払つた者は、指定管理団体に対し、その支払に係る特定機器又は特定記録媒体を専ら私的録音及び私的録画以外の用に供することを証明して、当該私的録音録画補償金の返還を請求することができる。3 第一項の規定による支払の請求を受けて私的録音録画補償金が支払われた特定機器により同項の規定による支払の請求を受けて私的録音録画補償金が支払われた特定記録媒体に私的録音又は私的録画を行う者は、第三十条第二項の規定にかかわらず、当該私的録音又は私的録画を行うに当たり、私的録音録画補償金を支払うことを要しない。ただし、当該特定機器又は特定記録媒体が前項の規定により私的録音録画補償金の返還を受けたものであるときは、この限りでない。
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 ひっかかるのは「支払つた者は....証明して」という部分だ。「オレはCDをコピーするためにDATを買ったわけじゃない」ってことで私的録音録画補償金の返還を請求するには、証明をしなくてはいけないのだ。証明を払った側がしなくてはいけないってことは、その敷居の高さを法が示しており、事実上払い損ってことになる。

 さらに問題を悪化させているのがSCMSだ。

 SCMSはDATがコンシューマ市場での失敗の原因のひとつになった、コピーガード(複製世代管理)の規格だ。デジタルからデジタルへのコピーを1回に制限するものだ。このコピーガードには法的裏付けがあるわけではない。単なる自主規制だ。
 自分の作品の録音に余計な補償金を払った上で、しかもバックアップがとれないということだ。バックアップがとれないんじゃデジタルであるメリットは半減する。
 業務用の(高い)DATにはSCMSのない機器はあるが、安い民生用DATには普通SCMSが入っている。貧乏なアマチュアは自分の作品をバックアップする権利さえ奪われていることになる。

 コンシューマオーディオ機器として失敗したDATは現在、1/2インチテープの後継としてアマチュア・プロを問わず音楽を作る人達にマスターとして活用されている。逆に言えば、純オーディオとしてDATを使っている比率は、他のオーディオ機器と比較して極端に低いのではないかと推測される。
 私の周りでDATを持っているのは全員自分で音楽をやっている人だ(そういう友人が多いという点はあるにせよ)。しかもみんなポータブルDATだ(スタジオでの録音を考えるとポータブルが便利)。なぜか純オーディオに傾倒している友人は誰もDATを持っていない。
 結局DATからの上納金^H^H^H補償金は多くの部分が払い損からのアブク銭になっているのではないか? SCMSはDATにおいて結局ただの迷惑としてしか機能してないのではないか? こういった疑問はどこにぶつければいいのだろう。
 たとえ業務用DATを使っても、メディア(テープ)に補償金(幾らなんだろうね)が積まれているので、逃げ道は全く閉ざされている。
 半年で2億円の大部分はMDであろうことは簡単に想像がつく。

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このホームページは、著作権思想の普及を目的として社団法人私的録音補償金管理協会(SARAH)から受ける共通目的基金の助成をもとに開設しています。
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という記述があったのはhttp://www.japanlink.co.jp/cric/だが、このページを見ても私の疑問が解消するどころか、近い話題さえなかった。

1997.11.14

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