
翌日の練習は、前日と変わらず、基礎とその応用と言ったところを重点に行われた。
三井は、今日は二年生のロングシュートのチェックをしている。
宮城を筆頭に、後輩達は大人しく三井のシュート講座に聞き入っていた。
『三井サン、ほんとにシュートだけはすげーんだよな』
シュートだけとは、あまり誉めているようではないが、宮城にしては、破格の賛辞を心の中で送りながら、苦手なロングシュートを、克服すべく練習に励んでいると、どうも赤木と木暮がみている、一年の方から、妙な視線を感じる。
『なんだ?流川?』
一年にして湘北のエースの流川が、ジッとこちら側のコートを見つめている。
視線はどうやら三井に向けられている。
三井はというと、安田の肘と膝を確認しながら、シュートフォームの調整をしているところだった。
安田のフォームが、徐々に安定してくる。
三井が、だんだん嬉しそうに笑いながら、安田に話しかけているのを、ひたすら見つめているのだ。
『あぶねー奴…。しかし三井サンすげーな。ヤスのフォームが見違えるほどよくなってる。あの人にそんな力があるなんて、思わなかったな…。』
宮城は、隠れた三井の才能に驚いていた。
自分のことだけでなく、他のメンバーの上達に関して、ここまで熱心にアドバイスができるなんて思ってもみなかった。
しかもそのアドバイスが、的確で、正確なのだ。
自分を含めて、メンバー全員のシュートが随分よくなっている。
『人を育てる才能ってやつを持ってるのかねぇ…』
宮城は、三井についての認識を改めた。
泣き崩れてまでバスケがしたいと言ったあの姿は、今も記憶にあるのだが、普段の三井は、偉そうにふんぞり返っていて、そんなことがあったのかという様子なのだ。
しかし、バスケのことになると、ここまでと驚くほど繊細で熱心なのだ。
バスケをしているときと、普段の姿のギャップに今一つついていけない。
『ま、どっちにしても、湘北には良いことだわな』
湘北に三井が戻ってきたことで、戦力のアップは、もちろんの事、全員の実力の底上げにも貢献してもらえるのなら、あの乱闘騒ぎも、仕方ないかと思ってしまう。
宮城は、三井の後ろ姿に、見入っている流川に視線をやる。
『しかしまぁ…』
よそ見をしている流川に、とうとう赤木の鉄拳が下された。
『バスケ命の流川がこんなに気もソゾロになるとはね』
そんなに、三井が気になるのかと、宮城は感心する。
『あの人ってば年の割に可愛いとこもあるしね。人好きずきってとこかな。まぁ、オレはアヤちゃんの方がいいけどサ』
個人的には人事なので、どうでも良いのだ。
『でも、あの人に泣かれるのだけは勘弁してもらいてーよな。三井サンの調子が落ちると、こっちまでペースが狂っちまうからな。』
練習に差し支えない程度なら好きにしてもらうことに吝かではない。
流川の良識に頼るのみというところに不安が来るのだ。
『仕方ねぇよな。守れそうなのはオレだけなんだもんな』
あまり人の恋路は邪魔したくないが、それ以上に湘北バスケ部の平穏のために三井をそれとなくカバーしてやらねばと、心にとめて、三井の様子をうかがう。
三井自身は、角田のシュートフォームを丁寧に調整しているところだった。
角田はもちろんの事、周りの安田や塩崎が、三井のレクチャーを食い入るように聞いている。
それぞれが、普段の三井への認識を改めたような表情をしている。
『普段もこうなら、もっと尊敬してもらえるのになぁ』
そこが、三井の三井たる所以なのだが、普段から先輩らしくしてくれれば、こちらも持ち上げやすいのになぁと、宮城は思った。
この合宿の最初の2日間で、後輩達の三井への評価は、バブル期の発売直後のNTT株価のように一気に上昇した。
