31. 転勤そして転院

 

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<秋の検診>

退院後、恒例になっている秋の問診を終え、また会社が実施している秋の成人病検診を受け、特に何もなく終わることができました。会社の成人病検診では石灰化のことを尋ねたところ、確かにその通りだとのこと。そして医師は「大丈夫ですが、落ちたら痛いですよ。」と謎の発言。「先生、落ちたらというのはどう言う事ですか」「まだ結石になっていないのですが、大きくなってくると....」
結局結石になって、どこかの管に詰まる可能性がある、ということのようです。確かに痛そうです。特に対策は無いようで、特別な指示はありませんでした。

まあそんな風に無事にこの1年も過ぎたのですが、この検診で会社の同僚が腎臓がんと診断されました。大変珍しい癌だそうです。検診は受けておくべき、とここでは言うに留めて置きます。

<転勤・転院>

2月14日、今日はバレンタイン・デーだ、おじさんにも明るい一日が訪れるか、と期待を抱いて会社に行ったところ、事業部長から直々に電話がかかってきました。転勤です。
昨年から中国地方の営業所関連業務が増えていたので、こんどの4月の人事異動ではこの営業所へ転勤になることを覚悟していました。新幹線なら1時間半で大阪には行けるし、転勤になっても病院は同じO府立成人病センターのままでよいか、と考えていました。しかし事業部長の口から出た言葉は『東京・本社』でした。

本社復帰は7年ぶり。都会へ戻る不安と期待、そして、生活の変化に対する戸惑い。いろいろな思いが交錯します。その中で、やはり重要な要素は『これからの診察はどうしたら良いのだろうか』ということでした。

主治医との会話

いつも忙しい主治医のM先生に電話をしました。まさか電話で話しをできるとは思っていなかったのですが、意外と簡単につかまりました。

『こんど転勤になるのですが。どうしたら良いでしょうか。』

『そうですね。いくつか方法がありますよ。
まず、今まで通り全てこちらの病院にきていただく方法。
2番目が、検査は他の病院で受け検査結果をこちらに送ってもらって、総合的な判断をこちらでする方法。
3番目は全て他の病院でして頂く方法ですね。』

1番目の方法と3番目の方法しか考えていなかったもので、2番目の方法が出てきたことで少々ビックリしてしまいました。
『1番めの方法は難しいのではありませんか。合計3回こちらの病院へ通わなくてはならず、それも先生の外来診察日は水曜日に限られています。短期間にそれだけ休むのはなかなか厳しいし、経済的にも10万円近くの出費になります。空腹で検査を受けることを考えると、前泊することも考えないといけないし、難しいですね。』

『それでは2番目の方法はどうですか』

前にも書いたように2番目の方法は考えも居なかった方法だっただけに、ちょっと魅力がありました。やはり同じ主治医の先生に継続してみて貰えるメリットは少なからずあるかと思いました。そして返した言葉が
『少し考えさせてください。またご連絡させて頂きます。もし3番目の方法を取った場合には、先生のところへ伺った方がよいのでしょうか』

『特に必要ないですよ。あとで連絡をくれれば結構です。』

で、どうするか

あまり悩むほどの問題ではありませんが、少し考えてしまいました。1回といえども通うのは大変です。でもM先生に見てもらいたいという思いはあります。

で結論は、やはり病院を替わることにしました。M先生がいつまでも今の病院にいる保証があるわけでもなく、先生自身が病院を移り違う先生に変えられてしまったら、と考えると今のO府立成人病センターにこだわる必要もありません。最初は病院に直接行く必要があるかもしれない、と思っており転勤前に片をつけなければならない、と思っていましたが、病院へ行く必要がないことが分かり、ずるずると時間が過ぎてしまいました。結局もう一度先生に連絡を取ったのは5月になってからです。

『やはり通うのは無理なので、他の病院で全てを見ていただこうと思っています。』

『そうですか。それは残念ですね。』

『すみません。どこか良い病院を教えていただくことはできませんか。』

『通いやすいところを考えればよいと思いますよ。』

『紹介状はどうしたら良いでしょうか』

『次の病院が決まっていますか。決まっていたらそちらへ送ります。』

『まだ決まっていないので、私の自宅に送って貰うことはできますか。』

『それはできません。患者さんへお渡しすることはないんですよ。』

結局、新しい病院が見つかったらFAXで先生にご連絡することで決着がつきました。

転居先での病院探し

近所の人に「胃ガンの手術をしたのですが、その後の検査…。評判の良いお医者様…。」などという話をしてもまったく受け入れられるわけもなく、結局インターネットで調べました。そしてたどり着いたのが「ヒューマントラストクリニック(HTC)」という診療所です。決め手になったのは、
腕が良いと書いていること
経験が豊富としているところ
土日に診療をしていること
自宅から車で20分程度でいけること
でした。

