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地震耐力

業者に次のようなセールストークを聞かされて、納得の上、採用を決定したが、昨今の東日本大震災にて我が家も震度5弱を経験して、この際、真剣に地震対策の実力につき調べてみた。

------------ 業者のセールストーク ------------
日本は世界的に見ても地震の多い国。
"地震や火事、台風に負けない強さがある住まい、それが長く快適に暮らせる家の条件です。"

だから、徹底的に強さにこだわり、研究を重ねた結果、鉄骨ユニットに「粘り抵抗型」と「強度抵抗型」の2種類の構造を組み合わせた業界初のハイブリッド耐震システム「GAIASS」を採用しました。 ご家族をしっかりと守る耐震性能をお約束します。

躯体は、超高層ビルと同様の高強度のボックスラーメン構造。炎に包まれても燃え移りにくい外壁、高い断熱性による快適性。ユニットが構造体を支えるため、外部からの力が1か所に集中せずバランスよく分散されるので、地震や台風に強い構造となっており、地震の揺れに対する強さは、実大実験でも証明されています。

中小地震にも、未曾有の大震災にも衝撃を分散・吸収して耐えることができる構造体です。

ラーメン構造ユニットは、柱に100mmまたは120mmの角形鋼管、天井梁は200mm、床梁は150mmのたわみの生じにくい形鋼で構成されています。鋼材は高層ビルの構造にも用いられる強さと柔軟性を併せ持つSS400鋼。この頑強な鉄骨材をスポット溶接(及びアーク溶接)により剛接合させたハイムのラーメン構造ユニットは、単体でも建築基準法の新耐震設計基準(二次)を大きく上回る強さを持っています。

 大きな被害をもたらした阪神・淡路大震災は直下型と呼ばれ、都市の近くで発生する地震で、一瞬のうちに強い衝撃が来るのが特徴。万一、予想される東海地震はプレート型と呼ばれ、震源は海洋のため直下型に比べ揺れが長時間続くため、建物などが受ける衝撃は大きなものとなります。
ハイムでは、直下型、プレート型のそれぞれの異なる地震波で実験を実施。それぞれの地震波で安全性を確認しました。
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■ 現状把握
 先ず国土地理院の条件図(国土地理院データより引用)を見ると我が家の様子は宇田川の脇にある「谷底平野」である。

 谷底平野とは山間部において、河川の運搬する土砂が多く侵食作用よりも堆積作用の方が上回るとき、幅1km以下の細長い谷間の低平地が発達したものをいいます。この谷底平野は、軟弱地盤であることが多く洪水にも弱いため、宅地には適さないといわれています。

 ただ、宇田川は上流数百mに源を発する小さな小川状のもので、ここでいう山間部には当たらず、河川の運搬する土砂の堆積と、その上に宅地造成時の盛り土(ガレキ多し)を盛った土地であり、軟弱地盤であることが判る。

 なお、これらの地形は平坦部であり、砂状の土砂も多くないなどからみて 液状化現象、地滑りは起こりにくいのではないかと思われる。

 従って、固い地層まで杭を打ち込み 地盤補強することで先ずは大丈夫であろうと思われる。

なお、横浜市作成の異常降雨時のハザードマップは下図の通り。(2016年9月21日追加)

■ 地盤調査

 国土交通省の「宅地防災マニュアル」に地盤に関するガイドラインの規定がある。
 それによると 「軟弱地盤の判定に必要な調査」として
"軟弱地盤の判定は、標準貫入試験、スウェーデン式サウンディング試験、コーン貫入試験等の結果に基づき行うものとする。
これらの試験等による判定が困難な場合には、必要に応じて土質試験を行い判定するものとする。"
とある。
また、このマニュアルにおいては、

軟弱地盤判定の目安を、地表面下10mまでの地盤に次のような土層の存在が認められる場合とする。
1. 有機質土・高有機質土(腐植土)
2. 粘性土で、標準貫入試験で得られるN値が2以下あるいはスウェーデン式サウンディング試験において100kg以下の荷重で自沈するもの(換算N値3以下)。
3. 砂質土で、標準貫入試験で得られるN値が10以下あるいはスウェーデン式サウンディング試験において半回転数(Nsw)が50以下のもの(換算N値5以下)

なお、軟弱地盤の判定にあたった土質試験結果が得られている場合には、そのデータも参考にすること 。

とある。
これらに基づき建設に先立ち業者が「スウェーデン式サウンディング試験」にて地盤調査を実施した。

 測定箇所は、建物の4隅とその中心部分の、合計5ヶ所を試験するのが望ましいが、建設予定の3隅を測定した。

測定値
 測定値よりわかるようにおよそ11m強 程度まで 軟弱地盤である。
 これより 少なくともこの固い地層まで鋼管杭を打ち込んで補強する必要があることがわかる。


■ 実際の施工

 業者施工では 長さ11.5mの 小口径鋼管杭29本 を打ち込み、その上にベタ基礎*を敷設した。(杭は φ101.6×3、φ114.3×22、φ139.8×1、ストレート杭×3本)