このままの高値で推移するかは、神のみぞ知ると言うところだろうか。
その日の練習が終わり、再び三井が、シュート練習を始める。
宮城が、昨日に引き続き相手をつとめて、モップ掛けが近づくまで、それは続いた。
「やっぱ、三井サンのシュートは絶品っすね」
宮城が、シュート練習が終わって、軽く汗を拭う三井を見て、ぽつりと言った。
「え?」
振り返った三井は、驚いた顔をして、次いでカァーッと真っ赤になった。
「三井サン?」
その様子が、あんまりに可愛らしくて、宮城は狼狽えた。
『三井サンのことだから、ふんぞり返って、当たり前だとか言うと思ったんだけどなぁ』
「な、なんだよ、いきなり…」
三井は、動揺を隠して、声を返す。
相変わらず、首まで赤くなっている。
「やだなぁ、照れちゃって」
「ばっ…」
「なんか、すっげーしおらしくないですか?三井サンらしくもねぇ」
「うっせーよっ!」
三井は、赤い顔のまま、ぷいっと顔を反らして寮の方にと足早に戻っていった。
『なんで、あんな事、急に言いやがんだ?』
三井は、いつも、辛口の評価しか吐かない宮城の口から、感嘆の台詞が出てきたことに狼狽えていた。
『いつもに無いこと言いやがるから、ビックリしちまったじゃないか』
歩きながら、だんだん落ち着いてきて、宮城の言葉を思い返してみる。
『でも…』
それなりのセンスを持った宮城に、自分の技術が認められたようで、何となく嬉しい。
たとえ中学時代の遺産であっても、今の彼から認められたのだから、それなりのレベルに達しているのだろう。
『明日も、がんばろう』
現金にも、やる気いっぱいになって、三井は、寮へと歩みを早めた。
「三井君」
その三井を、寮の手前で呼び止める声がある。
「?」
声の方を見ると、物陰から、常誠の主将御子柴が出てきた。
「一人?」
三井の周囲に誰もいないのを見て、確認するように問う。
「御子柴?」
「ちょっと話しあるんだけど良いかな?」
「え?、あぁ」
手招きする御子柴に三井は近づいていく。
「で、話って?」
三井は、いったいなんだろうと、不思議そうな顔をして御子柴に問いかける。
小首を傾げて、少し上目遣いに御子柴を見る三井は、昨夜の牧の忠告をすっかり忘れており、一言で言うと無防備だった。
あまりの無防備さに、御子柴は、我を忘れて詰まってしまう。
これが、三井寿か。
思い浮かぶのは、三年前の三井の姿。
きらきらと輝く瞳、勝ち気そうな表情の中に、バスケに対する情熱が溢れていた。
一目惚れだったのかもしれない。
インターハイで逢おうと、約束をした。
自分の精一杯の問いかけに、三井はにっこり笑って、頷いてくれた。
それから三年。
二度のインターハイには、三井の姿はなかった。
神奈川の代表は、二年続けて海南大付属と翔陽の二校だった。
昨年の夏、牧に三井の消息を尋ねてみた。
牧は、三井の姿を予選で見ることはなかったという。
どうやら、故障して、バスケから離れたというのだ。
ショックだった。
もう、三井の姿が見れないと言う事実に、かなりの日数をぼんやり過ごしてしまったような気がする。
気を取り直して、三年の夏を迎えた。
神奈川は、海南と、無名の湘北というチームがインターハイにやってくるらしい。
なんと、その神奈川の番狂わせチームが、自分の学校に遠征に来るという。
下調べのつもりで、牧に電話してみた。
湘北は型破りで個性的なメンバーのそろった、ラン・アンド・ガンが得意な攻撃主体のチーム。
そういう説明を受けた。
その時は、三井のことなど何も言っていなかったのだ。
牧は。
自分が、あれほど気にしていたのを知っていたはずなのに。
昨日、湘北がやってきた。
生意気そうな表情をしたメンバーが、三人程いたが、牧が言っていたほど型破りそうでもない。
