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British Rock or Psyche Pop etc...
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COMPLETE ALBUM COMPLETE ALBUM / FACTORY + FIVE DAY RAIN

 1968〜1969年にかけて2枚のシングルを発表したFACTORYの全音源と、そのFACTORYを手がけたプロデューサーチームが結成したFIVE DAY RAINの、1970年に制作され結局未発表に終わったアルバムを収めたCD。途中に、FACTORYに曲を提供し前述のプロデューサーチームともスタジオの同僚だったというJOHN PANTRYのデモトラックも収録。

 日本のエヴァンジェルという耳慣れないレコード会社から発売されてます。アーティストには関係ないけれど、違う材質を組み合わせていて、金のかかっていそうなジャケットです。

 FACTORYの代表曲「PATH THROUGH THE FOREST」はギターのフィードバック、エフェクトかかったボーカルが実にイイ雰囲気。演奏も勢いが感じられるし、インパクト十分。これ1曲で彼らが伝説的サイケグループとして、後世のマニアに愛好されるようになったというのも納得。別バージョンも収録されてますが、さらに混沌としている。「2ND GENERATION WOMAN」は音が悪いけど、テープ逆回転のところがカッコ良い。2枚目のシングル「TRY A LITTLE SUNSHINE」はJOHN PANTRY提供のポップな楽曲ですが、FACTORY自身の演奏はフリーキーで妙にアンマッチ。

 JOHN PANTRYのデモが1曲だけ入ってますが、限定版LPだけ出た彼の作品集「THE UPSIDE DOWN WORLD OF JOHN PANTRY」をどこかでCD化してほしいとこですね。

 FIVE DAY RAINは1970年制作ということもあってか、サイケというよりはポップでエッジのきいた楽曲が多い。ボーカルも結構爽やかな声質。その中では「GOOD YEAR」が個人的にはベスト。「ROUGH CUT MARMALADE」のみ11分にわたるインプロビゼーションで異色。(2001/04/29)



MUSIC IN A DOLL'S HOUSE MUSIC IN A DOLL'S HOUSE / FAMILY

 英国B級バンドとして著名な彼等のファーストで1968年発表。セカンド以降は早い時期からCD化されてましたが、サイケの佳作と言われる本作はセカンドとの2IN1を観たことがあるぐらいで単独ではリイシューされてなかったようですが、ようやく2003年にCD化されました。

 変に個性がありすぎるし、アンダーグラウンド臭くもあり、カテゴライズしにくいグループ。後にJOHN WETTONなぞが加入するものだからプログレ的に扱われる事もあるが、ROGER CHAPMANのヴィブラート声と泥臭い演奏が本来の彼等の持ち味で、このファーストからして既に個性が出ている。さらに本作はDAVE MASONプロデュースでJIMMY MILLERも関わったと言うからTRAFFICのファーストみたいなところも感じられる。

 1曲目「THE CHASE」からして、オペラチックなコーラス、端正なホーン、曲の最後はピッチを上げたりして、サイケ・ポップな出だし。その後もボーカルにフェイザーかけたり、曲間がなかったり、間奏曲が多かったり、アルバム最後には英国歌が冗談のように出てくるところも、サイケなコンセプト。

 もっとも、その他の収録曲はサイケ・ポップというにはブルージー。だがどれもメロディアスなとこもある。1曲を除き全て彼等のオリジナル曲であり、作曲能力も高め。特にバラードではROGERの声質もあるが、叙情さが際だっている。さらにクレジットはないがライナーによるとアレンジはMIKE BATTで、確かにハイトーンなコーラスやらヴァイオリンやらメロトロンやらが効果的で聴きやすい。(2003/11/09)



MAGIC FOREST THE ANTHOLOGY MAGIC FOREST THE ANTHOLOGY / FAT MATTRESS

 2006年にSANCTUARYから出たアンソロジー。彼らの1969年の1ST、1970年の2NDアルバム曲にシングル曲は勿論、アルバムのアウトテイク曲、BBC音源、3RDアルバム用に録音された曲を含む、全曲集ともいえるもの。

