長崎県対馬釣行 その2
りき@管理人 

対馬釣行記2日目

夜半、かなり降ったのだろうか。背中の痛みで目が覚める。時計を見ると5時前である。車から出てみると雨は上がっている。しかし、空には黒い雲がたれ込めておりいつ降り出してもおかしくない。
対馬釣り歩きも2日目突入だ。今日は浅芽湾南側から攻めてみよう。明るくなり始めた千尋藻港を後にし、車は国道に出た後南にハンドルを切った。
昨夜通った時は真っ暗であった万関橋、大船越を通り過ぎ、鶏知(けち)を右折。途中にあったWCで歯を磨き洗顔を済ませる。

最初に訪れたのは竹敷。漁港、自衛隊を通り過ぎ細い道を一番奥まで車を進める。風は左から右に吹いているが山影のためいくらかである。1本だけ竿を取り出し真正面に投げる。着水後スルスルとラインが出ていく。結構水深がある。手前に駆け上がりがあり、巻き上げはかなり高速で行わないと食われそうだ。仕掛けを動かすと根掛かりしそうなんで、一度糸ふけを取ってそのままで待つ。

何投か目、いきなりドラグ音が静寂を破る。激しく出る糸はなかなか止まらない。直感的にキスの当たりではないと思う。護岸に上りドラグを締め大きく合わせる。竿が満月になり重量感が腕を襲う。
「の、のった!」

竿先を高く据え、高速で巻き上げる。確かな抵抗感が伝わってくるがなかなか早く巻けない。残り1色程になったときガクンと止まってしまった。しまった!かけ上がりの何かに引っかかった。いくら引っ張っても抜けてくる様子はない。やむなく再度ドラグをゆるめて出てくるのを待つ。2分5分…。結果的にしびれを切らせたのはこっちだった。竿をあおってもやっぱり魚は出てこない。竿をまっすぐにしてゆっくり引っ張る。これで出てきたら儲けものだ。やがてフッと抵抗感が消えラインが風にふけた。高切れだ…。力糸結び目から先は回収できなかった。

逃した魚は大きい…。推測の域はでないが、恐らくチヌか真鯛だったと思う。残念なことをしたと同時に、ホント下手やなぁと痛感しきりだった。
やがて雨が落ちてきた。傷心に鞭を打って移動を決意。ちょうど裏側に当たる黒瀬、箕形、吹崎で竿を出す。
加志浦に綺麗な公衆トイレがあったので利用させてもらう。水洗にトイレットペーパーとフルスペック…。非常に助かる。

加志浦のゴロタポイントは珍しく車から歩かなければならない。田んぼの畦道を入れるだけ入り、じゃまにならないところに駐車する。わだちで底がギリギリである。ついに雨も連続して降るようになり、初めてレインコートを着込んだ。竿一本とクーラーを担ぎ、潮の引いた浜に降りる。数10メートル進んだところで荷を下ろし釣り再開。後ろは雑木林で枝が覆い被さるように出っ張っている。あまり振りかぶると仕掛けを枝に掛けてしまう。注意しながら第1投。2色程度しか飛ばない。仕掛けを落ち着かせ当たりを待つ。

広葉樹の下に入ると雨がしのげる。これは好都合。大きめの石を捜し椅子代わりとした。すぐに当たりがありドラグが出る。ランクには満たないが24〜25cmある。最初はランクのみキープするというコンセプトであったが、ここに来て方向転換。大事にクーラーに入れお持ち帰りである。

釣れてくるキスはすべてアオイソメの1匹掛けにヒットする。大阪から持ち込んだチロリには全く見向きもしない。なぜかは判らないが、今回はアオイソメが当たり餌となった。
23〜25のキープサイズを6〜7匹釣っただろうか。バタッと当たりが遠のいた。
雨はいよいよ本格的になっている。既に込み潮にかかっているはずだ。急ぎ仕舞いゴロタ浜を汗をかきつつ車に戻った。

満潮前後に仁位で釣ると決めていたので、そちらに廻ることに。途中鶏知のスーパーで食料を仕入れる。そう言えば今まで博多で買ってきたおにぎりやパンで過ごしてきた。対馬で食料を買い込むのは初めてである。実はカップ麺とバーナーを持ち込んでいたが、雨が降り出し少々じゃまくさい。夕食用のお弁当などを仕入れた。その時に島内唯一のファーストフード店モスバーガーで腹ごしらえをしようと思っていたが、かなり混雑していたのでやむなくパスした。

