空の色、風の声
(第1部・その1/36篇)
◇◇◇ 目次 ◇◇◇
意識と心/これまで/道化師前口上
心の一部(1)/疑問と疑問符/ゆがみ/でも楽じゃない/
小さな自己愛/痛み/約束
勝者には祝福を/聞きたくない/ためいき
年中無休/検問/育たぬ現実/喪失/だから結論はいつも同じ/
笑顔でいるしかない/ひとりになれば寂しい
「自我」自賛/仮面の告白/破滅型/火種/コンプレックス/
きりぎりすの詩(1)/腰を下ろして/きりぎりすの詩(2)
確かに幕は/ひとりごと/心の一部(2)/亡霊/
めまい/自戒の詩/壁/穴の中
意識と心


空の広さ、深さは
いったいどれくらい?
空に浮かぶ雲
それらがどうしてそうあるのか?
それらがどう姿を変えるのか?
それらがどこから来て
どこへと向かうのか?
これまで


求め続けても
待ち続けても
何一つとして得られなかった
残るのはいつも自分自身

求め続けても
待ち続けても
何一つとして得られない
あるのはいつも自分自身

幸せや充足を
求め続けても
なぜかそれらは彼方にあって
そうして今の私がここにいる
道化師前口上


自己陶酔?
自己偏愛?
何とでも言え!
どう言われようとも
ここでは俺が主役だ
俺が「人生」というこの劇<ドラマ>の主人公だ

そうして、お前らは
そんな俺の「人生」の観客だ
だが、お前らは
「世界」という広大な舞台の上で
単に観客を演じているにすぎない
この舞台の上から見れば
それぞれの舞台で主役をはれぬ者など
観客という闇にまぎれた仮面の存在でしかない
人生の傍観者
それがお前らに与えられた役だ

笑え、笑うがいい
笑われるほどに
道化はその力を高めゆく
笑え、笑うがいい
所詮、嘲笑は自身に向けた刃だ

さあ、幕開けだ
心の一部


しばらく眠りについていた心の一部
あなたはそれを目覚めさせてしまった
目覚めたその心の一部は
すぐさまあなたのもとへと行ってしまった

そうして私には大部分の心が残された

残された大部分の心は
欠けてしまった己れ自身を取り戻すことを求め
その大部分の心のほとんども
心の一部の後を追って
あなたのもとへと行ってしまった

今、ここに残っているのは
ついて行くことのできなかった心の暗がり

今の私には暗い影だけがあるだけだ
希望とか、喜びとかいうものは
もう、あなたなしでは感じられない
疑問と疑問符


やっぱり駄目なのかな?
そんなあきらめの気持ち
求めるものが得られなかった
そういう事実

不安には過去という強い味方がいる
だが、期待には
援軍となるはずの
「信じる」という気持ちが
過去の事実を突破できずに
不安の中で疑問符として留まったままだ
ゆがみ


ねえ、わかる?

わかるわけないか
僕がこんなにも
あなたのことを思っているなんて
わかるわけないよね

どうして僕は、好きな人ができると
いつも
こんなふうに
グズグズになってしまうのだろう
自分の思いを告げられない
告げたいけれど告げられない
そうやって
グズグズ思いをためこんで
ますますどうにもならなくなってゆく
でも楽じゃない


ねえ
僕が森高千里のCDを買ったわけ、わかる?
森高があなたに似ているから
その声があなたの声に似ているから
そして、その言葉を
あなたからのものと思っていたいから
それで、僕は森高千里のCDを聞いているんだ

情けない?
気持ち悪い?
でも、まあしょうがない
重い気持ちはゆがみもします
多少の逃げ場は必要なんです
小さな自己愛


「あなたが好きだ」
その一言を素直に言えたなら

どうして僕は、いつもこうなんだろう
なんだかんだ言っても
結局、傷つくことを怖れている
いつも、自分に言い訳をして
自分に嘘ついて
そうして結果を遠ざけようとする
それでいいのか
そんな声も聞こえてくる
でも傷つきたくない