電話をすると、受付から医師の先生まで電話が回され、安心してきてください、自分はO府立成人病センターの胃癌担当の先生も知っているから、との話でした。XX(よく聞き取れなかった)の評議員もやっているとのことで、変な町医者ではなく、また大学病院で延々と待たされることを考えると良い選択だと思われます。

O府立成人病センターに日曜日の晩にFAXを入れ、次の土曜日にHTCに連絡を入れると、もう連絡がきているとのこと。それでは、ということで早速その午後、診療を受けることにしました。予約もなく、楽なものです。

<HTC(ヒューマントラストクリニック)初回診察>

「内科医が選ぶ手術の上手い外科医100人」

HTCの壁のスクラップボードには雑誌のコピーがはってありました。開業医はそれなりの大変さがあるようです。

診察室に通され、今までの経緯等を話す間、S先生(院長)は成人病センターからの資料を見ながら、フムフムと話を聞いていました。成人病センターからはどうもFAX一枚届いただけのようです。胃カメラの写真もエコーもなし。カルテのコピーも無いようでした。結構冷たいものです。

持参していた前回の会社の健康診断結果を見せると、それを見ながら、次のことをそばにあった紙に書き始めながら説明を開始しました。

1)食後の高血糖と2〜3時間後の低血糖

2)Ca吸収低下→骨粗しょう症、骨量の低下

3)腸閉塞症

4)逆流性食道炎

5)残胃癌の危惧

6)大腸がんなど異所の癌

7)微量因子(Cu、Zn、Mg、Fe、Al)の吸収低下

8)Castle Factor(キャッスル因子)低下によるビタミンB12吸入不全による貧血症

『胃癌の手術を受けた人はこんな病気になりやすいのですよ。』

全部知っていると言いたいところでしたが、その後、すっかり良くなったつもりの自分では覚えているものも多くはありませんでした。

この後、初日は尿を取って、X線撮影をし、血液検査をしました。X線検査もS先生が立ち会ってくれ、ある意味で、小さい良さを感じます。X線検査では肺のほか、手の平の撮影をしました。これで骨粗しょう症がわかるとのこと。X線写真の出来上がりを待ち、肺は問題ないが、若干骨粗しょう症の気味があることを伝えられました。ただし正確な検査は外に出すので翌週以降まで待つ必要があります。

<HTC(ヒューマントラストクリニック)第2回>

翌週、血液検査の結果、骨粗しょう症検査の結果を聞く。

血液検査は問題なし。貧血もないし、腫瘍マーカーも問題なしでした。ただし骨粗しょう症は、

『40代前半の男性としては低い方である』
とのことで、
『薬を打つ』

対策をすることも視野に入れなければならない、ことをしつこいと思うほど言われてしまった。こ当面は薬なしで、乳製品を多めにとることで許して貰った。

『胃カメラをしておいて欲しいのですが』
という言葉には、

『次の次の土曜日はどうですか』
『午前の遅い時間帯でお願いします』
『11時からにしましょう』

あっさり決まってしまう。大病院にはない手軽さだ。感染症チェックのための血液検査と、胃カメラの心構えを看護士さんから聞いて帰る。今までのO府立成人病センターの癖で、「タオルを持ってくる必要はありますか」と聞いてしまい、笑われる。『ここの先生は上手だから安心してください』

<HTC(ヒューマントラストクリニック)第3回>

検査

11時少し前に病院に入る。奥の検査室へ通され、検査着に着替える。まずここで腹部エコーをするとのこと。胃カメラだけだと思っていたので、エコーはどうするのかと思っていたら同時にやってしまうようだ。本当にありがたい話です。

エコーも院長自ら見てくれる。それは合理的だし的確です。

次に隣の部屋に通され、いよいよ内視鏡の検査。実は今日の検査のために少し前から消化の良いものを食べるように努力してきました。昨年のように、見えにくいと言われては検査する目的がかないません。ただ昨日の昼食が少し油っコイものだったのが気になります。

