長崎県対馬釣行 その1 
りき@管理人 

対馬釣行記第1日目

ラジオから流れる天気予報に聞き耳を立てた。以前から秘かに計画していた10月3連休の対馬釣行ではあったが、おりからの台風22号接近により実施そのものが危うい状況にあった。しかし、幸いなことに九州方面の直撃は避けられる見通しとなったため、多少の風雨は覚悟の上と意を決して渡ることにした。

10月7日午後8時30分、すっかり暮れなずんだ博多港発の『フェリーつしま』に乗り込み、壱岐を経由し翌11日午前1時過ぎには対馬厳原港上陸を果たす。対馬海峡では少し揺れたが半寝ぼけ状態だったので、たいしたこともなく通り過ぎることができたようだ。対馬の上空は風は強いのか鉛色に流れる雲は低くそして速い。しかし雨は降っておらず、わずかに切れた雲間からぼんやりと月を眺めることもできた。

フェリー乗り場を出発し一路北を目指す。深夜の対馬は静寂に包まれている。歩く人はおろか対向車すらほとんど行き違うことがない。国道を外れるとそれは更に顕著で、今から釣りをするという前向きな考えがなければ恐怖心さえ覚えるところであろう。
対馬空港滑走路下をくぐるとやがて左右に「海」が出現する。対馬は大小無数の入江が形成されており海岸線が非常に長い。おかげで多少強風があっても風裏に廻ればまるで湖畔のような水面が現れる。

とりあえず夜明けまではじっくり構えることのできる漁港が良いだろうと考え、まずは鴨居瀬(かもいせ)に向かってみることにした。
ひっそりと静まりかえる鴨居瀬の港へするすると車を滑り込ませた。さすがに釣り人は居ない。それにも増して風が強い。やはりコースは外れているとは言うものの台風の影響は避けられないようだ。ポイントがよく判らないので下見だけとし、事前情報のある千尋藻(ちろも)へ向かうことにした。

千尋藻も同様に風が強い。しかし、今回はそれを言ってると釣りができないかもしれない。車横付けポイントに釣り座を構える準備にかかる。とりあえず竿2本だけ用意し、向かい風目指し生け簀の際へそれぞれチロリ、アオイソメを付け対馬第1投!大きく糸が吹けるが最初だけ糸ふけを取り後はドラグをゆるめ糸をたるませて待つ。

30分ほど経過したであろうか、左側リールのドラグが激しくうなりを上げた。あわててベイルをおこすと糸が出ていく。竿先で聞き合わせるとブルッと魚の感触。大きくあおると小気味よく竿が曲がった。巻き上げる手に締め込みが伝わってくる。やがて水面に現れたのは真っ白いキス。すっぽ抜けを警戒し玉網を出しすくう。いきなりの良型だ。すぐにメジャーで測ると28cmを超えているではないか。やった〜!対馬初の魚がBランクキスだ〜!さすが対馬。この先2日間の釣りは一体どうなるんだ?!期待に胸が高鳴ったのは言うまでもない。

空が少し白み始めた頃、竿とクーラーを担いでそこから伸びている波止先端方向へ移動してみた。潮通しもよく、いかにもという雰囲気ではあったが残念ながらキスは不発に終わった。しかし、沖向きに投げた竿に当たりがあり締め込みをかわしてオキエソ40cmを仕留めることができた。
あまりの風の強さに辟易とし、場所替えを決意。対馬には無数のポイントがあるし、2日間それらを廻り続けなければならない。はやる気持ちにじっくり構える余裕などない。余談であるが帰り際に走行距離計を見たらなんと300km以上対馬内を走り回っていた。

強風を避けるべく浅芽湾(あそうわん)周辺の各ポイントを廻り、その後北上し仁田方面に入るプランを頭に描きながらそそくさと片付ける。2本の竿には天秤も付けたまま。穂先だけしっかり保護してトランクに放り込む。帰るまできっとこのままなんだろうな…。相変わらす交通量の少ない道路を快適に走っていく。なんとなく今日は雨にも遭わず過ごせそうだ。

