勝の最後の日。

2003年6月7日。

私は友人の家に遊びに来ていた。勝は状態も良く、夏を超せるだろうと思っていた。。

しかし夜に家から電話が入った。「勝がおかしい。立てないみたい」と。しかし電車がもうなくて、私は朝一で帰ろうと思っていた。だけど友人夫婦が車で送るから帰った方がいい、と何時間もかかるのに送ってくれた。(いまでも頭が下がる思いです。この場をかりて「ありがとう」)

でもいきなりどうしたんだろう?出かける前には「いってきます」して普通だったのに。座ったままになってたけど元気だった。。

家について愕然とした。

勝は倒れたままの状態で訳も分からないまま手足をまるで走っているかのようにバタつかせていた。呼んでも聞こえない。見えない。遠くを見ているようにこっちを見ない。触ったら誰かいる事に気付いたみたいだった。夕方からこの状態だったらしい。あまりのことに涙も出ないし、頭は真っ白。朝まで耐えてくれたら病院に・・と思った。でも事前に病院の先生に老衰だからいざとなっても手のほどこしようがない。ような事を言われていた。

とにかく勝に私がいることを分かってほしかったから私もその場に座って抱き上げた。私の足の上で勝は手足をバタつかせた。「ここにいるから平気だよ」と聞こえないだろうけど必死に言った。多分勝は立とうとしているんだと思った。支えて立たせようとするんだけど、勝にはそれすら分からなくて余計バタつく。あぁ、どうしよう。とにかく安心させたかった。鼻の所をなでていつものように体もなでて「ここにいるよ」と分かってもらおうとした。そしたら勝は分かってくれたのかバタつかせるのをやめた。そしてスースーと疲れたように寝てしまった。私の足の上で。少し安心したけど、次の不安が襲った。このまま目を開けなかったら?私は勝のお腹が息をしているのを何時間も見つめてた。たまに目が覚めてバタつく。そのたびになでてあげた。するとまた寝る。と繰り返した。勝は一言も言葉を発さない。それが余計に私を不安にさせた。「クーン」とか言ってくれればまだ良かったけどそれすら出来ないんだと思った。

気がつけば朝。勝はまだ寝ている。スースーと寝息を立てて。

母が起きて来て私が徹夜したのを見て、私を心配して少し寝るように言った。私はすぐ風邪をひくから。すでに頭痛が始まっていた。ためらったが説得されて少し仮眠をとることにした。勝はこの調子で寝ている感じだった。だから少しなら平気だと思ってしまった。何かあったらすぐに起こしてくれ。と言って仮眠をとった。

私はそれを一生後悔することになる。

母に起こされた。「勝が・・」慌てて勝の所に行った。母は勝に少し水を飲ませてお菓子を少しあげたら食べたから、やらかいフードをあげようと台所に行ったらしい。そしてフードをもって勝の所に行ったら・・・

動いてなかった。と言った。

目を開いたまま、お腹が動いてない。私は「勝」と呼んでみた。でも反応がない。揺すってみた。勝は瞬きもしない。また揺すってみた。でも動かない。

16年も一緒にいたのに最後を一人で迎えてしまったんだ。なんてこと。私は寝た事を後悔して始めて涙が出た。

母が「もうやめなさい」みたいな事を言った。あんまり覚えてないんですが。私はずっと勝を揺すっていたらしい。

2003年6月8日のことだった。

謝っても謝りきれないこと。一人で心細かっただろうに。ごめんね。としか言えない自分が許せない。しかも翌日に気付いたんだけど私は携帯酸素ボンベを持っていたのだ。どうしてそれをあててあげなかったのか。

自分が馬鹿でどうしようもない。そう思った。そこから動けなかった。天気が良くて朝日がまぶしかった日だったのを覚えている。

それからの事はあまり覚えていない。

 

火葬場で最後だからと勝をなでた。いつもの触り心地じゃなかった。硬く硬直している体。その触り心地が今でも忘れられない。日に当たっていつも少し暖かかった。その勝じゃない。死後硬直で目も閉じられなかった。火葬場の人がいうにはワンコは硬直が早い子もいてすぐに目を閉じてあげようとしても硬直してしまう子がいるらしい。勝がそうだった。

涙は出なかった。呆然としていたのかもしれない。

そして勝は静かに空に帰った。

勝は私が中2の時に親に相談もなくつれて帰ったワンコで名前も私がつけて悲しい時はそばにずっと座ってくれたりしてくれた。その勝がいなくなる事は私にとって凄い衝撃だった。

そして勝のいない生活が始まった。耐えられなかった。勝の物はそのままだった。片付けたら勝がいた事が全て消されてしまう気がして。

月命日には必ず勝の所に行った。そんな生活が続いた。

 

 

そして10月、莎羅が来た。。。。

 

2度と後悔のないように最後まで一緒にいてあげようと心に誓った。

莎羅の行動をみていると勝に似た所があって思い出す。勝は今でも私の支えになってくれてると思う。

 

最後まで読んでくれてありがとうございました。文章力がないのでうまく書けなかったかもしれませんが、私の所には勝がいた。それを残しておきたかったので書きました。

 

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