カーナビの走行軌跡は印で真っ黒になっている。この辺りは何度往復しただろうか。こっちが千尋藻あっちが仁位…。まるで勝手知ったる町を走行しているようだ。間欠ワイパーでは不十分なくらいの雨脚になっている。最初は覚悟したもののやはり雨は憂鬱である。何より濡れたレインコートで車内に入るのは極力避けたいものである。

仁位から和多都美神社へ折れると急に人や車が減る。神話の里という銘のある大きな赤鳥居をくぐると海面上に鳥居が現れる。境内の由緒書きによると、神代の昔に海神豊玉彦尊がこの辺り(夫姫と名付けた)に宮殿を造営し、海宮と名付けた。そして神々しい神奈美「夫姫山」のさざ波よせるこの地に彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)と豊玉姫命(とよたまひめのみこと)の御夫婦の神を奉斎したと伝えている。

鳥居の基壇の高さから推し量るとまだ満潮には時間がある。この付近のポイントを少し廻ろうと言うことで、佐志賀、嵯峨、貝鮒、糸瀬などを廻ってみる。入江が深く波は穏やかであるが、そのおかげで真珠養殖イカダが数多く浮かべてあり、それらの固定ロープが張り巡らされている。特に降りてみることもなくまさに車窓観光である。次回釣行時の参考になっただろうか…。

和多都美神社境内前のWC兼あずま屋でレインコートを着込む。そのままで車を進め出っ張りから投げる。水面は少し波気がある程度でいたって穏やかである。風も後ろの山に遮られほとんど感じない。しかし、雨は止む気配がない。
徐々に潮も上がりいよいよ鳥居の基壇が水面下に隠れようとしている。アオイソメを付けた仕掛けを90mくらいに遠投する。15号の錘の着水音はほとんど聞こえない。竿先が揺れ当たったような気がした。しかし、勢いよくドラグが出るわけでもない。念のため合わせると魚の感触。しかし、水面を割ったのは20cm弱のガシラ(カサゴ)である。根か岩礁があるのだろうか。珍しい気がしたが、丁寧に鈎を外しリリースする。

湾口付近に一生懸命投げる。普通(って知らないが)ならもっと頻繁に当たるのではないだろうか。やはりポイントを外しているのかな…。仕掛けを落ち着かせると同時にブルブルっと竿先が揺れる。まだドラグを緩めるに至ってない。ラインを少し出して竿を置く。するとまたしても大きく竿先を揺るがす。これは乗っているに違いない。糸ふけを取って竿先に聞いてみるとブルンという感触。そのまま竿を引き込み巻きにかかる。なかなかの重量感。激しい当たりではなかった分、不安と期待が交錯する。やがて水面に見えたのはやはりキス。良型?と言うより一荷である。慎重に抜くとなかなかのサイズ。1尾はギリギリ26cm、もうひとつも25はありそうだ。何とかランク4尾目ゲットだ!

しかし、例によって当たりが遠のいた。そろそろ引き際か。当たりは日没と曇り空でかなり暗くなっている。電灯を必要とする前に急いで片付け、今日の夜釣りポイントを考える。昨日Bランクを釣った御園が脳裏をよぎる。そういえば その先に志多留(したる)という大きな港があるはずだ。なぜか昨日は越高でUターンしてきた。そうなると非常に気になってしようがない。ここからは結構距離があるが明日の朝は7時半にフェリー乗り場に行けばいいのだ。意を決し車を北に向け走り出した。

国道に出るとそこそこ車が走っている。今日は土曜日、しかも夕刻。みんなお買い物などで出ているのだろうか。昨日通ったルートをひた走る。三根湾河口 、仁田湾を通り過ぎ御園に着いたときはとっぷり日も暮れていた。当然人影などあろうはずもない。そのまま通過し伊奈を超え志多留へ到着。メチャクチャ風が強い。どうも風の道筋になっているようだ。見渡した限りではズボラポイントもなさそう。この天気でこの雰囲気で道具を持って波止先へ行く勇気がない。仕方なくここは諦めて御園へ戻ることとした。途中志多留の在所内へ突っ込み、往生してバックした。よく見ると独特の石塀が連続していた。

御園は昨日の対岸、船溜まりに入った。網や海草を干しておらずスムースに中へ車を入れられた。しかし、全く誰もいない。外灯も暗くうら寂しい。気が付けばあれほど静かだったのに、風が巻いている。いよいよ台風の最接近なんかな。
船の間から数投するも釣れてくるのはダイミョウサギばかり。そのうち後ろの山から何かが飛び出し漁具が大きな音と共に倒れた。な、なんじゃ?正体はわからなかったが猫か?対馬ヤマネコ??