 一般的にはJIMI HENDRIX EXPERIENCEのNOEL REDDINGのグループとして知られてますが、IVY LEAGUEやFLOWERPOT MENのボーカルも務めたというNIEL LANDONが主導だったようです。またBASSのJIM LEVERTONはその後JUICY LUCY、STEVE MARRIOTTのグループにいたり、近年ではCARAVANなど英ロックの非常に渋いバンドを渡り歩いてる方です。

 で、内容はというと、ストリングス/ホーン類無しでバンド主体の演奏ですが、さしてヘビーにならず暑苦しくもならず、ハーモニーやフルートが印象的な、むしろ快活で爽やかさも感じる楽曲がならんでいます。JIMI HENDRIX EXPERIENCEから入った方にはかなり拍子抜けでしょう。個人的には、1STの方が比較的サイケ・ポップ寄りで好み。アルペジオも効果的でコマーシャルな「PETROL PUMP ASSITANT」、なにやら教会音楽的な雰囲気もある「SHE CAME IN THE MORNING」、夢想的な「WALKING THROUGH THE GARDEN」あたりが聴き所です。(2007/01/20)



SINFUL SKINFUL SINFUL SKINFUL / FICKLE PICKLE

 サイケ・ポップ界のキーワードであるMORGANスタジオやMORGAN BLUE TOWNレーベルを舞台に活躍していたミュージシャン達によるユニット。オランダのみ発売していたというアルバムが2006年に紙ジャケCD化。クレジットのどこを見てもアルバムの発表年度が書いていないのですが、ライナーによると1971年から1972年にかけて制作されたそうです。

 メンツはORANGE BICYCLEのWIL MALONE、SMOKEのGEOFF GILL、MORGAN BLUE TOWNレーベルからシングル1枚を出し、その後作品集がCD化されたCLIFF WADE(裏ジャケではGLIFF WADEになっています)、レア盤で有名なRED DIRTのギタリストSTEVE HOWDENですが、1曲だけDANNY BECKERMANも曲作りに参加しており、MORGANオールスターズ的なグループ。

 で、肝心の中身ですが、サウンド・プロダクションは70年代的な音の厚みがありますが、メロディは手堅くも60年代的な瑞々しさを残しており(特にCLIFF WADEが曲作りに絡んだ曲)、サイケ・ポップの残滓を楽しめる内容です。

 「DOCTOR OCTOPUS」や「BLOWN AWAY」、最後のメンバー紹介など、ややとっつきにくい、ひねたユーモアを感じさせる部分もありますが、イギリス的なノスタルジックさやトラジック・コメディな味と思えばそれも一興。

 このユニットはアルバム以外にも、1970年にFONTANAとPHILIPSからシングル2枚を出していたとのことで、うち1曲は「HOUSE OF MANY WINDOWS PSYCHEDELIC PSTONES III」に収録されていますが、それらシングル・オンリーの曲をこのCDにボーナス・トラックとして入れて欲しかったところです。

 「SANDY」のコーダ部分や、「DOWN SMOKEY LANE」のフェイド・インなんかは、後期BEATLES/PAUL McCARTNEY初期ソロ的な質感があります。と思いながら、先の「HOUSE OF MANY WINDOWS PSYCHEDELIC PSTONES III」のライナーを読み返してみたら、彼らはPAULのカバー「MAYBE I'M AMAZED」をシングルで出し、それがオランダで予期せぬヒットとなったとのこと。そのため、このBEATLES/PAUL McCARTNEY色もあるオランダのみのアルバムが作られたと思われます。(2006/05/14)

 同じ2006年に英CASTLEからもCDが出ました。先の「MAYBE I'M AMAZED」をはじめ、(有名ヒット曲の営業的カバーも多いですが)シングル曲を網羅し、未発表曲を含む14曲のボーナス・トラック付。これから聴く人はこちらの方がお徳ですね。

