生命科学 2007年 4月

4月13日(金)授業

生命科学とは

これから学ぶ「生命科学」について

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今日は生命科学の第1回目の授業です。
生命科学と生物学とはどこが違うのでしょう。
生命科学は,生物学や化学を基礎とした,生命現象に関する応用科学です。
生命科学は人の快適で安定した生活,幸福で豊かな生活を実現するために生命を研究する科学す。
これから世の中で暮らしていく皆さんは,多くの場面で選択を迫られます。食べるもの,住む所,病気になったときに受ける治療など,よりよき選択に必要なのが生命科学に関する正しい知識と,科学的な思考力,判断力です。
理系の各分野にすすもうとする皆さんは,たとえそれが機械やエネルギーといった工学の分野であっても,生命に関する正しい知識や考え方は必要不可欠となるでしょう。
これらを身につけるため,この科目があると考えてください。
これから1年間,生命科学の基礎である,おもに分子生物学に関する内容を紹介していきます。私が「すごい」,「なるほど」と思ったことを,うまく皆さんに伝えられると良いなと思っています。
さあ,生命の神秘の海に一緒に漕ぎ出しましょう。

4月16日(月)授業

生命を構成する物質1

生命を構成する原子

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生命を構成する分子はC,H,O,を基本とした有機物で,それ以外にN,P,Sなどが含まれています。Na,K,Ca,Fe,Mg,などの元素も含まれていますが,これらは有機物を構成する元素としてではなく,生物の細胞や細胞間に,イオンや無機物の形で存在します。
生物体に最も多く含まれているのは(H
O)です。水は分子量が小さく,粘性が低く,そして何より,いろいろな物をよく溶かし(溶解度が大きい),温まりにくく冷めにくい(比熱が大きい)性質を持っています。これらの性質が,生体内でおこる様々な化学反応の媒体として,ベストな性質なのです。生命にとって水は必要で不可欠な物質です。この地球上に水があったからこそ,生命が誕生し,多様に進化できたと考えられます。

4月20日(木)授業

生命を構成する物質2

生命を構成する分子

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水の次に多く含まれているろはタンパク質 protein です。細胞の構造を作ったり,代謝の調節をする酵素の本体であったり。様々な機能を持っています。
次は核酸 nucleic acid DNAは遺伝物質の本体であり,遺伝現象の発現を担うのがRNAです。
その次に多く含まれるのが無機塩類 mineral で,その次が脂質 lipid です。中性脂肪は栄養分を貯蔵する機能があり,リン脂質は細胞膜の主成分です。
生体を構成する有機物は高分子物質で,それらはすべて,比較的小さな構成物質が脱水結合によって結合しています。

4月23日(月)授業

生命を構成する物質3

生命を構成する分子

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最後に炭水化物 carbohydrate を忘れるわけにはいきません。その名の通り炭素と水の化合物で単糖類であるグルコースは細胞のエネルギー源である呼吸反応の基質となります。
単糖が2個脱水結合でつながると二糖類になります。
炭水化物には同じ分子式でも,構造のほんの少し異なる異性体が多くあります。化学的な性質はそれほどかわらないのですが,生体内ではしっかり区別されます。例えば二糖類のマルトース(麦芽糖)はグルコースが2個結合したもので,牛乳などミルクに多く含まれているラクトース(乳糖)はグルコースとグルコースの異性体であるガラクトースが結合したもので,分子式は全く一緒です。でも,腸で分泌されるマルターゼはマルトースしか分解せず,ラクトースは分解できません。ラクトースを分解するラクターゼは普通母乳を栄養源にする乳児の頃しか分泌されないのです。

4月26日(木)授業

生命を構成する物質4

生命を構成する分子

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単糖類が3〜数個つながったものがオリゴ糖です。本来「オリゴ」とは「少ない」という意味で,マルトースなどの二糖類もオリゴ糖でが,生物の教科書には二糖類と分けてあるものが普通です。オリゴ糖を消化できる酵素を持つ生物は少なく,我々は食べても消化吸収できないのでダイエット食品等に利用されています。虫歯の原因菌なども利用できません。なので,ガムに入っていても虫歯になり難いのです。
数百もの単糖がつながったものが多糖類で,植物ではデンプンという形で栄養を蓄え,細胞壁の主成分のセルロースもそうです。動物ではグリコーゲンという多糖類が肝臓や筋肉に栄養を蓄えます。カニの甲羅などを作っているキチンも多糖類です。

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