ルイス島へ
翌朝港へ。係員の指示に従って車を列の後ろに停める。チケットを買っていないと言うと、あの建物でかってきな、と言われる。ところがここでもいつもの如くハプニング。
昨日電話で予約したはずが、コンピュータがダウンして全部消えてしまっているとのこと。あと10分ほどで出港してしまうはずなので、ちょっと慌てる私に、まあまあ、という感じでゆっくり、落ち着いて往復のチケットを発行してくれた。
出港
ゆったりと船は桟橋を離れていよいよ出港。今回は2時間ほどの船旅。が、まだ朝の9時半、さすがにビールは止めておく。天気は曇りがちだが時々太陽も顔を出す。風もそれほどは強くない。
どの辺りにフローラとチャールズは上陸したのだろう、そんな事を考えながら次第に離れていくスカイ島を望む。
沖に出るとさすがに風が強くなってくる。雨もぱらついたりする。こんな時は今回の新兵器デジカメの防水パックが威力を発揮する。かさばるのが難点だが、水しぶきを気にせず使うことができる。
ユイグの岬を後にする。まだ朝なので、西へ向かう船からは太陽の光に輝く海の先にスカイ島が見える。
ここはスコットランドである。
船首の旗もスコットランド国旗である。
ルイス島(Isle of Lewis)
島影が見えてくる。第一印象は黒い。そして不気味である。というのも黒い大地に山がそびえているが、上の方は霧に包まれていて見えない。ものすごい存在感と威圧感で迫ってくる。
ところが、近づくに連れ威圧感はなくなり、久々の大地が迎えてくれる、という感覚が強くなってくる。
島の湾に入ると難破船が目に入る。なんとなく「最果ての地に来た」、そんな気がしたが、目指した本当の「世界の果て」はここからさらに西の大西洋上である。
ところどころに人家が見えるが、何で生業を立てているのだろうか。そんな事を考えているうちにハリス島(Isle of Harris)のターバート(Tarbert)の港に入港した。ルイス島ではないのか、と思われるかもしれないが、この島は北と南では呼び名が違う。ちゃんと地続きなのだが、多分昔の領主の問題かもしれない。現在の住居表示も二つの島の名がある。
上陸 北を目指す
ターバートに上陸するものの、町と言うよりかは集落と言った方がいいかもしれない。まずは、オバンで紹介されたツーリストインフォメーションのあるルイス島の中心地ストーナウェイ(Stornoway)を目指し、北上する。
島の景色は荒々しいが妙に落ち着く。海を見渡せる高台にベンチが一つあった。
途中道をそれ、アミュインステッド城(Amhuinnsuid)を目指す。道は細く、左に右に曲がり、運転を誤ると大西洋に落ちてしまいそうな場所もある。
The long and winding roadとはこういう道なのか。
ビートルズの旋律が聞こえてくる。
「イギリスの旅」(太陽出版:宮崎昭威氏著)によると、ここはピーターパンの作家J.M.バリが滞在した城なのだそうだが、残念ながらプライベートで中は見ることはできない。しかし、興味深いのは城の庭を通っているのが国道なのである。
そのため城の脇まで行って写真を撮る事は自由である。庭番に確認したから間違いない。
海に向かって小さな大砲が置かれているのが、おとぎ話のようなかわいさであった。
ストーナウェイ(Stornoway)
島の経済、文化の中心である。突然都会に辿り着いた、そんな感じを受けた。商店が建ち並びホテルもパブもある。
ここにも城があり、その周りだけはこの島の他の場所と違い、緑が生い茂っていた。城は大学の一部になっていて、こちらも残念ながら建物は閉鎖され中は見ることはできなかった。
ツーリストインフォメーションを尋ねるが、やはり「セントキルダ島」行きのツアーは直接船会社に聞くしかないし、4~5日はかかるとのこと。が、パンフレットや書籍がたくさんあり、様々な情報を手に入れることはできた。
心のどこかでは、まだセントキルダに行けるチャンスがあるのでは、と思っていたのが、ここですっきり諦めがついた。
最北端を目指す
町をでると、一面ピートの荒れ地が広がっていた。ここが島であることを忘れてしまうくらい、どこまでも広がる荒れ地だった。時折通り過ぎる国道を走る車の音意外何も聞こえなかった。
いつもの癖で、端が見たくなる。島の最北端にPort Nisという集落が地図にある。経験からいって、海岸沿には眺めのよい、魚の美味しいホテルがある。しかし、ここは世界の果てに近い島である。着いたはいいいが、何もない。いや、きれいな砂浜、港、澄んだ海、入り組んだ海岸線、ホテル以外は想像通りにあった。
やむなく、ストーナウェイに戻ることにする。もちろん、道の途中で遺跡の表示を見つけるたびに見学しながらであるが。
左は海の近くの牧草地に立つトゥルイセイルストーンと呼ばれるスタンディングストーン。
右は聖モルアグ教会。道路から離れた牧草地の中に建っていた。
ストーナウェイの夜
うろうろしながら戻ったため、目抜き通りのホテルはどこも満室。街のはずれのあまり泊りたくない、近代的な大きなホテルは空いていた。が、受付は非常に暖かい。部屋代もおまけしてもらい、すぐに上機嫌。
夕食は向かいのゲストハウスでとるが、これが大当たり。魚料理だったら、ここを最後の晩餐にしてもいいかな、とも思うほど。シェフというか料理人に挨拶して店を出る。
シーフードプレートはちょっと高かったが、ソースがとても美味で、しかも鮭や白身魚、海老、貝が山盛り。
デザートのレモンスポンジも味、盛り付け共に素晴らしかった。
街と言っても本当に小さく静か。人影もまばらで、最近イギリス各地で見かけるゲームセンターもない。港までいくと、鼻息の音がする。目を凝らすとアザラシが泳いでいる。
波形の先がアザラシ。
パブに入る。だんだん人が集まってくるが、常連達のみといった感じ。ギネスを1杯だけ飲んでホテルに帰る。
遺跡巡りへ