どちらかというと、没個性そうな、大人しいタイプのメンバーが大半の小粒なチームに思えた。
体育館の半分を使って、練習をしている湘北の様子を見ている。
さほど驚くような練習もしていない。
三年生が、二手に分かれて、後輩の指導をしているだけだ。
『このチームが本当にあの翔陽を破ってきたのか?』
確か神奈川には、もう一校、天才という噂の仙道という選手を擁する学校があったはずだ。それらのチームと競り合ったにしては、爆発的なパワーを感じない。
首を傾げてしまった。
湘北の練習が終わり、三年の一人がシュートの個人練習を始めた。
今日、後輩にロングやミドルのシュート指導をしていた奴だ。
確か三井と言った。
自分の探している男と同じ姓だが、あの、坊ちゃん然とした少年が、成長した姿とは思えなかった。
だが、シュートフォームを見て、驚いた。
正確で、無駄のないシュートフォーム。
自分のあこがれていた、あの三井と同じフォーム。
まさかと思って、声をかけてみた。
武石中の三井かと。
彼がそうだったのだ。
武石中の三井寿。
やっと見つけた。
かなり、様子が変わっているが、彼が、自分が探してきた奴だ。
どうして牧は、教えてくれなかったのか。
電話して聞いてみた。
反対に、何故そんなに固執するのかと尋ねられた。
あこがれだったのだと答える。
随分様子が変わったろうと、笑いながら応じる牧に、不信感を抱く。
三井のことをよく知っているのか?
友達だと答える牧が、何か含んでいるように感じた。
付き合っているのかと尋ねると、何かと話題を変えようとする。
『まさか』
牧に電話をした後、少しして、三井宛の電話があったらしい。
寮監に聞いてみたら、牧とか言う男だという。
何故、三井にわざわざ電話するのか?
夕べ一晩、考えた。
それで、三井に尋ねてみようと考えたのだ。
三井は、小首を傾げて、御子柴が答えるのを待っている。
「あ、あのな、牧と、その、付き合っているのか?」
しどろもどろで、御子柴が聞いた内容に、三井は、一瞬固まってしまう。
「な、なんで、そんなこと…」
『なんだ?なんで、こいつに牧とつきあってるか聞かれるんだ?』
それでようやく、夕べ牧が電話してきたことを思い出した。
『御子柴が俺に固執しているって…』
「付き合ってるのか?」
がしっと肩を捕まえられて、、再び問われる。
三井は、いきなりの展開に、一瞬固まったが、はっと気を取り直して、身を捩って御子柴から離れる。
幸い御子柴が、本気で力を込めていなかったので、三井は、自由になれた。
『これも、最近のやばいパターンといっしょじゃねぇかよ!』
さすがに、三井も、危険を察知したようだ。
少しでも、御子柴から離れようと、じりじりと後ずさる。
「三井君…」
御子柴の目には、三井が嫌悪で自分から離れていく様に見えた。
そして、それは、牧とのつきあいを肯定しているようにも思える。
絶望的な気分になって再び三井を捕まえようとして、手を伸ばす。
「三井サン?そんな所で一体何やってんです?」
「宮城!」
三井は、見知った後輩が、やってくるのを見て、ほっと安心した。
「早く戻んないと、フロに入り損ねますゼ」
「お、おう…」
三井は、話を中断したままで立ち去ることに、少し気が引けたが、このままこの場にいても、身の危険が増すだけなので、宮城ととっとと戻ることにした。
「じ、じゃぁな、御子柴…入浴時間があっから…」
「あ、いや、時間をとらせたな…」
他人が乱入したことで、我に返った御子柴は、この場は引くことにした。
後三日はこの寮に三井は滞在するのだから、また話すチャンスもあるだろうと考えたのだ。
宮城と三井は、入浴時間に間に合わすべく、そそくさと部屋へ戻る。