看護士さんに、まず非常に痛い筋肉注射を打たれ、胃の動きを止める薬を飲む。次にゼリー状の麻酔薬を口にふくむ。

『むせそうになったら出してください。』

これも問題なく、所定時間が経つ。さあ、いよいよと思ったら、今度は先ほどと逆の腕に麻酔注射、喉にスプレー状の麻酔をかける。念が入っている。

診療台の上に仰向けに横たわる。マウスピースをくわえる。
『楽にして下さい』
ここでは横向けにならず仰向けで内視鏡検査をするのであった。もちろんS院長が自ら行なう。しきりに話し掛けてくれ、今何処を見ているか説明してくれる。横向けではないので、モニターが見え、モニターの映像が先生の説明と同期する。わかりやすい。

一番気にしていた残渣は無いようでなによりだった。組織をとる、とのことで、2回ほど胃袋が引っ張られたような感じがした。

結果

もうその日の内に、所見を聞かせてもらえる。曰く

『胃は1/2から3/5残っている。通常よりだいぶ大きく残してある』
(M先生感謝です。)

『残渣はあまりなく、また幽門輪はきちんと機能している』

『(検査薬の入った検査容器を指して)ピロリ菌がいる』

ピロリ菌は措置しておいた方が良い、との考え方を説明される。一方で
『以前はピロリ菌と胃癌の相関は取れていなかったと思うのですが』と言うと

『必要充分条件ではないが、胃癌の人からはほぼ100%ピロリ菌が検出される』とのことでした。そして、アルファ・クラブのコピー(H15年6月15日号)を貰う。国立国際医療センター内視鏡部長・上村直美氏の「ピロリ菌と胃癌」という記事が表紙を飾っていた。ピロリ菌に関しては、これも検査に出すとのことで、結果は2週間後くらいに聞きにいく事となる。

<HTC(ヒューマントラストクリニック)第4回>

こんにちは、と挨拶するも早々に、先生から
『アルファ・クラブには入りましたか。』
と先制パンチ。アルファ・クラブのコピーを貰ったことなど頭の中にまったく無く、今日はピロリ菌はどうなったか、を聞きに来たつもりだったので、ポケーとしていると、
『この間コピーを差し上げましたよね。』
との言葉でようやく思い出す。
『入っていません』

アルファ・クラブの件は別に呆れられたわけではなくその後は説明をしてくれる。

『以前は残胃癌というのは、胃潰瘍で胃を切った人たちのなる癌のことを言っていました。もうそういう手術はしませんが、代わりに胃癌で胃を切った人たちの残った胃にできる癌を残胃癌と呼ぶようになりました。』

次に検査結果の出力を読み上げる。しかし一般人にはとても意味をなさない難解な表現だったので、言い換えてもらう。

『検査の結果では、ピロリ菌は細胞の中には居ないようでした。また胃の萎縮が見られました。』

まだ判らない。『萎縮というのはなんでしょうか。』

『機能低下が起こっているということです。』

『なにかする必要があるのでしょうか』

『消化を助ける薬を飲むといいでしょう。』

『前回ピロリ菌の除去のお話がありましたが、やはりやったほうが良いのでしょうか』

『ピロリ菌の除菌については、やったほうがいいでしょう。ピロリ菌は強酸性を好むので、胃の中を中性化して行ないます。このときに気持が悪いと言った副作用が10人に1人くらいいます。必ず毎日2回ずつ飲まないとだめなんですよ。一日あけると効果がなくなる。』

『保険外治療だと思うのですが、いくらくらいかかるのでしょう。』

『保険外治療ではありませんよ。以前は保険外でしたが、今は1週間分の薬代が自己負担分3000円くらいでしょう。私が手法を開発していた時には、当時は研究室で検査薬も作っていましたから大変でしたが、今は楽になりました。検査も息を吹くだけでできますからね。保険外治療をそれと知らせずにするのはよい事ではないと考えています。』

まともなことを言ってくれるので安心する。図に乗ったわけではありませんが、『あまり薬は好きではないのですけど。』と言ってみる。

『するのであれば一日も早くやったほうが良いと思います。』

ここでもすぐに結論を出すことはやめました。正直なところ、薬はできるだけ体内に入れたくありません。

 ピロリ菌検査