「あなたが好きだ」
その一言を素直に、気軽く言えたなら
痛み


夢で見たあなたの顔は悲しげだった
「どうして言ってくれないの」
そう悲しげに私のことを見ていた
悲しげに、寂しそうに
私の目を見つめていた
「どうして好きと言ってくれないの」と

もちろんそれが現実のあなたの思いだとは
こんな馬鹿な私でも
(思いたいけど)
思い込みはしないけれど
私の中のあなたは
憶病者の私のことを責めている
悲しげに寂しそうな視線でもって
約束


「あなたが好きです」
その一言を告げられない私に
こんなことを言う資格はないけれど
それでも今
あなたにお願いしているのです
始まりをください、と

嘘っぱちの覚悟なんて
決めたくもありません
私は始まりが欲しいのです

「......」

そうでしたね
明日、はっきり言います
勝者には祝福を


結局、俺には何にもなしか
何もねぇ
この手には何も持たせてもらえない
なぁーんもねぇ
何度見たって
手にはシワ
手にはシワ
わけのわからん運命のこんぐらがった糸
聞きたくない


........
 ........
  ........

雨が降って
雨が降って
それでいったいどうなるというんだ

雨降って地固まる?
もう固まっている、アスファルトの地面は
青黒く固まっているんだ!
ためいき


「あなたが好きです」
そう告げたところで結局
結果はこれだ
「ごめんなさい----」

ああ、
 そうですか
   そうですか
そうなんですか

またか....
どうしてなんでしょうね
こんなんだからいけないのかな?
そうは言っても
すぐに自分を変えられるほど器用じゃない
変えようと思ったところで
「ごめんなさい」
これじゃあどうにもしようがない
年中無休


そりゃ、たまには休みたいね
心も、体も
ゆっくりと休ませたいね
でも、休めない
どうしてなんだろう
体は休ませることができても
心を休ませることができない
ぼんやりと
ただ時を過ごしていたいのに
心がそれを許そうとしない
一番疲れているはずの心が
休息の時を持とうとしない
求めているのに拒んでいる
検問


現実への門の前に立つと
そこにいる門番は言う
「お前の思いを捨てなければここは通せない」と
私は答える
「心を捨てることはできない」と
「心を捨てろと言っているのではない
今の現実にそぐわぬ思いを捨てろと言うのだ」
そう言われて
一応それらを捨ててみようとするのだが
「無理です」
「ならば、お前はそのまま夢の世界にいろ
ここを通すわけにはいかない」
「お願いです、通してください」
門番は姿を消し
固く閉ざされたままの門
育たぬ現実


夢はここに
だが希望は何処に?

現実を前にして、またも私は敗れた
現実に、自分自身に負けた
現実の壁に映ったものは
結局、自分自身の弱さ
その現実の壁も
つまりは、自身の心の壁
信じる力が欠けている私には希望がない
それでこんな結果しか訪れない
そういうこと?

夢はここに
だが希望は何処に?
夢はここにあるというのに
喪失


なぁーんも見えない
なぁーんも見えない
真っ暗だ
あの輝いているはずだった未来がこれ?
ははっ、真っ暗だ

いつ果てるともわからぬ闇の中
さて僕はどこに向かおう
夢に描いていた未来の姿が
こんな闇だなんて
おかしいな?
僕の未来は輝いているはずだったのに
おかしいな?
もしかしたらここは輝いているのかもしれない
あまりに輝きが強くて、まぶしすぎて
それで真っ暗に見えているのかもしれない

----そんなことはない
やっぱり真っ暗
闇は闇のままだ
どうしてこんな未来になってしまったのだろう
だから結論はいつも同じ


もういいか
もうやめようか
自分の心に嘘をついて
そうしてこれから生きてゆこうか

どうして私は
こんなにもわがままで甘えん坊なのだろう
あまりにわがままで
あまりに甘えん坊なものだから
自分の心を欺けない
社会の仲間入りをするには
ある程度の我慢が必要なのはわかっているけど
私はあまりにわがままで
甘えん坊だから
その「ある程度」が我慢できない

やっているのは我慢をする振り
でも、ごまかせないものは結局戻ってくる
そのツケを払うのは私だ
仲間入りをしたはずの社会は何もしてくれない
笑顔でいるしかない


ちょっと今日だけは泣いてもいいかな
弱い自分を表に出してもいいだろう
疲れているのかもしれない
甘えているだけなのかもしれない
でも、今夜は
弱いままの自分でいたいんだ