「御子柴さん、なんですって?」
戻る道すがら、宮城が尋ねる。
「え?いや、別に…」
牧とつきあってるかと聞かれたなんて、この後輩に答えたくない。
そんなこと言えば、やっぱり男にもてる人は違うとか、何とか言ってからかわれるのがオチだ。
ましてや、牧のことは、ただの友達だというのに、変な勘ぐりで本命登場ですねとかいうにきまってるのだ。
見つかったのが宮城で、良かったのか悪かったのか複雑だ。
流川なら、御子柴を殴り倒すかもしれないし、それ以外の後輩達なら、遠巻きに見ているだけで助けてなどくれない。
木暮や赤木は、後々までしつこく聞くか、説教をたれるだろう。
宮城は、さっきのようにあっさり助けてくれる代わりに、弱みを握られることになるのだ。
三井は、宮城に気付かれないように溜息を吐いた。
宮城は、不審そうな顔をしたが、深く尋ねることはしなかった。
『また、男に引っかかっちゃって…。なんでこの人って、こう男にもてるんだか』
流川のガードだけでも気を使うのに、今度は向こうの主将までガード対象に入れなきゃならないのかと、宮城は心の中でうんざりした。
『バスケの為っつってもなんか、負担が多いよな』
宮城がそんなことを思っているなどと考えることもせず、三井は、部屋へと急いだ。
着替えや、入浴剤を掴んで、急いで浴場に向かう。
今日は、少し遅れたので木暮や赤木に置いて行かれてしまった。
宮城と二人で浴室にはいる。
洗い場に腰をかけて、ボディソープを手にしようとした途端その容器を奪われた。
「流川?」
「背中流すっす」
「え?」
三井は驚いて、流川を見る。
「流川君!ずるいよ。三井先輩の背中は僕が洗うって約束したのにっ!」
三井がやってくるのを待ちかまえていた桑田が抗議する。
「るせー。先輩は俺んだ…」
桑田にはやらないと、三井の躰を後ろから抱きしめて、所有を主張し出す。
「流川!何言って…?」
三井は振り返って流川に抗議しようとした。
「俺んだ」
流川は、びっしり抱きしめて、離そうとしない。
「流川、いい加減にしろよ。三井サンいやがってるぞ。お前、嫌われちゃ元も子もないんじゃないの?」
見かねて、宮城が助け船を出す。
流川は、宮城を睨み付ける。
「ほらほら、嫌われちゃうよ、流川」
宮城の言葉に、流川は、三井の顔を覗き込む。
「嫌?」
三井は、焦っていた。
ここで、ビシッといわなけりゃ、これから、ずっと流川に背中を流されるに決まっている。
「う、ま、まぁな…。あんまり、背中とか触られたくねぇ…」
しかし言葉にできたのは、かなり消極的な意志表示に過ぎなかった。
「ほらな、流川。三井サンは、困ってんだよ。その手を離して、三井サンを自由にしてやりな。緊張したままでフロ使ったって、ちっとも疲れがとれないだろ?それでなくても、三井サンってば、体力ねぇんだから、こんな事で、体調崩しちゃなんにもなんねぇだろーが」
宮城が後を引き継いで、流川を諭してくれるが、三井にして見れば、その言葉の内容は、あんまり嬉しいものではなかった。
『宮城ぃ…。言うに事欠いてなんて事を言いやがる』
心の中で罵声を浴びせるが、まずは、背中に張り付いている流川だ。
「流川…」
振り向いて、流川を見る。
「わかった。そんなにイヤなら諦める」
流川も、バスケに影響が出るようなら仕方がないと、思い至ったらしい。
三井に回した手を解いて、少し離れる。
「お、おう、悪いな…」
三井は、ほっとして、全身から力を抜いた。
流川は、三井の隣に腰を下ろしたまま、自分の髪を洗い出した。
どうやら、三井の隣の位置というものをキープして、桑田の接近を阻もうとしたらしい。
『ここにいれば、センパイ見てられるし…』
横目で、三井を見ることだって出来る、一石二鳥の位置に居座ることにした様だ。
