2003年 |
books on the table - 2004 |
スキップ/北村 薫;02.25〜3.1
重い話である。運動会・文化祭・高校時代・・・。17歳の女子高校生が、いきなり42歳へスキップしてしまう話なのだから、無理もないが。
主人公にあるのは、17歳までの記憶と、42歳の身体になってめざめた、今だけ。その間の25年間は、すっぽり抜け落ちている。
自分ならどうする、と読者は突きつけられる。切ないどころのはなしではない、気が狂いそうな現実と主人公は向き合う。見知らぬ中年男が夫で、自分と同い年(内面が)の娘もいる。こんなこと、受け入れられるわけがない。
17歳で、未来をいくらでも選べた心が、いきなりおばさんの器に入れられているのだ。失った時とあるべき記憶がない(夫と出会い、恋して、結婚して、子供を身ごもり、出産して、世話をして・・・)ことに、はたして折り合いがつけれるものか。
周囲の人間、夫・娘にもたまらない話だ。いままで積み上げてきた思い出が、相手には一切ないのだから。
高校生活のエピソードで泣けて、娘のけなげさに泣けて・・・もうラストは泣かないだろうと思っていたら、子供のエピソードにやられてしまった。作者はそれを、亡くなった両親への思いに持っていったが、母親が子供と過ごした記憶が全くないということの重さに、わたしは打ちのめされる。子供にとっても<しあわせの記憶>のはずの、母親のぬくもり、自分を呼ぶ声、つないだ手と手・・・親子関係の基盤を作ってきたはずのものが、ここでは存在しない。その喪失感がどれだけ大きいことか。子供の側にすれば、いつでも自分の後ろに控えてくれる存在を、失ってしまったことになる。
そう考えるともうダメである。
ラストはどうなるか、自分の目で確めてもらいたい。
わたしだったら(わたしが作者だったら)どうするか、今考え中である。
とにかく、是非一読をお勧めする。(ふ)
何かが街にやって来る(栞と紙魚子5)/諸星大二郎;02.19
少女向けのホラー&ファンタジー雑誌に連載されている、諸星大二郎の連作漫画である。<栞と紙魚子シリーズ>として、単行本5冊目だ。前巻で、連載が終了したと思ったら、いつのまにか復活を遂げていた。
この漫画を読むと、笑いすぎて、力が抜けてしまう。特に、ホラー作家の段先生とその奥さん、娘のクトルーちゃんは、ツボに入って爆笑してしまう。おまけにペットの名前が<ヨグ>。ラブクラフトを読んだことのある人には、たまらない作品(?!)だ。子供たちもこのシリーズは喜んで見ているので、余計な知識がなくても充分楽しめる漫画だ。ちなみにこの巻での子供たちのお気に入りは、<結界>さんたちだった。
まずは、できればシリーズ1冊目の「生首事件」から、とにかく見てください。(ふ)
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2003年 |