 今さらながら、アルバム・ジャケットはPAULのRAMのパロディなのではないでしょうか。羊ならぬ豚。ただし、ちゃんと羊に触っていたPAULに比べ、FICKLE PICKLEの面々はニヤケながら遠巻きに見ているのも、なんとなく業界での彼らの立ち位置を象徴しているような気にもなります。(2006/08/20 追記)



UNDERGROUND AND OVERHEAD UNDERGROUND AND OVERHEAD / FIRE

 その後STRAWBSに加入するDAVE LAMBERTがリーダ格だったグループ。APPLEと音楽出版契約を交わして1968年にDECCAからシングル2枚を出し、その後1970年にPYEからアルバム「THE MAGIC SHOEMAKER」を出して解散。最初のシングル曲「FATHER'S NAME IS DAD」はサイケ・ポップ系のコンピ盤によく収められる人気曲。

 このCDは、前述の「FATHER'S NAME IS DAD」とその別バージョン及びB面曲に、DAVE LAMBERTが持っていた1967年〜1969年にかけての未発表デモ音源を大量に収録したもの。アルバム「THE MAGIC SHOEMAKER」収録曲の初期バージョンもある。もともとTENTH PLANETから1996年にLPで出ていたものに更に7曲プラスしたものらしい。

 全編聞いてみると、やはり「FATHER'S NAME IS DAD」が一番出来が良いですが、1967年、1968年録音分はサイケ・ポップとして充分に聴ける。「MAN IN THE TEAPOT」「I JUST CAN'T WAIT」やシングル曲に予定されていた「SPARE A COPPER」あたりもイイ感じです。1969年録音分になると、ピーター・ガブリエルか、ファミリーのロジャー・チャップマンを思わせる激情なボーカルで歌われるもの、アーシーだったり、ブルージーな曲調のものが増えてくる。そんななかでは長尺な「ALISON WONDERLAND」は正規な録音で残して欲しかった、と思わせてくれる意欲作。(2006/08/06)



THE MAGIC SHOEMAKER THE MAGIC SHOEMAKER / FIRE

 1970年発表の彼等唯一のアルバム。プログレっぽいジャケットのためか、LPは高価なレア盤だったそうです。これより前、1968年に出したシングル「FATHER'S NAME IS DAD」ではEASYBEATSを思わせる、疾走感溢れる曲でした。このシングルはDECCAから発売されたのですが、契約上の出版社はあのAPPLEだったので、きちんとしたプロモーションができず、その後のレコードリリースも滞ってしまったようです。彼等もAPPLEレーベルのゴタゴタの被害者と言えるかも知れません。

 このアルバムが出たのはそれから2年後。話し声のSEと彼等の演奏のコラージュから、6分以上の長い曲が始まり、その後も途中に随所、語りが入る。時代背景もあってかサイケ色は殆ど無く、ハード・ロックぽくもスワンプぽくも少しはあり、でもなりきれてないという中途半端な出来。ボーカルも味があるといえばそうかもしれないが、ヘタ。後にSTRAWBSに入るDAVE LAMBERTのギターが比較的目立ちます。

 そんな中では例外的なポップな「MAGIC SHOES」、ピアノが盛り上げる泣きのバラード「ONLY A DREAM」「SHOEMAKER」がわりと印象的。。カントリーなクロージング曲「HAPPY MAN AM I」はSMALL FACESの「OGDENS' NUT GONE FLAKE」の最後の曲を思い出させます。(2003/08/03)



THE FIVE DAY WEEK STRAW PEOPLE THE FIVE DAY WEEK STRAW PEOPLE

 1968年に発表された、トータルコンセプトアルバム。恋人と遠く離れて退屈な週末を送る男の物語が展開されているらしい。

 このグループはスタジオのみのプロジェクトと思われるが、メンバーやプロデューサーの表記が無い。裏ジャケットにGUY&DAVIDというクレジットと、全10曲の曲名を織り込んだ前述の「哀れな週末」のストーリーがあるだけ。そもそもこの作品のタイトルはグループ名も兼ねているのか?よく判らない謎の一枚。