三井は、隣の流川が、気になったが、どけろとも言えず、もそもそと躰を洗い始めた。
昨日に続き、浴室内に乙女チックなバラの香りが漂い始める。
ボディソープも、バラ園で揃えているところが、笑えるが、あまりからかって、機嫌を損ねてもと、宮城は言葉を飲み込んだ。
三井の動きを、周りが香りにつられて、無意識に注目しているため、浴室内は、水を打ったように静かになった。
三井が、何となく静かになったのに気が付いて周りを見渡す。
「お前等、何見てんだ?」
自分に何かついているのかと三井が、慌てて背中を振り返る。
「何でもありませんよ、大人しい三井サンが、珍しかっただけっす」
「んだとぉ!宮城ぃ」
「そうそう、それそれ、三井サンは、やっぱそうでなきゃ」
笑いながら宮城は、浴槽の方に逃げる。
三井は、ちっと舌打ちをして追うのを諦めた。
まだ、髪も洗っていない。
さっさと洗わないと、常誠の入浴時間になる。
三井は、シャワーのノズルをひねって、頭から湯を被った。
黙々と洗髪を終えて、躰に湯をかけ、やっと浴槽に躰をつける。
ふぅと、一息ついて躰を伸ばす。
三井は、長風呂で、ゆったりと湯に浸かるのが好きだが、この湯は少し熱い。
『もう少しぬるめの湯だったら、もっとのんびり浸かってられるのにな…』
あんまり長くはいるとのぼせちまうと、渋々切り上げて、浴室を出る。
その間流川が、ずっと周りに張り付いていたのが、気になるが、触ったり抱きついたりしないから、まぁ、仕方ないかと黙っていた。
入浴後、食事をとって、再び自由時間になる。
三井は、昨日の雪辱戦のために、隣の部屋に向かおうと部屋を出る。
その日三井は、それなりについていて、一度も大貧民に落ちることが無かった。
三井も、相手をした二年生達も安心して、たいそう和やかに消灯を迎えた。
翌日からは、午前中は各校独自の練習、午後からは、練習試合という日程になっていた。
湘北高校は、リバウンド王の桜木がいない分、高さにハンデを負うが、昨年度ベスト4の常誠高校にほぼ互角の戦いをして、通算1勝1敗1分けの成績を修めた。
宮城が心配した、常誠の主将も、試合のことで、かなり気になることがあったのか(確かに無名のチームに、この成績では不安も残るだろう)、あれから三井に言い寄ることもなく、流川も浴室で、あれ以来隣の位置をキープするだけで、三井に危害を加えなかったため、波風の立たない日々となった。
常誠での合宿を終えて、湘北高校のバスケ部一行は、監督と桜木の待つ学校へと戻ってきた。
久しぶりに、安西監督の顔を見ることが出来て、三井はご機嫌だった。
『安西先生、お元気そうでよかった。』
「ミッチー、あのな…」
肩に手を回して、桜木は、三井にミドルシュートが入るようになったことを教えようとする。
「なんだ桜木。先生にご迷惑かけなかっただろうな?」
「この天才に向かって、何を言うんだミッチー」
それでシュートがと続けようとした桜木に、流川の蹴りが入った。
「気安くセンパイに触るんじゃねぇ」
「ふぬーっ!ルカワっ!何しやがる」
一週間ぶりの乱闘が始まりそうになった時、赤木の拳骨が二人の頭に落とされた。
「帰った途端に何をしとるかーっ」
くどくどと説教の始まった、その場を離れて、三井は監督に近づく。
「安西先生」
「おや、三井君。どうでした?常誠高校への遠征は?」
「は、はい!」
試合の内容などを、嬉しそうに三井は報告する。
「先生のお言いつけどおりに、一、二年のシュートを見てみましたので、後で先生も、チェックお願いします」
赤木の説教からやっと解放された桜木と流川が見たのは、にこにこと微笑む監督に、これ以上ないというくらい可愛く笑いながら話しかけている三井の姿だった。
