術後(〜退院)
<術後5日目>
6月8日(火)、昼から流動食、チューブがすべて外れる
朝、きのうの予告通り採血。これで食事が出るかどうかが決まります。
ひげを剃ったりしたあとフト気がつくと点滴が落ちていません。どうも今度は針が詰まってしまったようで、看護婦さんが詰まりを取ろうと試みてくれましたが、どうしてもなおりそうもない感じ。まだ点滴の液は残っていましたが外すことになりました。
9時になるとM先生が来ました。そろそろ点滴を24時間連続から午前・午後のみにしようと考えていたとのことでした。外れたのをきっかけに、午前・午後の2回に切りかえることになりました。これで日中は点滴が外れることになりました。
ところで手術直後から使っていた、麻酔の液ももうすぐなくなりそうです。一昨日からずっと怖れていたことなのですが、10時ころには完全に液がなくなります。
とうとう麻酔の薬が切れました。そしてその時が来ても、意外と痛みがありません。M先生によると、だいぶ時間が経っているのでもう痛みは大丈夫でしょうとのことでした。看護婦さんに麻酔のタンクから来ていたチューブを流量調整弁のところから外してもらいました。まだ念のため背中に針をさしたままで1m弱チューブが残されてはあったものの、これで身体を束縛していたすべてのチューブが外れたことになります。今日の昼から待ちに待った食事が始まる。3枚ほどのコピーを使って看護婦のTさんから説明がありました。流動食から始まり、毎日少しずつ粥が全粥に近づいていく。だが今日明日の2日間は流動食だった。明日は三分粥と期待していただけに残念。
食事の仕方の基本も先ほどのコピーを使って説明を受けました。
「出てきた食事の半分を捨てる。残りの半分をまた半分ずつして、2回に分けてそれぞれ30分かけて食べる。」というもので、他の患者さんが聞いているものと同じでした。当たり前ですが、流動食はまったく固形分がありません。これを30分かけてちょびちょびと食べる。良く噛んで、というより口を動かして唾液を分泌させて消化を促進して食べる。間が持たないような気がしたが、20分程度であればかけることはそれほど難しくなかった。
午後、髪の毛を洗ってくれると言うので遠慮なくシャンプーしてもらいました。手術前日に洗ったきりで、しかも2晩熱を出して寝ていただけに洗ってもらうとさすがに気持ち良かった。
<術後6日目>
6月9日(水)、流動食、抜糸(半分)、入浴(下半身浴)開始
朝食直後、M先生が来る。横になり傷を見せてください、というのでガーゼ交換かと思っていたら、急にペンチのようなものを消毒した器具の中から取り出してきました。なにかと思っていたら、抜糸をするということです。抜糸といっても縫合は糸ではなくステープルなので、ペンチで抜くのでした。一つおきに抜いていく。胸側から抜いて行ったが、やはり多少の痛みがある。胸から腹部いくにしたがって、痛さのため次第に腹が逃げてへこんでしまう。「先生、少し待ってください。」「どうしたの。あと一本ですよ。」「でも、ちょっと待って。」そうこうしている間に、もう一本も抜かれてしまう。このときあわせて、背中にさしてあった麻酔の針も抜いてもらう。痛みはまったくなし。あっという間の出来事でした。
「昨日の血液検査の結果ですが、肝臓に少し炎症があるようですね。」とのこと。これとは別に、消化機能を助ける消化薬を出してくれるそうです。
また、腹帯をしたままであれば下半身浴をしていいということになりました。妻に手伝ってもらい、下半身はおそるおそるシャワーを浴びスポンジでこすって洗う。浴槽にも下半身だけつかる。上半身はタオルで拭く。
昼過ぎにやや下痢気味の便。手術後初めての便通で、とても頼りない便でした。まだ固形物を食べていないからなのでしょうか。
<術後7日目>
6月10日(木)、三分粥、抜糸完了
朝採血。
3分粥。固形物が入ると言うことはなんとすばらしいことなのか、とつくづく感じます。味もついており、一週間ぶりの人間らしい食事です。
今朝は手術日でしたが、M先生が11時過ぎ頃に部屋に現れ、残ったステープルを抜いてくれた。今日は昨日とは少し違うペンチ。M先生曰く「昨日の道具のほうが痛くなかったのだけど、今日はこれしか残っていないから。」そう言えば確かに痛い。この「ペンチ」で抜くとステープルが曲がって抜けてしまう様子。これが痛みの原因になるようでした。M先生は、まめなことに、幅8mmくらいのテープを6枚ほど傷口のところに貼ってくれ、「力がかかると傷が残りやすくなりますから。」とのこと。腹帯も少しは気休めになるが、実際にそれほど役にたたない、というのがM先生の意見であった。その意見は確かに賛成である。腹帯はあるところからは効果があるが、それほど強くピッタリとしている感じはない。
「少し肝臓の値が高いので、念のため点滴をしてもらいます。せっかく今日から点滴がなくなったのですが、また朝だけ点滴をします。」