 ZOMBIESの「ODESSEY AND ORACLE」風のジャケットから、サイケポップな音を想像されますが、実際にはプレ・ハードロック的。曲間にSEや逆回転コラージュも入りますが、ストリングスやメロトロンなし、キーボードレスな4ピースのギターバンド演奏のみ。ただし、アコギも混ぜたりエコーを使ったりして、あまりスカスカな音ではない。

 A面にあたる部分では、ブルースな、ねちっこいギターソロをフューチャーした曲が多い。動きの多い、うねうねしたベースやあまり巧くないヴォーカルも含めてCREAMを思わせます。B面では一転、気だるくダウナーな曲調ばかりです。ハードロックの人達が無理に中期KINKSを真似ているような印象。

 このCDは、ついジャケット買いしてしまった一枚です。池袋WAVEが西武百貨店とは道を隔てたビルにあった頃ですから、もう7〜8年前のことになります。(1999/11/21)



REFLECTIONS REFLECTIONS / LES FLEUR DE LYS

 GORDON HASKELLやBRYN HAWORTHが在籍していたこともある、1965年〜1969年までシングルばかりをリリースしていたグループ。このCDは1997年に出た編集盤で、R&Bが基調ながら、時代の情況にあわせてフリーク・ビートからサイケ・ポップやソフト・ロックぽいものまで振幅のある曲群を収録。しかも変名で出したシングルや、ソロ・アーティストのバックを務めたものなども含めてランダムな曲順でまさにチャンポン状態で面食らう。でも、ドラム以外はメンバーチェンジが激しかったグループらしい、混沌としていて勢いも感じられるナイスな編集かもしれません。いちおう関係した曲はすべて押さえてあるようですし、チャートとは無縁だったとはいえ、それぞれの曲の出来は良い方だと思います。BRYN HAWORTHのギターも鋭角的で良し。

 1曲目であるWHOのカバー「CIRCLES」やSHARON TANDYのバックを務めた「HOLD ON」は異様にカッコ良く、フリーク・ビートものとしては名作にあたると思います。「STOP CROSSING THE BRIDGE」、「I LIKE WHAT I'M TRYING TO DO」はポップ・ソウルとしての佳作。

 サイケ・ポップとしては、弦楽器入りの夢見るような「I CAN SEE THE LIGHT」、CHOCOLATE FROG名義名義の能天気な「BUTCHERS AND BAKERS」が聴きもの。「GONG WITH THE LUMINOUS NOSE」、「ONE CITY GIRL」、JOHN BROMLEYのバックを務めた「SO MANY THINGS」も、まあこの路線でしょうか。「REFLECTION OF CHARLIE BROWN」はあまりにも「青い影」の2番煎じで、苦笑もの。ソフト・ロック風では、CHOCOLATE FROG名義の「I FORGIVE YOU」、本名での「BRICK BY BRICK」が妙に洗練された曲調で印象的。(2005/08/15)



LET'S GO TO SAN FRANCISCO LET'S GO TO SAN FRANCISCO / THE FLOWER POT MEN

 「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」のヒットで有名な彼らの、1993年に発売された編集盤。活動中はアルバムを発表しなかった彼らのシングル曲と未発表曲を中心に全21曲収録。このうち8曲は2000年に発掘発売された「PEACE ALBUM/PAST IMPERFECT」に収録されてます。この8曲はもともとは2枚のコンセプトアルバム中の収録曲なので、今となってはここでバラに聴いても余り意味がない状態。

 IVY LEAGUEが別名で吹き込んだ「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」がヒットしてしまい、IVY LEAGUEが存続中だったので、コーラス要員だった別の4人がメンバーとして仕立てられたグループ。この仕立てられたメンバーの方はWHITE PLAINSに移行し、いくつかのヒット曲を発表してます。