 この補強した地盤上に高強度のボックスラーメン構造ユニットを据え付けることにより、「粘り抵抗型」と「強度抵抗型」の2種類の構造を組み合わせたハイブリッド耐震システムで種々の力に耐え、中小地震にも、未曾有の大震災にも衝撃を分散・吸収して耐えることができる筈である。


*ベタ基礎:

ベタ基礎とは、建物を支える下部構造で、建物の底部のコンクリートがすき間がなく連続し、基礎の底部が一枚の板状になっている基礎のこと。

ベタ基礎は、縁の下をもたない床をつくる場合や、軟弱な地盤に対し、面上に対抗する基礎。

地盤に施工された鉄筋コンクリート面全体で建物を支える構造になっているため、地震や台風などの衝撃を効果的に地盤へ逃がすことが可能。

地面をコンクリートで覆うのでシロアリを防いだり、地面からの水蒸気を防ぐ効果もある。布基礎よりも重量があるうえ、地中にかかる荷重が分散しないので、 3mくらいまではストレートに荷重がかかる。そのため、見込み沈下量を大きめに予想しなくてはならない。

また、ベタ基礎は不同沈下を起こさないといわれているが、沈下を防ぐ方法ではなく、ベタ基礎を採用していても、敷地全体の地耐力が均一でない場合は、片方が沈み、もう片方が 浮きあがるなど不同沈下が起こる可能性がある。

■ 実大実験(ハイムHPより)
 直下型、プレート型の異なる地震波で実験
 大きな被害をもたらした阪神・淡路大震災は直下型と呼ばれ、都市の近くで発生する地震で、一瞬のうちに強い衝撃が来るのが特徴。万一、予想される東海地震はプレート型と呼ばれ、震源は海洋のため直下型に比べ揺れが長時間続くため、建物などが受ける衝撃は大きなものとなります。
ハイムでは、直下型、プレート型のそれぞれの異なる地震波で実験を実施。それぞれの地震波で安全性を確認しました。

実験結果
地震波 地震の強さ
(水平加速度)
建物が受ける強さ
(2階床応答加速度:実験値)
阪神・淡路大震災(直下型)の 実際に起きた地震波 818ガル 1,160ガル
阪神・淡路大震災(直下型)の 2.2倍の地震波(実験機の限界加震) 1,800ガル 2,751ガル
近い将来起こるとされている 東海地震予測波(プレート型)での実験機限界加震 1,330ガル 1,674ガル
結論:
ユニット自体の強さとしなやかさ、外壁の地震エネルギー吸収効果などで、応答加速度や揺れ幅が小さくなるため、大きい揺れによる家具等の転倒が少なく、危険を軽減できる住まいを実証しました。もちろん、構造体への損傷は一切ありませんでした。

■ 地震耐力の考察
幸い、今回の東日本大震災の 横浜エリア震度5弱に対しては能書き通りの実力を発揮した。(もっとも、今回の揺れの周波数では建物に対するダメージは小さく、周りの家も特に被害は見られなかったが・・・・・・・・・・・・・・・・・。)

 ここで、今回の地震の強さが気象庁の発表などによりわかってきているので、これらの値で検証してみよう。
過去の主要地震データ一覧は次の通り。 加速度は水平方向、3成分合成のいずれかは残念ながらはっきりしない。 

過去のデータ
発生年 名  称 場  所 震 度 加速度
(ガル*)
2011.3 東日本大震災 宮城県栗原市 震度7 2,933
岩手県大船渡市 震度6弱 991
宮城県石巻市 震度5強 675
福島第一原発 - 507
2011.2 ニュージーランド地震 クライストチャーチ市 震度6強 940
2008.6 岩手・宮城内陸地震 宮城県栗原市 震度6強 1,816.5
2004 中越地震 - 震度7 1,700
1995 阪神・淡路大震災 - 震度7 818
1923 関東大震災 - 震度7 300〜400

これらのデータより 見えてくるのは 2,000ガル以上の加速度が加わることも稀にあることである。従って耐力試験ではこれらの加震実験を行い、安全性を確認すべきである。
 セキスイハイムでの実験設備の限界加震は 1,800ガルとのことで、一応この数値はクリアしているが、この東日本大震災において栗原市で2,933ガルを観測しているので、今後は3,000ガル程度の加震装置を作って確認するなど、一層の努力が必要であろう。

 現段階では1,800ガルまでの安全性が確認されている。実力はもう少しあると予想されるので、今後必ず起こるといわれている東南海、東海地震が 2,000ガル以下であって欲しいことと、現状の構造で必ずや威力を発揮してくれることを期待する次第である。
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*注 ガル
CGS単位系における加速度の単位:1ガルは、1秒(s)に1センチメートル毎秒(cm/s)の加速度の大きさと定義される。

地震波による地面(地震動)の揺れは、地震計(特に強いゆれを計測するための地震計を強震計という)で観測します。一個(一成分)の地震計では一方向の揺れしか計測することが出来ません。通常三つの地震計を組み合わせて、観測を行います。例えば、地震計を東の方向に向けると、東西の揺れをはかることが出来き、これを『東西成分』と呼びます。東西成分以外に南北成分、上下成分を組み合わせた三成分で観測を行います。
((独)防災科学技術研究所より引用)

 

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