8月13日(日)
朝は7時には起きて、7時半からすぐに食事をとる。これから釣りに行くと思われる男性4人組みがすでにいた。キッパーがあるので、それを頼む。久しぶりのキッパーは、白飯が欲しくなるおいしさ。
グレープフルーツを食べて、キッパーを食べる。
朝の街を歩く。日曜日の朝らしく、静かでまだ眠っているようだった。
ホテルの椅子の上でも、猫はまだ夢の中。
南岸の島へ
街を抜けて、イタリアンチャペルがある、南の島へ向かう。途中は橋ではなく、コーズウェイという埋め立てをした道でつながっている。道の真中には下に穴があり、潮の流れを妨げないようにはなっているが、橋に比べると予算を抑える為かな、と思う。
そのコーズウェイの脇に、難破船がある。不思議に思うと案内板が出ていて、チャーチルバリアーと表示されている。この難破船は、第二次世界大戦時にチャーチルが、ドイツの潜水艦の通り道をふさぐ為に島の間に沈めたものであった。
牧草地の向こうに隣の島へ続くコーズウェイとチャーチルバリアーの沈められた船
イタリアンチャペル
辿り着いたイタリアンチャペルは、まだ閉まっていた。教会は質素な倉庫の様な造りであるが、正面だけは、奇麗な門構えを見せている。
これは、第二次世界大戦時に西アフリカ戦線で捕虜になったイタリア人将校たちが、資材不足の中造ったものだそうだ。
先程のバリアーといい、こんな北の果ての島にまで戦争の跡は未だにあるのだ、と8月15日を前に考えさせられた。
正面からみると奇麗な教会だが、側面は倉庫の様な造り。
再びカークウォールに戻り、先を目指すが、高台から見渡した海には、霧というか雲が低い高さに張り付き、その手前にあるタンカーが空に浮かんでいるような、思わず声を上げてしまう景色が目に飛び込んでくる。
自然の中に人工物を置いた方が、その自然の姿が際立つ、そんな感覚を再び覚えた。
水平線上に雲が立ち込めて不思議な光景をつくっている。
水平線に立ち込める雲とその手前に停泊するタンカー。
マースハウ
街を抜け、マースハウという昔の王の墓へ。こんもりした盛り土が遠くからも見渡せる。
ここも世界遺産に登録されており、また墓室の内部はガイドツアーで見る事が出来る。
興味深いのは、中に書かれていた北欧のピクト文化の文字。アイルランドのニューグレンジのように奇麗に石が組まれていた。
その後、やはり世界遺産のストーンサークルへ。大きなサークルが一つ、大きな石が3本立っているのが一つ、そして道の傍らに一つポツリと立っている石がある。ここで、今回の旅で唯一日本人旅行者に出会う。イギリスにて企画されたツアーに参加、飛行機で渡るはずが、先週は天候が悪く、結局小さなボートで渡ってきたとの事であった。
現地ガイドもいて、大きなストーンサークルを3回時計周りに廻ると、女性は子供が出来るとの言い伝えがある、というおもしろい話を聞く事が出来たり、旅先での出会いは本当に楽しい。
歩いて移動できる距離に大きな墓と、ストーンサークル二つと一つのスタンディングストーン。
道の傍らにぽつんと立っていた左の石が、一番印象に残った。
一体、どれくらいの時間、何を思って立っていたのだろうか。
フェリーの時間も近づいてきたので、別れの挨拶をして港へ向かう。
シェトランドへ向け出航
フェリーは既に港へ到着していた。今回のフェリーは外洋を航海する為か、車の乗り込み口は後部にしかなく、前向きで進入して、船内でバックしなければならない。。前進で乗ってそのまま前進で降りるスタイルに慣れていた私にとっては、ちょっと不慣れだったが、周りもみな不慣れで、ゆっくり確実に載せる事が出来た。
ここから約8時間の船旅である。昼間の航海なので部屋を取らなかったが、この船は夜も航海するので、船室が多くあり、またフルコースの食べられる食堂の他に、カフェテリア、もちろんパブもあって、なかなか充実している。
気軽に食べたかったので、カフェテリアでまだお腹もそれほど空いていなかったので、スープとパンだけにした。
が、ここでハプニングが。コンタクトレンズが飛んでしまう。どこを捜しても見つからず、まさか、と思いつつ、慎重にスープを飲む。そのうちに口の中に異物が。無事、スープ塗れのレンズを発見した。
天気が良く、気持ちがいいので外のデッキでひなたぼっこをしながら過ごす。
船員らしき若者が、下のデッキでバグパイプの練習をしている。うまくはないが、船の上げる波しぶきの音と、バグパイプの響きは、不思議なハーモニーを醸し出していた。
パブでいっぱいやると、眠気が襲ってきて、客室へ。
シェトランド諸島
静かなキャビンで、うとうとしていると、シェトランドの南端のサンバー岬のアナウンス。さっそくデッキに出ると、岬は見えるがその後ろの山には雲が山を駆け下りるのでは、という勢いでかかっている。怖さと威厳さを感じた。
岬の先端には灯台。
既に夜8時前。。夏の終わりだが、まだ日暮れまでは時間がある。
シェトランド諸島は南北に長い。ラーウィックの港に到着するまでさらに1時間以上。またウトウト。結局、見知らぬおばさんに、「着きましたよ」、と起こされるまで寝込んでしまった。
上陸
ラーウィックは大きな街。既に日は暮れていて、やむなく目に付いた港の前の高そうなホテルへ。三ツ星ホテルだったが、この旅唯一の近代的ホテル。夜も更けたし、疲れてきたので今夜のお宿はここに決定。こういう所が20代のときと違うところか。
ラーウィックの中心部すぐ前の旧港。近隣の島へ行く小さなフェリーはここから出る。 細く曲がりくねった石畳のメインストリート。
しかし、宿を確定したからには街へ。ホテルは中心部から少し離れているので車で向かう。桟橋前の大きな駐車場に車を停める。街の中心はオークニーのカークウォールと同じように細く曲がった石畳。なかなかのショッピング街だが、当然すべて閉まっている。島の夜は早い。
船の中で軽目の夕食を食べてはいたが、小腹が空いていたのか、フィッシュアンドチップスのいい匂いに反応する。ポテトは食べられそうにないので、フィッシュだけ貰うがこれがものすごく美味しかった。
普通の店が閉まっている中で唯一の例外はパブ。何件かのパブを覗き込んで、港に近いパブに足を踏み入れる。この瞬間は結構ドキドキして楽しい。
若者が多いパブだった。いつものギネスを一杯頼んで、店の皆に挨拶する。若者グループに一人、かわいい女の子がいた。
そのうちに、そのグループはビリヤードをやりに近くに移動してきた。来なくてもよい(?)男の方が脇にきて自己紹介を始める。しかし、ほろ酔いの上機嫌なので、まあ、いろいろと話をするのは楽しいものである。
が、この若者、手元を狂わせてビールをこぼしてしまう。店の従業員やグループの連中、かわいいあの子もやってくる。大して濡れはしなかったが、かなり悪がっていた。まあ、それより、かわいいあの子と会話が出来た方が、断然良かったのだが。
翌日は最北端の島まで向かおうと考えていたので、ビールはそこそこに、家路に就く事にした。
8月14日へ