何を話したらいいのかな?
何か泣き言を言おうとしたんだけど
何を言っても自分を傷つけるような気がして
泣き言を言おうにも
うっかりそれを口に出すこともできやしない

社会が、現実が
思い描いていた世界と違うから
だから僕はこんなにも苦しんでいる
そう言ってみても
そう言いきれるだけのことをしてきたのか
そんな疑問が打ち消せない

外に向けたはずの言葉が
自分に対して跳ね返ってきてしまう

これじゃ、泣きたくても泣けないね
ひとりになれば寂しい


誰もわかってくれない
そう言ったところで
私も他人のことをわかっていない
そもそも、わかろうとさえしていないんだ
私が理解したいのはまず自分自身
それなのに他人にわかってもらいたいなんて
ムシがよすぎるよね
おあいこだよね
おあいこだよね
寂しいのも仕方ないよね
「自我」自賛


駄目だ、駄目だ、と言いながら
なんとかここまでやってきた
たいしたもんだよ
我ながら感心する
いつ壊れてもおかしくなかったのに
駄目だと言いながらも
本当によくやってきたよ

いや、もしかしたら
もうすでに駄目になっているのかもしれない
あまりに駄目になりすぎて
そんなことさえも
わからなくなってしまっているのかも....

それでも私はここにいる
壊れているにしても
かけらは今も生きている
仮面の告白


私はまだ
いや、私はやはり
自分の人生を
一編のドラマに仕立てあげたいと思っている

見せたい
見られたい
現実という舞台の上で開かれる私の人生を

われんばかりの拍手と喝采
尽きることのないカーテンコール

充実と高揚という快感
それが欲しいんだ

見せたい
見られたい
見せるに値するものにこの人生を深めたい
破滅型


ギャンブル好きは
私の不信感の現われ?
それとも憶病な性格のせい?
自分の人生を
何かに対して積極的に賭ける
そのふんぎりがつけられず
その代償として
小さなギャンブルを選びとっている?
火種


区切りのときに訪れる
「終わった」
と、いう気持ちと同時に感じるあの不快感
「終わった」
その気持ちの下で
ぐすぐす、むずがるあの不快感

やはり私は
自らを花火のようにと望んでいる
華麗に大きく花開き
エナジーを使い尽くして闇に還る
そんなことを望んでいる
コンプレクッス


比較か
また比較をしてしまう
「あいつらより、俺の方がマシだ」
つい、そう思ってしまう
確かにそう感じる
だからといって何になるというんだ
他者と自分とを比較したって
所詮は小さな自己満が得られるだけじゃないか
小さな自己満が得られたって
それはそれで気持ちいいかもしれないけど
てめぇの小さな世界に閉じこもっちまうだけじゃないか
ごめんだ
そんなものはもういいんだ
俺が欲しいのは大きな自己満足なんだ
「あっ、これでいいんだ」
そう言って、ほっと一息つけるような
そんな満足が欲しいんだ
きりぎりすの詩


あーあ、詩なんて知らなければよかった
自分の心なんてわからなければよかった

悔やんでみても始まらないけれど
それでも時にはそう思う
何でこんな風になってしまったのだろう
十で神童、十五で才子、二十歳<ハタチ>過ぎれば愚か者
詩人なんてそんなものなのかもしれない

それとも私だけがそうなのだろうか
二十歳を過ぎても
自分を扱いかね
社会に道を見出せず
一銭にもならない詩を歌う愚か者

詩なんて知らなければよかった
知らなきゃ、も少しマシな人生歩めたかも

悔やんでいても始まらない
そうであるはずなのに
悔やむ気持ちが言葉になってしまう
腰を下ろして


何でこんな心を持っていなければならないのだろう
そんなことを考えたって仕方がないのだけれど
私にこの心は重すぎる
生まれつき?
それとも、自分のせい?