和多都美神社前、仁位、卯麦、志多浦と精力的に竿を出してみる。しかしながらあの竿を引ったくるような明確な当たりにはなかなか遭遇しない。三根湾河口付近を通り抜け仁田湾最奥部で国道から左折した。関係ないがこの辺りからauは圏外となってしまうのである。
御園(みそ)の漁港に着いたのはまだ朝の9時頃である。すごい勢いでポイントを廻ったものだ。ちょっと見切りが早すぎるかな…。

漁船を係留してあるところをパスし反対側の護岸にスペースがあるのを発見した。車横付けの楽ちんポイントだ。潮は下げに入り、間もなく干底のはずである。軽く投げ込み、みお筋真ん中辺りに仕掛けを落ち着かせる。すぐ後ろではテトラのコンクリート打ち作業が行われている。そう言えば今日は金曜日。世間は思い切り平日なのだ。騒音が少しうるさいがこちらが遊んでいるのである。エラそうなことは言えない。

細かい当たりが竿先を揺らす。餌取りであろうか。今回感じたのは意外と餌取りが少ないこと。仁位では1度だけ海ケムシの姿を見たが、それ以外はフグなど皆無に近い。ただ、夜になるとダイミョウサギの猛攻にあってしまうのだが…。

ふかせていた道糸がピーンと張る。と同時にパワーエアロのドラグが激しく逆転した。キスの当たりだ。道糸を指で2度3度引っ張り出す。竿を手に持ちドラグを締める。竿先には確かな魚の感触。大きく竿を立てると竿がグンと曲がった。クンクンと締め込む。青虫のチョン掛けを口にほうばったパールピンクの魚体が透き通った水面に現れた。これも良型である。護岸に抜き上げたキスはまたしても28cmを超えていた。2尾目のBランクである。その後数投すると小さな当たりも全くなくなった。15号の錘でやっているがどうやらキスも散ってしまったようだ。撤収し他のポイントを廻る。

越高の小波止で引き釣りをするが北東の山間から真っ黒な雨雲が迫ってくる。こら一雨来るな。思ったとほぼ同時に水面に雨音が…。どんどんこちらに向かってくる様子がわかる。あっという間に大粒の雨が波止上を襲う。そそくさと片づけをし、車に逃げ込む。そろそろ本格的に雨になるのかなぁ。
仁田湾の波止でも竿を出してみるが非常に細い波止なんであまり前には進めない。魚信がないため竿を片付けた。

更に、三根湾河口付近、鴨居瀬の神社前など精力的に廻っては見るが、目立った釣果は無かった。時刻は15時を過ぎた。そろそろ、夜釣りポイントを選定しなければならない。

台風は南大東島辺りを北上している。偏西風の影響か少し東へ進路を変えたようだ。九州そしてここ対馬方面を直撃する可能性は一段と減った。しかし、それを無視するかのように強い風が吹いている。雲も相変わらずかなりの速度で移動している。

昨夜からの移動で疲れはかなり溜まっている。しかし、せっかくの対馬。夜には赤くて大きい魚も期待できそうだ。すぐに休息できるように今宵も車横付けが望ましい。結局未明にキスを釣った千尋藻に戻ることにした。先のポイントは完全に向かい風になり辛いので、今度は漁協の船だまり側を釣り座にする。外洋はシケでイカ釣り船は漁に出ていない。係留されている船の間から2本の竿を出す。すぐに3脚が倒れるので竿先を低くセットする。

活発にドラグを鳴らす当たりがある。しかし、それはキスのそれとは明らかに違い、またマダイでもなさそう。正体は前に言ったダイミョウサギ(クロサギ)である。20数センチのこいつがほぼ毎回かかってくる。餌の消耗が激しい。期待のマダイやキスは魚信を送ってくれない。25cmに満たないマダイが一度だけ釣れたが、これは丁寧に鈎を外しリリースした。

強風に加えついに雨粒が落ちてきた。まるで台風が接近してくる様相だ。マストがゴーゴーと風を切っている。時刻は22時頃。あまりの激しさについにギブアップ。竿を片付け車中の人となる。寝ようと思うが風で車が揺れなかなか寝付けない。博多で買った麦焼酎をがぶ飲みし、それでもなんとか夢の中へ入っていった。

その2に続く