 代表曲であり唯一のヒット曲「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」はBEACH BOYSの「GOOD VIBRATION」や「HERO AND VILLIANS?」を思わせるめまぐるしい展開とコーラス、そして全編に染み渡るメロトロンが印象的。サンフランシスコ賛歌ですが、音の質感は英国的。まるでシスコの風景を思い浮かべながら、ロンドンでトリップしているような曲。別バージョンも2つ収録されてますが、発表バージョンの「材料」だったのでしょう。

 その他の曲は「PEACE ALBUM/PAST IMPERFECT」収録曲は除くと、大きく二つに分けられます。「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」タイプのメロトロン入りの曲と、WHITE PLAINSにつながる明るくてポップフォーマットな曲に。シングル発表順に聴いていると段々後者寄り、つまりソフトロック路線になっていくのがわかります。

 前者タイプでは、2枚目のシングル曲「A WALK IN THE SKY」が同路線。「YOU CAN NEVER BE WRONG」がチェンバロ(ハープシコード?)と霞がかったボーカルが印象的な、朝もやを思わせる曲。

 後者タイプでは「IN A MOMENT OF MADNESS」がソフトロック的には大傑作。作者はCOOKE=GREENAWAYなので、まさにWHITE PLAINSの前哨戦ともいえる曲。そのB面だった「YOUNG BIRDS FLY」も爽やかなボーカルはWHITE PLAINSそのもの。IVY LEAGUEのJOHN CARTERもティニー・ポッパーな曲を結構ここで書き下ろしてます。

 ところで、グループ名表記は「THE FLOWER POT MEN」と「THE FLOWERPOT MEN」のどちらが正しいのでしょうか。このCDでは前者、「PEACE ALBUM/PAST IMPERFECT」では後者の表記になってます。シングル盤の写真を見ると「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」では後者、それ以外のシングルでは前者表記とバラバラといういい加減さ。さすがでっち上げグループ。(2000/11/26)



PEACE ALBUM/PAST IMPERFECT PEACE ALBUM/PAST IMPERFECT / THE FLOWERPOT MEN

 「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」のヒットで有名なTHE FLOWERPOT MENがひそかに作っていたコンセプトアルバム2作の発掘盤。ただし何曲かは1993年に出た編集盤「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」にも収められてます。IVY LEAGUEが別名で吹き込んだ「LET'S GO TO SAN FRANCISCO」がヒットしてしまい、コーラス要員がライブ用メンバーとして仕立てられた変なグループ(モンキー・ビジネス!)。ライブ用メンバーの方はWHITE PLAINSに移行しましたが、こちらは本来のメンバーである元IVY LEAGUEのJOHN CARTERとKEN LEWIS達による演奏とプロデュース。しかし「平和のアルバム」に「不完全な過去」とはいかにも当時らしいネーミング。

 「PEACE ALBUM」は荘厳なプロローグとエピローグに挟まれた全10曲。OHN CARTERとKEN LEWISのプロデュースと彼ら二人中心の曲づくり。「PAST IMPERFECT」は老人の語りで始まり、赤ん坊の泣き声で終わる。過去を遡るというコンセプトなのでしょうか。1曲目はアナログシンセ(?)が印象的。アルバム出だしに躍動的な曲を持ってくるなんて、ちょっとMOODY BLUESみたい。こちらはKEN LEWISがコーラスのみと一歩退いて、JOHN CARTER単独プロデュースで曲作りは彼と彼の妻を中心にされている。

 2つのアルバムのどの曲もメロディー、アレンジとも程よく練られていて良くできてます。フォークぽいとこや、ハードなギターをフューチャーしたり、DONOVANのカバーがあったり、弾き語りブルースがあったりとバリエーション豊か。それらが一貫してイギリスな翳りで括られてます。CHAD & JEREMYぽいとこも。ただ、あまりにもシリアスな雰囲気なので、ヒットチャートをねらうグループのイメージに合いません。当時発表が見送られたのも戦略上は正しかったのかもしれません。