こんなにも重い心
せめて人並みの重さなら

でも、人並みの重さっていったいどれくらい?
自分の心の重さはわかっても
他人の心の重さなんてわからない

みんな同じくらい重い心を抱えているのかな?
もっと重い心を抱えている人もいるのだろう

----慰めにもならないな
私は自分の心の重さに耐えられなくなっているんだ
必要なのは他人との比較じゃない
自分との調和が欲しいんだ

それにしても、
やっぱり重いよ
いつまでこうなんだろう
本当に、いつになったら落ち着けるのだろう
きりぎりすの詩


こうやって歌っていると
すこーしづつ、心が軽くなってゆく
どうしてかな?

僕の心は目立ちたがり屋
自己主張が強すぎる
どうしようもないね

今はもう
こうして歌う以外に
心を軽くする術がない

ただ生きていっても
心は重くなるだけ

こうやって心を言葉に
詩を歌って
そうして心を軽くして
歌って歌って
どんどん歌って
いつかふわりと死にたいな
確かに幕は


確かに幕は下ろしたはずなのに
いまだに私は舞台の上
誰も見てくれる人のいない
真っ暗な舞台の上

終わったんだ
もう彼女はここにはいない
そう、どこか別なところで
別な誰かとよろしくやっているさ

わかってはいても
自分の思いが打ち消せない
わかるほどに
思いがより確かになってゆく

そうやって
いまだに私はここにいる
誰も見る人のいない舞台の上
現実と自分の心
どちらからもせめられ
何もできず、うずくまっている
ひとりごと


寂しいだけなんだろうな
ただ寂しいだけなんだろうな
でも、
寂しいからあの人?
あの人がいないから寂しい?

どっちもどっちだ
わかったところでどうしようもない
始まりの扉は閉じたまま
終わりだけが次の道となる今
答えなど見たくもない
心の一部


行ってしまった心の一部よ
帰ってきておくれ、お願いだ
お前が行ってしまってから
私の心は欠けたままだ
その欠けたところが痛み
今はその痛みがつらいんだ

行ってしまった心の一部よ
お前はまだあの人のもとにいるのか
帰ってきておくれ
お前がどんなにあの人の側にいても
私はそうすることができないのだから
早く帰ってきておくれ
待っているのだから
私は戻ってきた大部分の心とともに
行ったままのお前を待ち続けているのだから
亡霊


振り払っても
振り払っても
ねっとりと
いやらしく
まとわりついてくる影

もう、それは影
忘れられれば
あきらめられれば
こんなふうにはならずにすむのに
「好き」
その思いが希望を生み出せない今
あなたの姿は影となり
この身にまとわりついてくる
めまい


あーあ
ひとりぽっちは寂しいな
こんな雨の夜は一人でいるのが本当につらい
僕には好きな人がいるのだけど
その人には他に好きな人がいて
行き場を失った思いを抱えているのは本当につらい

こんな雨の夜は
自分の分身を呼び出して
眠くなるまでお話しあい
僕の詩の中にはもうひとりの自分
そうしていれば寂しさも薄れるけれど
慰めるだけなら、ただのマスタベーション
自戒の詩


プラモデルを買ってきたら
すぐにそれを作り始める
できるだけ早く作ろうとする
それで出来たものと言えば
見栄えの悪いできそこない
それが何とも腹立たしく
地たんだ踏まず、ぶち壊す

プラモデルなら
まだそれで済むのだけど
もしこれが
自分の思いだったら?心だったら?

大切なものなのに
じっくりと育むことができない
あせって結果を求めて
訪れる現実は
   ----できそこない



「愛している」
そうつぶやいてみたところで
私の言葉には向かう先がない
この言葉の重さ、確かさは
この現実の重さ、確かさだ

「愛している」
その言葉が向かう先には
すでに同じ言葉が
別な奴との間で取り交わされていた

入れない
壊せない
私の求めるものがそこにある
でも、それは私を外した二人のもの
穴の中


いったい何を
誰を、求めているのだろうか?
愛する人
愛してくれる人
わかっているけど現実は----

寂しさにさいなまされて
結果は馬鹿げたマスタベーション

どうしたらいいのだろう?
どうすればいいのだろう?
答えを探すふりをするだけ
意味のない問いかけ
答えのない問いかけ
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