chapter4告知

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1999年3月3日

<医務室からの電話>

医務室から電話がかかってきました。
「検査の結果が出ていますので、今日午後医務室へ来てください。」
「前、貧血の検査をしていたときは月曜日の先生だったので、月曜日の先生の方がいいのではありませんか。」
「今日の先生は消化器の専門の先生なので、今日来てください。」
かなり厳しい口調なので、NOと言える雰囲気ではありませんでした。

※医務室の医師(産業医)は曜日毎に、また午前・午後で異なっていました。

<医師との会話>

約束した通り、午後医務室へ行きました。
今日の産業医は内科のK先生で、穏やかな口調でカルテを見ながら話してくれました。
「前回の検査で組織を採りましたね。採った組織の中で腫瘍が見つかりました。大きさは、1センチから2センチといったところでしょうか。」

何を言いたいのだろうか。「先生、それは悪性、ということですか。」

「9箇所とったのですが、5箇所からV度、後の4箇所からはI度という結果が出ています。V度というのは確実にガンだということです。」

この人、急に何を言い出したのだろう。いったいだれの事を言っているのだろうか。私はこんなに元気で、ピンピンしているのに。医師はさらに続けました。

「アメリカではこの程度では放置しておくということもあるようですが、日本では手術をすることをお勧めしています。今この段階で手術をすれば、5年生存率は90%を超えると思いますが、放置しておくとこれより低くなります。近藤某という人がいろいろと書いているようですが、通常手術をします。」
「切るというとどのくらい切るのですか」
「通常3分の2を切り取ります。」
「切らないとどうなりますか。」
「3ヶ月に1度程度胃カメラを飲んでもらうことになると思います。どうしますか。」
「それでは、切る方向で考えます。」
「紹介状を書きましょう。O大病院宛へ」
そう言って紹介状を書き始めた。
「先生すみませんが、大学病院だと、実験的な要素があったり、あと交通の便が悪いので、他の病院へしてもらえませんか。」
「それでは国立O病院と府立成人病センターがありますが、どうしますか。成人病センターは少し古い建物で、もちろん機器は最新鋭ですが。そうですね、それじゃ国立O病院へ紹介状を書いておきますから。」
「……」
「入院はどのくらいするのですか。」
「1ヶ月くらいです。胃は1年もすれば同じ位のものが食べられるように大きくなりますから、大丈夫ですよ。」
「そうですか。」

少し安心したような気がしました。だが1年もすれば、という言葉が気になった。紹介状と袋にうまく入らなかった胃カメラの写真を受け取り診療室を後にしました。

<誤解>

さて、K先生が言っていたことをK先生の意図とは少し違ったように私は理解していました。それは「1年もすれば胃が少し大きくなって、元のように食べられるようになる」と言っていたのを「元のように胃が戻る」というように考えてしまっていたことです。一度切ってしまった胃は、多少は大きくなるけれど、元の形に戻ることはもちろんありませんし、元の大きさには戻りません。これは後になって気がつきました。トカゲのシッポじゃあるまいし、当たり前のことを勘違いしていました。

また入院は1ヶ月と聞いていたわけですが、これは「入院は1ヶ月」であって、会社を休む期間が1ヶ月ではありません。腹を切ったら、術後2週間では少し復帰は難しい、自宅療養が必要ということに気がついていませんでした。

(本ページここまで)
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