とてもこんなところで夜を徹することはできない。19時を過ぎていたが、またまた来た道を延々戻ることにした。そう言えば関西の全日本サーフの人が対馬に入られているという話だった。ひょっとすると千尋藻辺りで夜釣りをされているのではないだろうか。何の根拠もないが行ってみようと決める。もはや勝手知ったる我が千尋藻(?)。またしてもここで夜を明かすことにした。

遠いと言ってもそこは対馬。都会のような渋滞があるわけでもなくいたって快適に千尋藻に到着する。見覚えのある波止の先端にはたくさんの穂先ライトが光る。正解!そこには投げ釣り師の姿。対馬に来て初めて見る光景だ。
車を止め歩いていく。怪訝そうにこちらを見つめるレインボーキャスターズのお二人がいらっしゃった。初対面(厳密にはお会いしたことがある)と言うことで自己紹介しお話をさせていただく。今朝入られて明日までされるそうだ。勿論大物狙い。その日は民宿に戻られるそうだ。と、その時投げられていた餌木になんと剣先イカがヒット! 波止上で手早く捌かれたものをご相伴にあずかる。釣りたての身は透明ですごく美味しかった。博多なら*千円だろうな…。

自車に戻り最後の夜をどこでやるか思案する。結局外灯で明るく、最初にランクキスの釣れたところに決め移動。台風は関東方面に狙いを定めているというのに相変わらず強風が吹き荒れている。疲れもピークに達しており半ば諦めモード。フロントガラスに穂先が見えるように車を止め、3脚が倒れないようにアンカーにくくりつける。

前日とは違いやたらに根掛かりする。感じからロープや網のようだ。微妙に潮の流れが違うのだろう。ビールを飲みながらお弁当を食べていると、どーっと眠気が襲ってきた。竿が飛ばないように輪ゴムで3脚に固定し、後部座席に毛布で作った簡易ベッドに潜り込んだ。

目が覚めるとすっかり明るくなっていた。今日はいよいよ帰還の日。フェリーの関係で7時30分には乗船口へ行かなければならない。よく考えるとあまり時間がない。投げっぱなしの竿をあおると両方ともがっちり根掛かりしている。おまけに高切れときた。そのまま撤収すべく巻き上げる。本来なら3時頃から朝まずめを狙いたかったが残念である。散乱した荷台をきれいに片付け、ずっと着っぱなしの服や下着を交換した(人が少ないので楽です)。
久々の晴れ間が見えている。遠く関東では台風の被害が出ているようだ(被災された方々にはお見舞い申し上げます)。窓を開けて快適なラストドライブ。しかし、帰る日に天候が回復するなんて、ほんとついてないな。

7時過ぎには厳原のフェリー岸壁に到着。途中大船越の港や万関橋などから写真を撮影した。本当に対馬一周すべてポイントって感じだ。次回いつ来られるか判らないが興味深いところばかりである。

フェリー待合室は意外にごった返していた。恐らく九州でスポーツ大会に出場するであろう中学生達、お隣韓国からの旅行客、対馬を後にする観光客などである。やがてそれらの人々は乗船口からフェリーに吸い込まれていった。防波堤を出るとそこは大シケの対馬海峡だった。大きく揺れる船内で船酔い寸前であったが、服用した薬のおかげもあり何とか無事博多港へ到着した。

わずか2日間の対馬釣行ではあったが、自分的にはそれなりに満足している。あいにくの天候の中、初めての訪問で4尾のランクは上出来としたい。次回は必ず尺超えのキスを仕留めたいと心に誓い博多を後にした。

釣果 キス 28.8cm 28.6cm 26.3cm  オキエソ 41.5cm 以上拓寸
   その他25〜23cm8尾