(4)力の入り方の差
A.「かき出し」の差(ハイエルボー)
日本選手は肘先が真下を向いている(画9、図7)ためにしばらくかいても肘を曲げ、ハイエルボーの形を作ることが出来ません。ポポフは肘先が斜め上を向いている(画8,図6)ためかき始めてすぐに肘先を曲げ、ハイエルボーを作り上げることができます。そのため日本選手はかなり経っても手がまっすぐに伸ばされたままであるのに対し、ポポフはすぐに手が曲がり、アーチ状に水を包み込みます。
まっすぐ伸ばされた手を動かしてもあまり推進力を得られませんが、アーチ状の手は水を斜め下に押さえることにより体を斜め上に引き上げる力を生み出します。
「かき出し」てすぐに推進力を得られるか、体を斜め上にあげる力があるか、これが最大の差です。日本選手はこの両方がないためにポポフとの決定的なスピードの差が生まうのです。
元々のストローク自体が短いにも関わらず、かき出してから胸の下までに推進力がないためにストロークの半分近くを無駄にし、ただ時間と長さを無駄にしています。また上に引き上げる力がないために体の浮きがなく、水に沈んだ状態で泳ぎ、抵抗をより多く受けてしまいます。
B.中盤の差
プルの中盤になると手のひらが体に近づいてきます。
これは開いた体が、ローリングにより戻るためです。
ポポフの手の方が体より遠いのはかき出しで体から見て外側にかいているからです。実際に何かを押してみればわかりますが、胸の前ぐらいの位置では手が体の内側にはいると力が入りにくく、体の少し外側くらいの位置に手があると力が入りやすいことがわかります。
(5)抵抗の差
ポポフは水面に対して垂直に近く、縦に体が入っているのに対し、日本選手は縦よりも横でいる時間が長い。そのため水に入っている部分が多く、また水面にふれている面積も大きいため抵抗も大きい。