第1回 「四浪記」という題名ではありますが、もう少し時間を逆のぼり、高校3年生の夏から書いていこうと思います。なぜならそこから僕の挫折に満ちた転落人生が幕を開けるからです。逆に言えば、それまでの僕はたいした挫折もなくポンポンと望みどおりに物事をこなしてきていたように思います。それが高3の夏、水泳大会での失敗から徐々に崩れてゆくのです。 僕は高校3年間水泳部に属しており、高3の夏の引退試合に向け自分のベストタイムを少しでも縮めるため、高2の夏からの1年間は特に毎日懸命に泳いでいました。縮めると言っても一年でたかだか1,2秒縮められるかどうかという程のものなのですが、その1,2秒のために一年間必死になっていました。そして引退試合初日、400メートルリレーのアンカーという重要なポストを任された僕は抜群のタイミングで引き継ぎをこなし、ノリノリのスピードで50メートルを泳ぎ、残り50メートルに向けターンした瞬間、僕のヒーロー伝説は幕を閉じることとなりました。ターンして足を伸ばした先に壁がなかったのです。ターン失敗。なんとか手でバックして足の先で壁を触り、残り50メートルを無我夢中で泳いだもののどうにもならず、失意のうちに引退を迎えるという結果に終わったのでした。 高3の夏を不完全燃焼で終えた僕は、自分が立ち直るには何か目標となるものを見つけ、それを達成する以外にないと考えます。そして見つけた次なる目標は競歩大会で上位に入るというものでした。ここで受験に目が入っていればもう少し早く受かっていたかもしれませんが、この頃の僕は水泳部という自分が認めてもらえる場所があり、学校でもしょっちゅうさぼっていたわりに友達はちゃんといて、年上の彼女がいて、バイトに行けば西高だから頭がよいと見なされ、仕事もできないのによくやってくれると褒められ、そういう中で自分自身に向き合うこともなく、周囲の誤解によって作られた自分に酔いしれ、意味もなく自信過剰になっていました。一浪もすれば早稲田あたり入れるだろ位に思っていたのです。 そういうわけで勉強には目もくれず、競歩大会を次なる目標と定めた僕は気持的にそうとう意気込むのですが、それが裏目に出たのか前日眠れず、当日の朝、寝坊してしまい家で朝食をとる時間がなくなってしまいました。現地に着くまでの電車の中でこっそり朝食をすませたいと考えていましたが、やはり駅は競歩大会へ向かう学生で混み混みとしていたので電車の中は無理かなと思っていました。しかし、みんな待ち合わせの相手を待っているようで電車にはのらず、そのおかげで僕はすいている車内で誰にもみつからずこっそりと朝食をとることができました。やっぱりこういう日は単独行動にかぎるななんて思ったり、まだ着かないのかななんて思ったりしながら1時間程すぎた頃でしょうか、僕は自分の乗っている電車が間違っていることに気づきました。高崎線と宇都宮線を間違えるという最も初歩でありがちなミスを犯してしまったのです。後から知ったことなのですが、僕は埼玉の行田へ行くはずが大きくそれて栃木県へ突入していたのでした。急いで引き返そうとしたものの電車の本数も少なく、結局2時間遅れでたどり着いたスタート地点には誰かがいるはずもなく、やけになっていた僕は意味もなく走り始め、片付け途中のチェックポイントに遭遇し、残りのジュースをペットボトルごともらい大喜びし、また走り始め、ペットボトルがただのおもりと化している悪循環に後悔し、なんとかゴールにたどりつくもビリという、この先の人生を象徴するかのような結果に終わります。 そして高3の冬がきていよいよ受験が色濃くなってきたころ、僕はロールプレイングゲーム、具体的にはファイナルファンタジー4にはまり、これもまたクリアーする前に挫折するのですが、そんな感じで高校卒業を迎えます。 ということで「四浪記」という題名ではありますが、今回は受験とは無縁の内容となってしまいました。次回からいよいよ四浪の1年目に突入するのですが、果たして松本は勉強を始めるのか!! 乞うご期待。 つづく
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