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カルテ、カルタ、カード

日本人が「カルテ」と聞けば、ほぼ間違いなく“医者が患者の病状などを書き込む紙”のことを思い浮かべるだろう。手元の国語辞典にも“診療を記録したカード”とある。

この「カルテ」という言葉はドイツ語から来た言葉である。ところが、ドイツ語でカルテ(Karte)と言うと、何も“診療を記録したカード”を意味するわけではなく、カード全般を意味するのである。何しろ、ドイツ語のカルテ(Karte)は英語のカード(card)に当たる単語なのである。手持ちのドイツ語の辞書を見ても、「カード、厚紙」とあった。その他「チケット、地図、トランプ」なども表すようである。逆に“診療の・・・”という類の記述は全く無かった。

では、なぜ日本ではカルテが“診療を記録するカード”の意味で使われるのか。それは、日本は医学に関することを主にドイツから学んだからだ、と聞いたことがある。ドイツ人にすれば、“診療の記録をカード(=カルテ)に書き込んだ”だけなのだが、医学を学ぶ日本人は、“診療の記録を書き込んだものをカルテと呼ぶ”と思ったのではないだろうか。(これは全くの推測だが。)

もうひとつ、「カルタ」についても同じような話を聞いたことがある。「カルタ」と聞けば、「いろはがるた」に代表される“読み上げてカードを取る遊び”を思い出す。この「カルタ」はもとはポルトガル語で、これもまた英語のカードに当たる単語らしい。残念ながらポルトガル語の辞書は持っていないので調べられなかったが、国語辞典には(carta)という綴りが載っていた。「カルタ」は、おそらく鉄砲伝来の後、南蛮貿易の頃に伝わった言葉であろう。国語辞典では、カルテはカタカナで載っていたのに対し、かるたはひらがなであった。

さて、ここまでは星の話とは関係がない。というより、この話題はもともと星と関連しているとは思っていなかった。ところが、ドイツ語の辞書でカルテを調べてみると、“地図、海図、星座図”と書かれているのに目が留まった。そこでドイツ語の「星」である「Stern(シュテルン)」を見てみると、「Sternkarte(シュテルンカルテ)」で「星図」「星座表」を意味すると載っていた。試しにインターネットで「Sternkarte」を検索をしてみた。すると、「Sky Atlas 2000」や「ウラノメトリア」といった天文を趣味とする人ならよく耳にする星図や、星座早見盤などが載っているドイツ語のページが見つかった。「星のカルテ=星図」と言ってもいいかもしれない。ということで、星のネタとして載せた。なお、「Sternkarte」は女性名詞であり、複数形では「Sternkarten」となる。

2003.5.20