 本作はWEB VANDAで激賞されてますが、SOFT ROCKの持つ陽気さ、軽やかさはあまり感じられません。IVY LEAGUEの影も殆どない。インナーの写真を見ると髪も伸びてるし、髭も生やしてるし。JOHN CARTERとKEN LEWIS、特にJOHN CARTERがアーティストとしてのエゴを思う存分発揮した意欲作と言えるでしょう。(2000/10/29)



FIRST BITE OF THE APPLE FIRST BITE OF THE APPLE: THE COMPLETE RECORDINGS 1967-68 / FOCAL POINT

 APPLE音楽出版と契約していたサイケ・ポップグループ。アルバムが激レアなフォーク・グループとは、当然別グループ。

 当時はDERAMから1968年に1枚シングルを出したのみですが、今回(2005年)CD一枚分の音源が発掘されました。2003年に発表されたコンピ盤 「94 BAKER STREET THE POP-PSYCH SOUNDS OF THE APPLE ERA 1967-1969」 でもシングル曲を含む5曲が収録。ただしそこでは、「LOVE YOU FOREVER」と「SYCAMORE SID」が逆に表記されてました。その5曲も本盤に収録されています。

 さて、本盤を聴いてみると、シングル曲や先のコンピ盤で発掘された曲以外にも、出来の良い曲が多いのには驚かされます。オルガンが途切れなく背景に流れ、ベースがメロディックなラインを弾き、なよっとしたボーカルひんやりと歌うダウナーな曲が多い。特にメンバーのフェイバリット・ソングでもある「FAR AWAY FROM FOREVER」が印象的。ただ、総体的に躍動感やキャッチーなところが少なく、ポップ・ミュージックらしくはないのですが、何よりも当時らしい音像には惹きつけられます。

 で、結論的に書けば、彼らは、サイケ・ポップ的にとても魅力的な存在です。BEATLESとも間接的ながら関連あるし、オブスキュアだし、楽曲も、メランコリックでアシッドぽさもありつつ、日本GS的なやや湿った抒情も感じたりします。同じAPPLE音楽出版仲間のGRAPEFRUITよりも、さらに深い森の奥にあるような位置づけです。

 価格は高めですが、内容は申し分ないし、ライナーもデータ的に充実しており、納得できるコスト・パフォーマンスです。(2005/12/11)



THE FOOL THE FOOL

 BEATLESのお抱えデザイナーとして有名な彼らが1969年に発表した唯一のアルバムに同年のシングル曲をプラスしたCD。ただしアルバム制作時にはBEATLESの「取り巻き」から離れている。

 彼らだけに責任があるわけじゃないだろうけど、ブティックの失敗でアップルを経営破綻の寸前まで至らせた彼ら。リストラされて渡米後、当地での新しいパトロンGRAHAM NASHがプロデュースしたのがこのアルバム。そのせいか、コーラスを強調した明るい作りはHOLLIESぽくもあり、思ったよりきちんと作られている。クスリでハイになったぜという、脳味噌が少々溶けかかった如き陽気な楽曲群。

 アルバム曲は全体的にタブラなどラーガ風だが、時折バグパイプやバンジョーが入る。童謡のようでもある。チェンバーなイントロで始まり高い女性コーラスが絡む「FLY」は少々GONG風。「RAINBOW MAN」はボー・ディドリー調。次の「CRY FOR ME」はバンジョーの響きがなにやら夜のミシシッピ川を船で下っているような気分にさせる。「KEEP ON PUSHIN」はインタープレイが続くインストで、プログレ風。

 シングル曲「WE ARE ONE」「SHINING LIGHT」はプロデューサーが違うせいか、オーソドックスな曲。ソフトロック好きにも受けそう。(2001/02/04)