生命科学 2007年 9月

9月7日(木)授業

遺伝
遺伝子の本体

−22−
2学期は遺伝学を学習します。
まず,分子遺伝学を学び,その後古典遺伝学を学習しましょう。
メンデルが遺伝のしくみを考えた時,遺伝因子(element)を仮定しました。まさにそれが遺伝子DNAだったわけです。DNAはデオキシリボ核酸という物質で,4種類の構成物質(ヌクレヲチド)がものすごくたくさん並んだものです。4つの構成単位の配列(塩基配列)が,遺伝子としての意味を持っているのです。

9月13日(木)授業

遺伝
遺伝暗号の転写

−23−
遺伝子は,その情報を元にタンパク質が作られることで,細胞に様々な物質ができ,その生物の様々な形態,性質が作られます。遺伝子を元に物質が作られることを遺伝情報の発現と呼びます。
遺伝子DNAは,作られるタンパク質のレシピです。遺伝子が発現される過程は,まずそのレシピのコピーがたくさん作られることから始まります。長いDNA分子の上にレシピは,離ればなれに並んでいるので,作られようとするタンパク質の部分が伝令DNA(mRNA)に写されます。この時,DNAの塩基配列が鋳型となり,mRNAが正確に作られます。mRNAはイントロンと呼ばれる余計な部分が切り取られるスプライシングという過程を経て,エクソンだけがつながった完成されたmRNAが完成し,核膜孔から細胞質に出て来ます。

9月18日(火)授業

遺伝
遺伝暗号の翻訳

−24−
細胞質に出て来たmRNAにはリボソームが付着し,その上でタンパク質の合成が行なわれます。mRNAの3つの塩基の配列(コドン)に対応した塩基配列(アンチコドン)を持つ運搬RNA(tRNA)が,それぞれ決まったアミノ酸を運んで来ます。運ばれて来たアミノ酸は次々と結合して,ポリペプチドが作られ,タンパク質が作られて行くのです。
コドンは全部で64通りありますが,タンパク質を構成するアミノ酸は20種類ですから,複数のコドンが一つのアミノ酸をしてすることもあります。しかし,その逆はありません。コドンの中にはそこでアミノ酸の結合を終止する信号となる終止コドンもあります。

9月27日(木)授業

遺伝
遺伝子の複製,変異

−25−
DNAの塩基配列がアミノ酸を指定し,その情報を元にタンパク質が作られることを学びました。そのため,細胞分裂に先立ってDNAの塩基配列が,正確に複製されることが何より大切になります。DNAが複製される時には,2本のヌクレオチドの鎖のそれぞれが鋳型となって,正確に新しいDNAが合成されます。これを,半保存的複製と呼びます。
いくら半保存的複製が正確な複製でも,必ず間違いが起きます。間違いが起きると,遺伝子が発現する時,本来のタンパク質とは構造の異なるタンパク質ができたり,時には機能の全く失われたタンパク質が作られたりすることがあります。これを突然変異と呼びます。実はこの突然変異が,生物を進化させる原動力になったのです。我々の遺伝子は今も変異を積み重ねています。

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