今日から三分粥なので点滴はなくなるはずだったのでした。また、M先生の方から「消化薬ですが、会社の医務室で処方してもらうか処方箋を書いてもらうかできませんか。毎回ここまで外来で来てもらって、長いこと待たせるのも可哀想だから。」とのこと。会社の医務室に聞いてみることにしました。
<術後8日目>
6月11日(金)、五分粥、入浴開始
便通も柔らかめだが特に異常なし。
午前中点滴。小さい上にかなりのペースで落としているので、ものの5分で落ちてしまいます。
点滴が終わるともう何もないので自由時間です。病棟ロビーのところで看護婦主任さんと立ち話。退院したいと直訴。その効果か午後にはM先生が来てくださり「火曜日退院でもいいですか」とのこと。先生に「熱く」お礼をしました。
午前中に会社の医務室に電話を入れる。K先生がいる日だったが、あいにくと今日は休み。看護婦の人に、手術は無事すみ退院が近いことを伝えるのと合わせて、薬の処方をお願いしてみました。同じ物はないので、同じ効果のものを出してくれるとのことでした。医務室の先生宛に書面を出して欲しいとのことだったので、M先生にもその旨を伝えました。
昼一番でM先生が来てくれてガーゼを取ってくれた。腹帯はしているものの生で傷が見えるようになり、かなりインパクトが強い。これで入浴もOKとのこと。早速風呂の予約をして、妻に手伝ってもらいシャワーを浴びてみました。まずはできるだけ傷が濡れないように気を使いながらシャンプーし、背中は妻に拭いてもらうことにしました。
<術後9日目>
6月12日(土)、七分粥
朝食では余り感じなかったが、昼食ではおかずがぐっとグレードアップした感じ。便通も順調。少し柔らかい程度で、下痢までいかず順調に出ています。
今日も5分程度の点滴あり。
第1回目の夕飯を食べていると、今日は妙に満腹感がある。あらためて胃の小ささが感じられる。2回目の夕食は割合いとスムーズだった。そう言えば以前患者にYさんから話を聞いたときに、やはり七分粥の時にカステラを食べて気分が悪くなったといっていたような気がする。やはり七分粥のころに油断が来るのでしょうか。
<術後10日目>
6月13日(日)、全粥、外出許可
午前中点滴。
入浴時、自分で頭も洗ってみました。今日は外出許可が出ていて、外に出ることができるのでした。手術前の外泊から帰ったときに着ていたシャツを着ようと思ったが、薄いシャツだったので腹帯が透けて見えてしまいます。若干抵抗があったので、シャツの下にTシャツを着ることにした。だがこれでは腹帯とTシャツがズボンの中に入らなくなってしまい、仕方なくズボンのボタンを外すことにしました。しかし考えてみると手術以降、病院の外にでるのは今日が初めてです。
外出と言っても、近辺のO公園くらいしか行くところがない。この公園もいいところなのだが、ホームレスの巣窟になっているので、近くの食品スーパーに行ってみました。入った当初は、これはこうして調理したらあれはああして調理したら食べられる、などと考えていましたが、やはりすぐには食べることが出来ないようなものが多く、かえって目の毒になってしまいました。
思ったよりもしっかり歩くことすることが出来、この外出で少し自身がつきました。
夕食も順調に食べたつもりでした。夜慌てて就寝の用意をしていたとき、ふと口をつけていなかったヨーグルトドリンクが目についき、「腸の動きを助ける」と書いてあったので、あまり空腹感はなかったが飲んでみました。ところが7分目飲んだくらいで少しきついかなと感じはじめました。それでももったいないと残りを口に含んだら、左胸が締め付けられるように痛くなってきました。口に含んだ分を飲みこみ、歯磨きをしてベッドに戻る。それでも胸が痛い。しばらくしてゲップが出ました。これでどうにか収まりがつきなんとか耐えられるようになりました。まるで赤ちゃんのようです。
<術後11日目>
6月14日(月)、全粥
朝採血。今日は点滴なし。
朝食後、腸が痛くなる。しばらくすると収まったが、その直後M先生にもそのことを伝える。便通などのことを聞かれ、その後打診。あらためてゆっくりと食べるように指示を受けました。
退院後の診療の予約を取るように、先生から予約票をもらう。
事務の女性から請求書をもらう。また廊下でまた事務の女性から先生にお願いしていた診断書をいただく。
<術後12日:退院>
6月15日(火)退院
今朝は点滴もない。昨日先生に頼んだように朝食はパン食になった。
1回目の朝食を終え、荷物を片付けているところにM先生が来た。
「もし急に具合が悪くなるようなことがあったら、病院へ電話してください。ポケットベルで呼び出されるようになっていますから。」「ありがとうございます。」先生にはまだまだ外来で会うチャンスがある。
隣室の患者の皆さん、婦長を始め看護婦の皆さんに挨拶をし、いざ退院。タクシーに乗りこむ。道路を走る。小さい道路の継ぎ目でも突き上げがあると少し傷が痛い。それでも家が近づいてくる。
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